クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

R・シュトラウス アルプス交響曲 朝比奈(97)

2009.10.03 (Sat)
朝比奈アルプス97
朝比奈隆/大阪フィル(97、CANYON)は朝比奈はほんとにこの曲が好きなのだと感じる。
64年以来実演で何度も取り上げCDもこれで3枚目。
演奏は他にないまったく独自の世界だがそのスケールと説得力は抜群。
私は特別に朝比奈ファンというわけではないがこの演奏には本当に魅了された。
91年に朝比奈指揮でこの曲を偶然に聴いたシカゴ交響楽団の事務局長のフォーゲル氏が
驚愕し、そしてシカゴ響に招聘したしたという逸話は納得いく。
出来ればシカゴではブルックナーでなくこの曲をやってほしかった、とも思った。
録音は大阪フェスティバルホールの収録で大フィル創設50周年記念ライブと書いてある。
分離明瞭で低域も厚く響きも十分なためゲネプロかとも思ったが、
演奏ミスがそのまま収録されているからやはり一本録りなのだろう。
演奏は「夜」からいきなり朝比奈ワールドだ。なにかとてつもない重量物がもぞもぞ動き出す。
低い響きを強調し、でも少しも曖昧模糊としない。
続く「日の出」以降のスケール感は他の演奏を寄せ付けない。
単に遅いテンポというだけでなく大きな呼吸感がよいし表情に冴えがある。
鍛えられた大フィルの低弦はゴリゴリ、トロンボーンもバリバリ。
「森への立ち入り」での無頼派風の金管と繊細に流れる弦との対比は面白い。
「小川のほとりのさすらい」ものどかさと行くぞという精神状態をうまく表している。
「花咲く草原」はテンポを速めウキウキ感を出す。なんとチャーミングな演出か。
「山の牧場」では一転テンポをまた落としカウベルやらいろいろな描写を丁寧に扱い
心の余裕を見せる。単純に豪放一本の世界でなく弦の落ち着いた表情などを取り混ぜ
実に多彩な表現だ。
「頂上」におけるフレーズの息遣いの深さは私の希望通りでほんとに雄大な世界が広がる。
ここでのシカゴ響からの援軍ホルンのクレヴェンジャーが冴え渡る。
日が暮れ「悲歌」に来るとぐっとテンポを落とし心に染み入るオーボエが聞こえてくる。
「嵐の前の静けさ」も瞑想の世界だ。このあたりはこの演奏の白眉。
「嵐」は大フィルが想像以上にがんばっており堂々とした迫力だ。
「日没」「終結」そして「夜」に回帰する一連の流れは宗教的な荘厳ささえ感じる。
日本でこのような名演が記録されたことはうれしい限り。実演を聴きたかった。

計 57:09
演奏  別格    録音 92点

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