クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ハフ(2013)

2017.09.13 (Wed)
Stephen Hough12
ハフ(p)/ウィッグルスワース/ザルツブルグ・モーツァルテム管弦楽団
(2013、hyperion)は綺麗に揺蕩う。英国で評価されたこの盤はなるほどと思う。
派手さは皆無で品よく歌う。
両翼配置のオーケストラも美しくピアノと溶け合う。癒され度筆頭格。

ハフ(Stephen Hough, 1961~ )は英国のピアニスト。
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ウィッグルスワース(Mark Wigglesworth, 1964~ )も英国の指揮者で
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ここではオーストリアのオケを振っている。

第1楽章はテンポに緩急があり息遣いがいい。
単に弾きましたというのではなく思いが込められている。

第2楽章のアパッショナータは少し大人しいと感じるかもしれない。
しかし情念は常にむき出しである必要はない。

第3楽章も繊細な味わいを持つ。ピアノのタッチが実に綺麗でかつ深い。
ブラームスが書いた音楽の中でも飛びきり夜想的だ。チェロがまた切ない。

終楽章は可愛く軽やか。ピアノは飛び回る蝶、オケはそよふく風。
アクセントはまろやかで角が立たない。
どこにも大家はいないが、ささやかな幸福を感じさせる音楽。

録音はザルツブルグの祝祭大劇場でのセッション。
外から見ると丘を背負った単なる建物だが、
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後ろの岩盤をくりぬいた大ホールがある。
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響きは美しく本録音でも穏やかなスケール感を演出。
ピアノ他各楽器のピックアップも適切で美しい。

18:19  9:10  11:52  9:30   計 48:51
演奏   S   録音  94点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 オソリオ(90前後)

2017.09.12 (Tue)
osorio batiz
オソリオ(p)/バティス/ロイヤルフィル(89?/Mexico)は
押し出し強い。正当な力を感じさせる。

ホルヘ・フェデリコ・オソリオ(Jorge Federico Osorio,1951~)は
オソリオ
メキシコを代表するピアニストで現シカゴ在。
同郷のこの指揮者とは度々協演している。
また、ブラームスは彼の中心的作曲家でもある。

バティス(1942~)はラテン系の「爆演」指揮者といわれることもあり、
確かにそうした演奏も多々あるのだが、いつもそうとはならないので、
妙な期待をすると裏切られる。
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彼はメキシコの生んだ神童ピアニストでもあり、
ジュリアード音楽院で指揮を学んだ正当派でもある。
この演奏も男性的ではあるが「爆」とは言えない。

第1楽章冒頭はティンパニからホルン、ヴァイオリンから低弦へ
と強拍をアウフタクト的に微妙にずらし巨匠音響を作り上げる。
手兵メキシコ響では実現できないような重厚さ。決して虚仮威しではない。
ピアノはしっかりしたタッチ。がっぷり四つ。オケに負けない。
ただ、ピアノは多彩な表現かといえばそうとも言えない。
むしろオケの分厚い迫力に魅了。

第2楽章は全般に圧が強いが単調。
ロイヤルフィルに重心の低い音を出させている。
ピアノはブラームスの若き覇気を演出するようで
少し力が入りすぎているような。

終楽章は良い。空回りしない勢いを感じる。
オソリオのピアノはフォルティッシモでは粗いが
図太い響きになる。
エネルギッシュな終結は痛快。

録音はロンドンでのセッション。
録音年含めた詳細の記載が無いのは誠に大らかなメキシコレーベル。
デジタル収録で響きは多くなく、
各楽器の分離もいまいちだが全体としては力のある音。

21:10  14:14  12:10   計 47:34
演奏   A   録音  90点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 バレンボイム(2004)

2017.09.11 (Mon)
バレンボイム&ラトル
バレンボイム(p)/ラトル/ベルリンフィル(2004、EuroArts)は
直情径行ヴェリズモ・オペラ。濃厚な表情を以って歌いオケも厚く熱い。
体調の良い時に聴けばロマンの泥沼に溺れることができる。
さらりとした風景が好きな当方もここまで振り切られると感心する。
今このような表現を惜しげもなく繰り出すピアニスト、指揮者は貴重だ。
バレンボイム(1942~)は日本での評価はいまいちかもしれないが
私はこの天才職人を最近非常に尊敬している。
この一発録りのDVDを観ると彼にとって還暦など屁のようなものだ。

第1楽章序奏のオケは物々しく表情がつく。遅いテンポでラトルが入念。
劇的な気配が漂う。そしてバレンボイムのピアノがまた語る。
こうなるとマーラーの音楽もかくやと思わせる。
終結に向けてドラマは激しく高揚する。
もうこれが終わっただけで拍手が起こってもおかしくない。

第2楽章も分厚いベルリンの弦に支えられピアノがたっぷりと展開。

終楽章もバレンボイムは全く衰え知らず。攻めてくる。
そしてベルリンは流石。凝縮した響きが実に心地よい。
ラトルが嬉々として振っているのが印象的。
終結はライブらしく物凄い勢いで盛り上がりこちらが熱くなる。
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録音はアテネのヘロデス・アッティコス奏楽堂での屋外ライブ(DVD)。
Odeon of Herodes Atticus
この2000年の歴史を誇る建造物を背景にした映像は非常に魅力的。
また驚くほど音がいい。
拡散する前に音を拾っているので映像を見なければ、
そして小鳥のさえずりが聞こえなければ屋外と分からない。
しかも直接音ばかりでなく残響もありどうなっているのかと思う。
映像で見る限りそれほどマイクが林立している風に見えない。
ピアノは勿論オケの音もしっかり分厚く収録されている。

23:33  14:57  14:54   計 53:24
演奏   濃S    録音  92点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 アラウ(60)

2017.09.10 (Sun)
arrau 1emi
アラウ(p)/ジュリーニ/フィルハーモニア管弦楽団(60、EMI)は
面食らう重量感。土石流を感じる。
ジュリーニ(1914~2005)の指揮するオケはぶっとくうねり、
アラウ(1903~91)のピアノもこれまた線が太い。
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第1楽章冒頭からのオケは粘性を帯び渦巻いて迫る。
フィルハーモニアでどうやったらこんな音を出せるのか。
ピアノは力一杯叩かなくてもなぜこうも豪快な音が出るのか。
呆気にとられる。

第2楽章も緊張感ある重厚さ。15分かけてグイッと押し出す。
弦はゴリゴリゴォーと響くのはリマスター時に強調したから?
アラウのピアノはここでも無骨。

終楽章はピアノがリードして前面に。独自の節回しでぐいぐい。
オケは最初はサポートに回りながらも
徐々に自我を出しスケールの大きな音楽を作る。

巨大な地滑りを目の当たりにするような音楽。
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録音はアビーロードスタジオでのセッション。
リマスターがいいのか迫力ある音が潰れずに聴ける。
会場はデット気味だが演奏によって巨大な規模を獲得。
プロデューサーにウォルター・レッグの名前。
この直後のッジュリーニのブラームスの交響曲全集より音がよく迫真。

23:28  15:06  12:54   計 51:28
演奏   S    録音  87点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ワイセンベルク(83)

2017.09.09 (Sat)
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ワイセンベルク(p)/ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団(83、EMI)は
立派なピアノ交響曲でまっとうな演奏なのだが、どこかよそよそしい。
というかこのピアノは不思議な感触がある。
音楽が大きく盛り上がるところでも何か醒めている。

ワイセンベルク(1929~2012)はブルガリア生まれの仏国籍のピアニスト。
スイスのルガーノで82歳で亡くなった。父親は外交官、母親はピアニストという
エリート家庭に生まれ幼少のころからピアノの才能を発揮、
というと羨ましいばかりだが彼の苦難は戦中以降。
(↓1941年ブルガリアの恩師Pantcho Vladiguerovと)
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両親が離婚調停中にナチス・ドイツが、ブルガリアを支配し、
あろうことか父親はユダヤ人であった母とその息子(ワイセンベルク)を密告。
このため母子は祖国から逃亡。だが甲斐なく収容所に入れられてしまう。
しかしながらイギリス空爆や母親の機転やらのお陰で脱出に成功。
生き延びた。

1946年米国でジュリアード音楽院に入学した後活躍を始めるが
1956年には「自分を見つめ直す」として隠遁生活に入ると同時に仏国籍取得。
1966年にカムバックしてからは再び脚光。
そしてカラヤンとの協演盤が話題となりスターとなる。
カラヤンと
日本では黒柳徹子が40年来の交際を告白しているが
黒柳徹子と
90年代以降はパーキンソン病との闘病生活を送ったとのこと。
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彼の屈折したところは上記の生い立ちにも関係するのか。
グールドが褒めた数少ないピアニストがワイセンベルク。
何か共通する孤独を背負っていたのかもしれない。
彼にはドビュッシーやスカルラッティの方が似合う気がする。

さてこの演奏。オケはやたらに立派で言うことは無い。
そしてピアノも滅法うまい。
しかし両者ともにもう一歩の踏み込みをしていない。
この大曲で感動させてやる、という気負いを感じない。
ワイセンベルクは72年にジュリーニとこの曲を録音しているが
その時は指揮者のペース。
では今回はどうかというと、ここでも指揮者に合わせながら
間然とするところが無い。

録音はフィラデルフィア・オールド・メットでのセッション。
水準的な音。オケの量感は捉えられているし、ピアノもちゃんと聴こえる。

21:50  13:30  11:40   計 47:00
演奏    醒A    録音  90点
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