クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym7 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第7番 ハイティンク(85)

2017.04.18 (Tue)
ハイティンク57
ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(85、Philips)は予想通り。
『この管弦楽団の創立100周年を記念して、当時の常任指揮者ハイティンクによって
完成されたベートーヴェンの交響曲全集。1988年のレコード・アカデミー賞受賞盤』。
ハイティンク(1929~)は70年代半ばにLPOとベト全を録音しており
これは2回目の全集から。2005、6年にかけてLSOと三回目の全集も認めている。

演奏はこのコンビならではこうなるだろうという音楽。それ以上でも以下でもない。
このオケの本拠地で正統的な演奏を聴きたいという人にとってぴったり。
どこをとっても最高の音響が提供される。スケール感は最大規模で力感も過不足ない。
50代半ばのいい人による堂々とした20世紀スタイルの演奏。

中庸な演奏を指して『最初聴くにはいい』と言うことがある。
ではクラシック入門の若者にこの演奏を薦めるかというとそうはしない。
この曲の持つ本能的な動感を味あわせたいと思うと他により適当な演奏がある。

なお、80年代ハイティンクは決して全てが安全運転というわけでなく
リスクテイクする演奏もあるので要注意だ。
haitink7.jpg

録音はコンセルトヘボウ本拠地でのデジタルセッション。
例によって残響がかなりあるので、このテンポ以上には速く演奏できないと思われる。
さすがフィリップスでこれだけの音場の中でも個々のパーツもしっかり捉えている。

14:22  9:05  9:25  7:05   計 39:57
演奏   A-    録音  92点

ベートーヴェン 交響曲第7番 ケンペ(71)

2017.04.14 (Fri)
LUDWIG_VAN_BEETHOVEN_SYMPHONY_NO__7kempe.jpg
ケンペ/ミュンヘンフィル(71、EMI)はひょっとして「爆演」?
ケンペにあるまじき驚くべき展開。終楽章の破天荒さは信じられない。

このコンビの少し枯れた響きが好き。特にブラームスは良かった。
豊穣でもブリリアントでもない。しかし噛めば噛むほど味が出るという類。
これは前半3楽章は当てはまる。ところが・・・。

第1楽章第一音から聞いたことのないような息の長い音。
じっくりしたテンポで強直に歌う。序奏からヴィヴァーチェに至るまで6分弱。
全く独特の運び。
主部に入ってからも堂々と逞しく慌てず騒がず。なんという威容!
終結は戦いに疲れて一呼吸置いた後再度立ち向かうべく起立する。

第2楽章も悲劇性を帯びながらも実に立派。落ち着いた佇まい。

第3楽章は一般的テンポで憂いを含む。

終楽章はいきなり異様な雰囲気に気づく。
まずテンポがトスカニーニやカラヤンばりに速い。
そして目が血走っているではないか。なにかあったのか?
決して豊かとは言えない力づくの音が畳み掛ける。
弦の圧が強く美音をかなぐり捨ててる。
特に狂気凶暴なのはラスト2分。トランペットやホルンはむちゃくちゃ強奏。
弦は全く余裕がないなかアッチェレランド。紋切り型に叩きつけて終了。
この終楽章は1000ccの車が3000ccの車を追い抜く瞬間だ。
kempe.jpg

録音はミュンヘン・ビュルガーブロイケラーというビアホールでのセッション。
もともとは独エレクトローラによる録音。
コンサートホールでないので音は痩せた感じ。
響きも十分ではなく、素朴な音に仕上がる。
ただ、通常音では楽器の分離は良い。フィナーレでは煙が充満。

13:55  8:58  7:45  6:40   計  37:18
演奏   驚A+   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第7番 ラトル(2002)

2017.04.13 (Thu)
ラトル78
ラトル/ウィーンフィル(2002、EMI)は不思議ちゃん。
何かやらねばという意欲満タン。
単にベーレンライター版使用ピリオド奏法を取り入れた演奏、
と片付けられない。

ウィーンフィルの従来のボウイングを変えてノン・ヴィブラートで
室内楽的に弾かせる。フレーズ内での音の強弱も極端につく。
これをブラインドで聴いたらウィーンフィルとはわからない。
全体のテンポを遅くとり、意欲的な表現なのだが、
それが聞き手をどう揺さぶるかが問われる。

第1楽章はどっしりゆっくり。あっちこっちからいろいろ引き出す。
第2楽章は感動物語を聞かされているような抑揚。
第3楽章も手練手管。
終楽章はプルトを絞っていることもあり身軽であるが重厚な迫力はない。
普段は浮き上がらないようなパッセージが出てきたり、
音楽が不思議な伸縮を繰り返す。

面白いかもしれないが感情移入できなかった。

録音はムジーフェライン大ホールでのライブ。
聴衆が入っているのがプラス。適度な吸音によって音がすっきりしている。

14:10  8:25  8:28  8:55   計 39:58
演奏   不   録音  91点

ベートーヴェン 交響曲第7番 クレツキ(67)

2017.04.12 (Wed)
クレツキ7.
クレツキ/チェコフィル(67、Supraphon)は山間部の喜びの舞踏。
モダン配置の当時の普遍的演奏スタイルだが、響きは往時のチェコフィル。
逞しいざくっとした弦を中心にした渋く太く美しい響き。木や森やこだまの音がする。

第1楽章は何の変哲もなく堂々と始まる。
素朴な響きだが弦がくっきり左右で分離して聴こえる。
どこにも溜めや誇張がなく安定して進むが、底流にぐいっと力が。

第2楽章弦楽の歩みが聴かせる。この懐かしい響きはなんだ。ローカル色満点。
60年代はまだオケの音にその地域が反映した。
このゆったりした美しい自然の音を聴いているとドヴォルザークにつながる。
この楽章でこれほど森を感じることはない。

第3楽章は村のダンスが目に浮かぶ。嬉々としている。
テンポは速くないが重くない。中間部ではまたもや森の静けさ。

終楽章も村ではお酒が入って一層盛り上がる。
太鼓が打ち鳴らされ、ラッパを吹き鳴らし、皆が踊り狂う。木管が囀る。
ほのぼのと幸福感に満ちた音楽。
ボヘミアダンス

録音はプラハ、ルドルフィヌムでのセッション。
抜けの良いこのホールを鳴らす。混濁せずすっきり。
低域は出ているが締まりがある。少し軽めの音。古さは感じるが新鮮。

12:20  8:45  7:59  7:12   計 36:16
演奏   村A    録音  86点

ベートーヴェン 交響曲第7番 スクロヴァチェフスキー(2006)

2017.04.11 (Tue)
スクロヴァチェフスキー78
スクロヴァチェフスキー/ザールブリュッケン放送交響楽団(2006、OEHMS)は
スッキリくっきり目が覚めるよう。指揮者は高齢だが新時代の演奏様式。

スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ(Stanisław Skrowaczewski, 1923~2017年)は
2月21日に93歳で亡くなった。
この録音は80歳過ぎ、読売日響の常任になる前年のもの。
『楽譜に書かれた全ての音は聴こえなくてはならない』というこの指揮者の身上が
透徹される。とにかく意欲的なこの演奏は全く老いておらず新鮮。
その意味ではカラヤン以上かもしれない。

またこれを聴くとのベートヴェン演奏の変遷を感じさせる。
私的にざっくり分類すると、

①モダンオケ+ロマン派巨大型(20世紀の大半はこれ:フルヴェンからカラヤン)
②古楽器オケ+ピリオド奏法型(1980年頃~:ガーディナー、ノリントン旧盤などから)
③モダンオケ+ピリオド奏法型(1990年頃~:マッケラス・ジンマンなどから)
④モダンオケ+新古典型(1990年ごろから)

近時CDなどでは②③が主流だが、
一般のコンサート会場では④が多いのではないか(あくまで感覚)。
また、③④はそれほど明確な差は無い。ラトルなど③なのか④なのか。

この演奏は④タイプの一つの究極。
響きは透明で引き締まり、テンポは快速。
しかしフルオケを使いスケール感はあるし、
ピリオド奏法は感じられずスッキリ系ヴィブラート採用。
速い中にも多彩な表現も盛り込みロマン派演奏の流れも汲む。

全体は常に勢いに満ちるが曖昧に流す場面がまるでない。
各楽器の各フレーズに指示が出ている。
終楽章は予想外なほど白熱。徐々にテンポを上げるのでなく5分過ぎ
コーダに入るとギアがカクンと一つ上がる。
整然としたオケがこれほど突っ走る様は
このコンビのブルックナーでは全く見られなかった。

録音はザールブリュッケン・コングレスザールで。
congresshalle.jpg
12-CongresshalleSaarbrücken
ライブ表記も拍手もないがヘッドホンで聴くと聴衆がいる気配も感じる。
マス的収録だが透明度が高く分離も相応。
一方スケール感あるホールトーンも感じさせる。

13:40  7:53  9:21  8:33   計  39:27
演奏   A+    録音 93点

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