クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ベートーヴェン 交響曲第7番 シェルヘン(65)

2017.04.19 (Wed)
シェルヘン
シェルヘン/スイス・イタリア語放送管弦楽団(65、MEMORIES)は
ガタピシャ滅法快速。
同じく速いカラヤンの洗練された重戦車に対しこちらは痩せた田舎者の槍鉄砲。

シェルヘン(1891-1966)の旧盤50年のウィーン国立歌劇場管弦楽団との演奏は
非常に伝統的でまっとうな演奏だった。指揮者の変容が極めて激しい。
演奏時間も6分ほど短くなった。大胆なアゴーギグは旧盤には全くなかった。
15年でなんでこんなに変わってしまったのだろう?

ではこの演奏が色物かというとそうではない。
指揮者は本気だ。いたるところで聞こえる指揮者の唸り。
アンサンブルは、・・・はっきり言って重要ではない。破れかぶれのゲリラ戦。
終楽章は完全に前のめりでオケが食らいつくのが必死。

ここで一つ気づいた。
最初からがたついた演奏が一層ガタついてもそれは一種の予定調和。
むしろすました名門オケをぎりぎりまで追い込んでガタつく寸前まで
やってしまう方がスリルがある。
クライバーやカラヤンの凄さはそんなところにある。

録音はルガノのオーディトリウムRTSIで聴衆を入れてのライブ。
拍手が入るが聴衆ノイズはあまりない。デットな音響で薄い音。
慣れれば聴ける。

10:07  7:54  7:13  6:45   計 31:59
演奏   槍    録音  84点

ベートーヴェン 交響曲第7番 ハイティンク(85)

2017.04.18 (Tue)
ハイティンク57
ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(85、Philips)は予想通り。
『この管弦楽団の創立100周年を記念して、当時の常任指揮者ハイティンクによって
完成されたベートーヴェンの交響曲全集。1988年のレコード・アカデミー賞受賞盤』。
ハイティンク(1929~)は70年代半ばにLPOとベト全を録音しており
これは2回目の全集から。2005、6年にかけてLSOと三回目の全集も認めている。

演奏はこのコンビならではこうなるだろうという音楽。それ以上でも以下でもない。
このオケの本拠地で正統的な演奏を聴きたいという人にとってぴったり。
どこをとっても最高の音響が提供される。スケール感は最大規模で力感も過不足ない。
50代半ばのいい人による堂々とした20世紀スタイルの演奏。

中庸な演奏を指して『最初聴くにはいい』と言うことがある。
ではクラシック入門の若者にこの演奏を薦めるかというとそうはしない。
この曲の持つ本能的な動感を味あわせたいと思うと他により適当な演奏がある。

なお、80年代ハイティンクは決して全てが安全運転というわけでなく
リスクテイクする演奏もあるので要注意だ。
haitink7.jpg

録音はコンセルトヘボウ本拠地でのデジタルセッション。
例によって残響がかなりあるので、このテンポ以上には速く演奏できないと思われる。
さすがフィリップスでこれだけの音場の中でも個々のパーツもしっかり捉えている。

14:22  9:05  9:25  7:05   計 39:57
演奏   A-    録音  92点

ベートーヴェン 交響曲第3番 ケンペ(74)

2017.04.17 (Mon)
Kempe_GCOC_5759502.jpg
ケンペ/ロイヤルフィル(74、IMG)はまさにケンペ流。
この指揮者の流儀としか言いようのない演奏。ピリオドスタイルの世界とは対極。
前半は訥々と語りかける。したがってテンポは実にゆっくりなのだが、
ロマン的に膨張した音響ではない。
また、この渋渋の響きはとても暴れ馬ロイヤルフィルと思えない。
圧倒的な感動を催すというのでなくしみじみさせる独自の世界。

第1楽章各パートがそれぞれボソボソ。村の寄りあいのような雰囲気。
ヒロイックな「英雄」ではない。16:20はリピートなしなのでかなりゆったりなのだが
冗長という感がないのは各所から聞こえる声に耳を傾けざるを得ないから。

第2楽章これは侘しい。悲劇性は薄い。なんだかとても淋しい。
途中で止まりそうになる。なんじゃこりゃ。
後半になると雄渾なパワーが漲る。一筋縄でいかない演奏だ。
最後はまたもや心が震えるヴィヴラート。

第3楽章は通常のテンポに戻る。対向配置の弦が掛け合う。
ホルンはここぞとばかりに妙技。

終楽章は再びおっとり系テンポ。すっきりした音。
オーボエが強調されるので鄙びた感じが強く出るのがケンペの特色。
この指揮者はアンサンブルにそれほど厳しくなかったのか、
音響はどこまでも素朴感がある。
終結後の拍手も歓声はないが、満足でした、という感じ。

録音はプラハ音楽祭でスメタナホールでのライブ。
Smetana_Hall_201704172215447da.jpg
聴衆ノイズはほとんどなく吸音でデットな音響。左右が明快に分離。
ライブでこれほど個々の楽器が聞こえるということは
マイクは比較的近接マルチマイク収録でそれをトラックダウンした感じ。

16:20  17:28  5:34  12:20   計 51:42
演奏   朴   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第7番 ケンペ(71)

2017.04.14 (Fri)
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ケンペ/ミュンヘンフィル(71、EMI)はひょっとして「爆演」?
ケンペにあるまじき驚くべき展開。終楽章の破天荒さは信じられない。

このコンビの少し枯れた響きが好き。特にブラームスは良かった。
豊穣でもブリリアントでもない。しかし噛めば噛むほど味が出るという類。
これは前半3楽章は当てはまる。ところが・・・。

第1楽章第一音から聞いたことのないような息の長い音。
じっくりしたテンポで強直に歌う。序奏からヴィヴァーチェに至るまで6分弱。
全く独特の運び。
主部に入ってからも堂々と逞しく慌てず騒がず。なんという威容!
終結は戦いに疲れて一呼吸置いた後再度立ち向かうべく起立する。

第2楽章も悲劇性を帯びながらも実に立派。落ち着いた佇まい。

第3楽章は一般的テンポで憂いを含む。

終楽章はいきなり異様な雰囲気に気づく。
まずテンポがトスカニーニやカラヤンばりに速い。
そして目が血走っているではないか。なにかあったのか?
決して豊かとは言えない力づくの音が畳み掛ける。
弦の圧が強く美音をかなぐり捨ててる。
特に狂気凶暴なのはラスト2分。トランペットやホルンはむちゃくちゃ強奏。
弦は全く余裕がないなかアッチェレランド。紋切り型に叩きつけて終了。
この終楽章は1000ccの車が3000ccの車を追い抜く瞬間だ。
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録音はミュンヘン・ビュルガーブロイケラーというビアホールでのセッション。
もともとは独エレクトローラによる録音。
コンサートホールでないので音は痩せた感じ。
響きも十分ではなく、素朴な音に仕上がる。
ただ、通常音では楽器の分離は良い。フィナーレでは煙が充満。

13:55  8:58  7:45  6:40   計  37:18
演奏   驚A+   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第7番 ラトル(2002)

2017.04.13 (Thu)
ラトル78
ラトル/ウィーンフィル(2002、EMI)は不思議ちゃん。
何かやらねばという意欲満タン。
単にベーレンライター版使用ピリオド奏法を取り入れた演奏、
と片付けられない。

ウィーンフィルの従来のボウイングを変えてノン・ヴィブラートで
室内楽的に弾かせる。フレーズ内での音の強弱も極端につく。
これをブラインドで聴いたらウィーンフィルとはわからない。
全体のテンポを遅くとり、意欲的な表現なのだが、
それが聞き手をどう揺さぶるかが問われる。

第1楽章はどっしりゆっくり。あっちこっちからいろいろ引き出す。
第2楽章は感動物語を聞かされているような抑揚。
第3楽章も手練手管。
終楽章はプルトを絞っていることもあり身軽であるが重厚な迫力はない。
普段は浮き上がらないようなパッセージが出てきたり、
音楽が不思議な伸縮を繰り返す。

面白いかもしれないが感情移入できなかった。

録音はムジーフェライン大ホールでのライブ。
聴衆が入っているのがプラス。適度な吸音によって音がすっきりしている。

14:10  8:25  8:28  8:55   計 39:58
演奏   不   録音  91点
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