クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

バッハ ブランデンブルク協奏曲第6番 カラヤン(65)

2017.11.18 (Sat)
karajan 6
カラヤン/ベルリンフィル(65、DG)は一つの極致。
ここまで肥大化したロマン的な演奏は無い
(と思うが、フルトヴェングラーがこの第6番を残していたら対抗馬)。
ある意味振りきれているので、最近音楽を聴き始めた人が本盤を聴くと
たまげるはず。この曲に対してこのようなアプローチがあるのかと。
カラヤンの美学やセンスが如実に体感できる。
karajan.jpg
バッハの音楽をどのように演奏するか。
ピリオドvsロマン(モダン)という図式だと、以下でメルクマールが考えられる。
①使用楽器
②奏法・演奏
③奏者・団体規模

20世紀、バッハも時代考証とは離れて
聴衆にアピールするように演奏されてきた。
このカラヤン65年盤はピリオド軍団の登場の遥か前であり
上記①~③まで徹底して反ピリオド、カラヤン流だ。

①楽器は全てモダン。フルヴェンのようにチェンバロまでピアノに
変えていないだけまだまともだが。

②奏法はノンヴィブラートの代わりにレガート多発で全て色っぽく擽る。
テンポは大きく膨らみテヌートしながらのびる(演奏時間は保有盤最長)

③編成はフルオケではないかと思うほどの分厚さ。
全集の中でも異質な響き。1~5番はスイスのサンモリッツで避暑を兼ねて
少人数で録音しているが、なぜか6番だけ冬のベルリンで収録。
karajancar.jpg
第1楽章はキビキビした硬めのドイツ車というよりフワフワの足回りの
ゴージャスなアメ車に揺られている気分。
第2楽章はトロトロに蕩けまくる。終結に至るリタルダンドはエロティック。
終楽章はぬくぬくと何とかやっていけないかと姑息な思いが宿る。
場合によっては、すぐにリヒター盤で身を清めなければならないかも。

録音はベルリンのイエスキリスト教会でのセッション。
先述のように同じ曲集でもこの曲だけ音響が違うので
順番に聴いてくると違和感がある。
ヴァイオリンが無いこともありヴェールをかぶったような音。
合奏人数も多いのでフォーカスが甘い。音響の面でも同曲の中では特殊。

7:06  5:55  5:45   計 18:46
演奏    肥      録音   87点

バッハ ブランデンブルグ協奏曲第6番 ホグウッド(84)

2017.11.17 (Fri)
Christopher Hogwood - Brandenburg
ホグウッド/エンシェント室内管弦楽団(84、L'OISEAU-LYRE)は
学究的スタンス。ただ、出てくる音楽は軽やか。
厳めしさはなくこれを聴いているとバッハ以前のバロック音楽に聴こえる。
録音当時はピリオド演奏の初期で、
厚ぼったいロマン的演奏に慣れていた耳には斬新だった。

ホグウッド(1941~2014)はモーツァルトの全集でも通常聴かれないような版を
掘り起こして録音して見せたり好奇心旺盛。
christopher-hogwood_2017111708045579d.jpg
このブランデンブルグ協奏曲集でもそうだ。

バッハが30歳代、1721年にクリスティアン・ルートヴィッヒにこの曲集を献呈した。
ただこれは手持ちの旧作を選んで編集し6曲にしたもの。
しかし、ホグウッドは
「献呈された稿は、原典資料としての価値よりも
献呈という事実および書体の美しさから生まれた、
見かけ上の権威を持っているに過ぎない。」という。
そこで献呈稿でなく原典資料に当たって録音したのがこの盤。
ただ、大きく違うのは1,5番辺りでこの6番は通常聴かれているものと略変わらない。

演奏自体は極めてまっとう。各声部1人の室内楽。
ヴァイオリンが入っていないので高域成分がないのはもとより
チェロやヴィオラダ・ガンバも重くない。中音域を中心に小気味よい。
第2楽章の鄙びた音たちと
終楽章の明るく前向きな楽想の対比は心を晴れやかにする。

録音はロンドン郊外ウォルサムストウ・タウン・ホールでのセッション。
DECCAがポリグラム傘下に入ってすぐの録音。
既にポリグラムにはアルヒーフがあったがDECCA系のオワゾリールも
対抗できる録音の水準。DECCA的なギラギラ感はなく落ち着いた音だが
今でも鮮度は十分。こじんまりしているがいい音。

6:05  4:52  5:34   計 16:31
演奏    A      録音  92点

バッハ ブランデンブルグ協奏曲第6番 ニュー・ロンドン・コンソート(93)

2017.11.14 (Tue)
New London ConsortPickett
ピケット/ニュー・ロンドン・コンソート(93、L'OISEAU-LYRE)は
使用されるピリオド楽器編成がユニーク。よって響きが独特。

ヴィオラ2、チェロ1、ヴィオラダガンバ(脚で支えるヴィオラ)2、
ヴィオローネ(コントラバスの先祖)、オルガン、アーチリュート(大きなリュート)2。
後半の3つは通奏低音である。
(↓左:ヴィオラダガンバ 右:ヴィオローネ)
viola da gamb  05 Viola da Gamba
(↓アーチリュート)
lute.jpg
チェンバロは使われていない。
高域のスパイスがない分、一層低域の厚みが印象的。

第1楽章は分厚いのに弾性が高くボンボンと弾むように進む。
第2楽章はオルガンの通奏低音とアーチリュートのボロンボロンが古雅なムードを演出。
終楽章はヴィオラ2丁が淡々流れる。

録音はウォルサムストウ・アセンブリ・ホールでのセッション。
響きは多くないが、伸びは十分のきれいな音で収録されている。
バランスの良い落ち着いた音。

5:57  4:37  5:42   計 16:16
演奏    (A)          録音  93点

violin family
なお、主宰のフィリップ・ピケット(1950~)は2015年に若い頃に起こした
卑劣な犯罪によって11年の刑に処せられている。
Pickett.jpg

バッハ ブランデンブルグ協奏曲第6番 レパード(74)

2017.11.13 (Mon)
raymond leppard
レパード/イギリス室内管弦楽団(74、PHILIPS)はノーブル。

この演奏で指揮とチェンバロを受け持つレパード(1927~)は当初バロック音楽の
専門家として登場したが、次第に活動を拡げロマン派現代音楽を含む指揮者として
米英を中心に活動。もう90歳を超えると思うが近況はどうなのだろうか。
Raymond Leppard 2
レパードと彼が設立発揮人の一人であるECOとの録音はどれも好き。
特にドヴォルザークの「弦楽セレナード」は愛聴盤。
爽やかなそよ風のような演奏だった。

そしてこの曲でもそうだ。優しく心地よい風が吹く。
モダン楽器の演奏でとげとげしさは皆無。
英国紳士的で棘や角がない。特徴に乏しいと言えばそれまでだが、
こんなにバランスのとれた美しい音なら難しいこと言わなくていいだろう。
テンポも楽器のバランスも納得。
(ヴィオラ1、2は左サイド、チェンバロが右寄り)
癒されること間違いなし。
An_early_recording_with_Raymond_Leppard.jpg

録音はウェンブリー・タウンホールでのセッション。
録音当時の優秀録音で今でも十分通用。
広さを感じるホールトーンをうまく使いながらも音像は拡散せずに伸びやか。
音はシルキートンで弦が実に美しい。
同じフィリップスでも80年のマリナー盤より綺麗と感じた。

6:26  4:22  5:47   計 16:35
演奏   A+     録音 92点

バッハ ブランデンブルグ協奏曲第6番 イ・ムジチ(84)

2017.11.12 (Sun)
イ・ムジチ
イ・ムジチ(84、PILIPS)は太陽が燦々。心が開放していく。
イムジチの屈託ない伸びやかさ、そして歌は素敵だ。
この渋い第6番においてすら陽光のシャワー。6番以外も全てキラキラ愛らしい。
SUNRISE
こういう演奏を聴くとピリオド系が何かをなくしているのではないかと感じる。

第1楽章のバスのリズムが前向き。そこにヴィオラがカノンで掛け合う。
やってくれているヴィオラ1,2の左右両翼配置!
マリナー盤ほどのトランス感がないのは全て白日の下に晒されているからかも。
各楽器はのっぺらぼうでない。健康的な活き活き感が身上。

第2楽章の歌は実に気持ちいい。ヴィオラ2がまず右から、次にヴィオラ1が左から。
どんな場面もカンタービレのイタリア魂。ヴィブラートの美しさを見せつける。

終楽章は落ち着いた快活さ。ここでも左右の掛け合いが見事。
録音エンジニアもセンスがいい。

録音はスイス、ラ・ショード・フォンの音楽堂でのセッション。
La Salle de Musique - Chaux-de-Fonds
中規模のホールでこの編成には適している。
鮮度の高い優秀録音で各楽器が明快に定位し鮮明。
それでいて溶け合い、自然な音場でまとまる。

6:19  4:19  5:40   計 16:18
演奏   陽S       録音  94点
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