クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 クレーメル(80)

2017.08.12 (Sat)
kremer marriner
クレーメル(Vn)/マリナー/アカデミー室内管弦楽団(80、PHILIPS)は
全編真剣勝負。

クレーメル(1947~)はオイストラフに師事していたが
80年に西側に亡命してきたときには前衛ヴァイオリニストのイメージ。
その印象は話題になった本盤のカデンツァに象徴的だ。
彼の3種のこの曲の録音でカデンツァは75年盤はクライスラー、
本盤はシュニトケ、92年盤はベートーヴェン自身のピアノ編曲版。

とにかくこのシュニトケ(+クレーメル)のカデンツァが強烈。
しかしてそれ以外の部分はというと実に真摯で曖昧さが無い。
余裕を見せた92年と比べてこちらは張りつめている。

第1楽章のオケの導入はマリナーにしては力感がある。
そしてヴァイオリンが更に強固に入る。真剣で向かってくる。
甘美とか優雅という言葉とは遠い。オケも独奏も苦しいくらいに迫る。
ソロの中音域は図太く高音域は時にヒステリックですらある。
オケはどこまでも決然としている。

そしてカデンツァ(18:52~23:07)。
シュニトケのそれはニコリともしない。
schnittke.jpg
この楽章の動機、ヨアヒムのカデンツァ、ベルク、バルトーク、
ブラームスがコラージュ。ティンパニのクレッシェンドは
ペンデレツキのヴァイオリン協奏曲(第1番のレント部)とそっくり。
ともかくシュニトケらしく漆黒の闇を感じさせる。
殆どカデンツァの域を超えている。

第2楽章は前楽章の闇から救われる。
ただ、ここでも単に美音を振りまくという雰囲気は無く、
何かを希求し手を差し出している。

終楽章も気合が入っている。
オケの弦は終始一貫16分音符の刻みを強調する。
そしてまたもやカデンツァ(6:46~8:37)が凄い。
この楽章のモチーフから開始するが
どんどん外れて鬼気迫る暴風雨に。
その後正気を取り戻すが恐ろしい白昼夢を見てかのごとく。
呆然となっているうちに終わってしまう。
こうなるとこれを単に「ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲」と
言ってしまっていいのか。それくらい既成概念を覆す演奏。

録音はロンドン・ヘンリーウッドホールでのデジタル・セッション。
ヴァイオリンはオンマイク、オケは左右に拡がるが
ややソフトフォーカス。ソロは決して美しいという音ではないが
これはこの時のクレーメルの音なのだろう。

24:09  9:55  10:20   計 44:24
演奏    衝    録音  90点

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