クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

シベリウス ヴァイオリン協奏曲(初稿版) カヴァコス(91)

2010.07.08 (Thu)
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カヴァコス/ヴァンスカ/ラハティSO(91,BIS)は世界唯一の初稿版による演奏。
初稿は決定稿に比べあっちこっちに寄り道する感じで、曲としての一途な凝縮感は
決定稿に劣るが散漫さの中に込められたロマンは捨てがたい。
演奏は資料的価値の域を超えてこのロマン的な要素を大事にくみ取った名演。
初稿版がこうした優れた演奏で残されたのはありがたい。
録音は最終稿の録音の1カ月半後に行われいる。
場所はラハティの十字架教会で夢見るような美しさ。
第1楽章は確かにかなり違う。簡単にいえば初稿はヴァイオリンのモノローグが
かなり多く(カデンツアも2つ)、ソロのヴィルトゥオーソを際立たせている。
ヴァイオリンを愛したシベリウスらしい。
確かにこれをもって冗長という(自己)批判は可能だろうが、
この幽玄の世界はCDで一人味わうには魅力にもなる。
演奏時間は決定稿に比して初稿盤は2分半ほど伸びているが至福の時間を届けてくれる。
第2楽章は最終稿に対してソロパートの装飾や終結のカデンツァが加わるが、
これも結構新鮮だ。
終楽章は冒頭のオケパートが違うしひとしきり主題を届けた後に
遊びのような部分があるのが違う。こうした寄り道により終結に向かうエネルギーは
確かに拡散しているのだろうが、直線的にゴールに向かうのだけが美徳でもないだろう。
結果決定稿に対して2分長くなるがこれもまたよし。
作曲家の本意ではない作品が、人に感銘与えることもある。
芸術は独り立ちするものだ。
こうした貴重な版を届けてくれたBISと演奏者に感謝で「S」。

19:28  9:58  9:34   計 39:00
演奏  S   録音 94点

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