クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

R・シュトラウス アルプス交響曲 インバル(96)

2009.10.08 (Thu)
インバルアルプス
インバル/スイス・ロマンド管弦楽団(96、DENON)は深い読みで表情付けがしっかりされた
素晴らしい演奏。オケもアンセルメ時代の軽さとはまったく別のスケールを獲得している。
そして特筆すべきは金子建志氏による充実した解説だ。
録音はジュネーブ・ヴィクトリア・ホールで広すぎず狭くもない音場。
むき出しのぎらついた音でなく少し丸みを帯びている。
「夜」はチューバを強調した低い重心から入るが「登り道」に来ると低い重心のまま
テンポを上げる。したがって爽快というより何か心配事をはらんだ音楽。
「狩」のホルンは舞台裏でなく表で堂々鳴る。「森に入る」ではポルタメントの効いた甘い歌。
インバルが一緒に歌っているのが聴こえるの(邪魔?)。
暗い情念の中にロマンチックな香りを添えるのがインバルだ。
各場面の情景描写が実に明快で適切。
惰性でなくしっかりした譜読みをしているあたり、やはりインバルらしい。
「山頂」で素晴らしいのは演奏も立派だが実はこのCDの解説だ。
以下、金子建志氏による解説の引用。
「筆者がシュトラウスのリアリズムを実感するのはこの『山頂』だ。山頂というのは下から見ると
マッターホルンみたいに見えても、実際に上ってみると、山頂近くで一旦、視界が開け、
そこから、なだらかな岩場を少し登ったところに本当の山頂がある場合が多いのだ。
シュトラウスもまず冒頭ではへ長調で擬似的な山頂部に着いたことを示し、「山」のテーマで
ハ長調の真の山頂に着いたことを示す。更にその先で「太陽」のテーマをハ長調の下降音型と
して重ね調性的にも到達感に駄目を押すのである。」
この「山頂」の音楽の二度のピークを見事に解説してくれている。流石プロだ。
更に嵐の場面の解説も目から鱗。
「シュトラウスは稲光(ピッコロ・フルート)と落雷(金管と2台のティンパニと大太鼓)の
タイムラグによって雷雲(低気圧)との位置関係を示しているが、
ベートーベンの「田園」の嵐は現実とは逆に雷鳴が先で稲光が後だ」。
確かにそうだ!という按配で解説、譜例を見ながら聞いていると
あっという間に聴き終えてしまう。
このCDは廉価盤になっているがこのような懇切丁寧な解説を残してくれたレコード会社は
素晴らしい。国内盤をほとんど買わなくなったが、このような盤に出会うと見直してしまう。

計 49:40
演奏  A+   録音 90点

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