クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven VnCon の記事一覧

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 パールマン(80)

2017.08.21 (Mon)
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パールマン(Vn)/ジュリーニ/フィルハーモニア管弦楽団(80、EMI)は
ジュリーニ(1914~2005)ペース。
最初は硬かったパールマン(1945~)のヴァイオリンは徐々に熱を帯びて
最後は激しい演奏を見せる。逞しいジュリーニの掌の上で思うまま。

第1楽章の序奏。相撲のシコ踏みのような太鼓の音を伴うどっしり音楽を聴くと
これはジュリーニの世界。30半ばパールマンはこれについていくしかない。
懸命に堅固な音を奏でるパールマンは立派だが彼本来の音楽なのだろうか。
ひたむきであるが余裕のある美音というわけにはいかない。
カデンツァはクライスラー。

第2楽章もオケの威圧感がある中、パールマンの音色はやや硬質。
圧の強さ感じさせる。

終楽章になるとパールマンはどんどん乗ってきて気迫の演奏を展開する。
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録音はアビーロードスタジオでのデジタルセッション。
オケはこの会場らしく奥行き感があまりない。
またヴァイオリンは響きが特有な癖。
中間楽章など耳につく。ティンパニは大太鼓のように図太く録られリードする。

24:25  9:23  10:08   計 43:56
演奏    A    録音  88点

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 キョン=ファ(89)

2017.08.20 (Sun)
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キョン=ファ(Vn)/テンシュテット/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(89、EMI)は
素晴らしい呼吸感。オケは堂々としヴァイオリンは深く呼吸し伸びやか。
キョン=ファ(1948~)がテンシュテット(1926~98)との共演を望んだとのことだが、
両者の目指す方向が同じだ。

この協奏曲が優美さを超えてここまで味わいと深遠を見せるとは思わなかった。
キョン=ファの表現は積極的なのだが抑制も効いている。
聴いていて惹きこまれるヴァイオリンだ。
オケもLPOでなくRCOだったのがほんとによかった。

第1楽章のテンポはゆったりとしておりスケールが大きい。
そこに乗っかるヴァイオリンはテンポの遅さを感じさせない絶妙な表現を展開していく。
これは凄い、と感じる。
そして10分過ぎごろから更に両者はテンポを落とし深みに沈み込む。独自の世界。
カデンツァ(20:15)はクライスラー。単なる美技ではなく心の震えをあらわす。

第2楽章も実に繊細で奥ゆかしさの中の強さを感じる。

終楽章も最後まで集中している。ライブなのに恐ろしいほどの胆力。
むしろオケのほうがテンシュテットの棒に一生懸命。
終演後の盛大な拍手は当然。
キョンファライブ

録音はコンセルトヘボウでのライブ。
3日間のコンサートからの編集で聴衆ノイズはないが雰囲気は出ている。
フィリップス・DECCAのここでの録音とは違い
EMIは帯域・奥行きで劣るがアビーロードよりずっと良い。

24:53  9:42  10:07   計 44:42
演奏   S    録音  91点

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ヤンセン(2009)

2017.08.18 (Fri)
ヤンセン
ヤンセン(Vn)/P・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルハーモニー
(2009、DECCA)はオケもヴァイオリンも表現意欲が強い。
このヴァイオリン協奏曲が退屈だと感じる向きにはいいかもしれない。

まずP・ヤルヴィだがノンヴィブラート主体のアタックの強い演奏。
引き締まった音で強弱の振幅は激しい。
このコンビのベートーヴェンの交響曲全集の延長にある。
単なる優美な曲ではなく、運命交響曲に連なる「意志」を強調する。

ヤンセン(1978~)も負けじと「見て見て!」と張り合う。
ヤンセン2
美音というより情感が溢れ出ている。
実に多彩でこの協奏曲を使ってヴァイオリンの表現の可能性を
追求してくれる。ただ、ただ・・・私にはどうも煩わしかった。

第1楽章のカデンツア(18:33~21:40)はクライスラー。
ここでもこれでもかという技を披露する。

併録はブリテンのヴァイオリン協奏曲。
実はこちらが目当てでこのCDを購入した。
この曲はまさに天才の作で、なぜ普及していないのか不思議だ。
そしてこのコンビのこの演奏は手に汗握る迫真の名演。感動した。
ベートーヴェンで煩わしいと感じた「意欲」がこちらでは心に刺さる。
ひょっとしたら、このブリテンを聴かせるためのベート-ヴェンだったのか?
だとするならば、プロデューサーの罠にまんまとハマった。

録音はハンブルグのフリードリッヒ=エベルト・ハレでのセッション。
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ソロはオンマイクで弦の擦れ音まで明瞭に聴こえる。
オケも周囲に位置しギュッとした音作り。

22:56  8:20  9:25   計 40:41
演奏   A   録音  93点

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲(ピアノ編曲版) ムストネン(93) 

2017.08.17 (Thu)
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ムストネン(p)/サラステ/ドイツ・カンマーフィルハーモニー(93、DECCA)は攻撃的。
ムストネン(1967~)はヘルシンキ生まれのピアニスト、作曲家、指揮者。
彼の演奏は何か問題意識を含むことが多い。
ここではヴァイオリン協奏曲作品61のピアノ編曲版を、作品61aとしてではなく
一つの独立したピアノ協奏曲として捉える。
自分で弾き振りした再録音(2008)があるし実演でもよく取り上げているようだ。

この演奏を聴いてまず感じるのはピアノの独特のタッチ。
ペダルをあまり使わず、鋭角的な音色で力強く進行。
最初堅過ぎると違和感があったが、彼がもとよりチェンバロを学んでいたことから
合点がいった。確かにそうした響きだ。
(この盤の併録はバッハのヴァイオリン協奏曲第3番をピアノ編曲したものだが
こちらの方がよりフィット感があるのはそうした故かも)

第1楽章は速めのテンポで行く。
サラステも速いテンポをとる指揮者だが、後のムストネンの再録音も速いので
両者の意見が合致しているのだろう。ピアノもオケも音を延ばさない。
ピリオド奏法とはまた違う独特な世界。
カデンツァ(16:50~21:03)の独奏は力強い。
猛烈なテクニックなのだが18:48のティンパニのクレッシェンドからは一層強固。
ただ、この演奏自体最初から攻めているので違和感は無い。

第2楽章は非常に特徴的。8分少々で駆け抜ける。
ピアノのポツポツした音がバロック的。

終楽章もキレがいい。エッジの効いた音で攻める。
半音階を含むカデンツァの上昇下降は機関銃のよう。

録音はブレーメン放送局でのセッション。奥行きのないデットな響き。
ゆえにピアノもオケも潤いに欠けるのが残念。
もとより演奏方針が明晰さを打ち出しているので
これはこれで在りかもしれないが。
ただピアノのタッチだけでなく響き自体が床の音を拾うような感じもする。

21:57  8:10  9:09   計 39:16
演奏    攻   録音  88点

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲(ピアノ編曲版) ヤンドー(97)

2017.08.16 (Wed)
ヤンドー
ヤンドー(p)/ドラホシュ/ニコラウス・エステルハージ・シンフォニア
(97、NAXOS)はたおやかな時が流れる。
ヴァイオリン協奏曲からの編曲であることを忘れさせてくれる。
ピアノとオケがうまく溶け合い一つの世界を作っているから。

その成功の要因はヤンドー(1952~)の節度あるピアノ。
ヤンドー 写真
この人はハンガリーの出身で母校のリスト音楽院で教鞭をとりつつ
ナクソスに大量の録音をしている。
ナクソスの方針がクラシックのエンサイクロペディアを作るというものだから
極端に個性的な演奏よりもスコアを端的に再現するこのピアニストはぴったり。
彼のハイドンのピアノ・ソナタは愛聴盤だ。

また、指揮者ドラホシュ(1952~)はハンガリー出身でフルーティストでもある。
Béla Drahos
ブタペストの録音用小編成の当オケとこれまたハイドンなどナクソスに
多くの録音を残している。彼もまた穏やかな指揮をする印象だが、
ここでも同郷人仲間で和やかな演奏をしている。

ということでピアノ協奏曲版ととしては一番好きな演奏かもしれない。
肩に力が入らず、録音も含めてすべて心地よい。

第1楽章のカデンツァ(18:07~23:05)はベートーヴェンが編曲時につけた
ティンパニを伴うもの。こうして聴くとやはりティンパニはヴァイオリンよりも
ピアノの方が合うと感じる。打鍵の進行に加わる打楽器は協調的。
この演奏のティンパニの粒立ちもよい。
ピアノも無理に強打しないのが好感。

第2楽章も抒情的でピアノが可憐。

第3楽章はもう少し迫力が欲しいと思う人がいるかもしれないが
このチャーミングな曲としてこれで満足。ピアノはあくまで端正で軽やか。

録音はブタペストのイタリアン・インステュチュート内の
フェニックス・スタジオでのセッション。
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小編成のオケを過不足なく捉え、響きも綺麗。
ピアノとの距離、溶け合いも適切。

24:13  9:24  9:43   計 43:20
演奏   S   録音  92点
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