クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ケンプ(60)

2017.06.14 (Wed)
ケンプ11960
ケンプ(p)/ライトナー/ベルリンフィル(61、DG)は
チャーミング&びっくり。
洒脱でモーツァルトへのオマージュ的演奏。

私はケンプのピアノが何だか好き。
巨匠でもヴィルトゥオーソでもなくて少し枯れた感じもするけどでも親しみやすい。
ケンプは50年代にケンペン/BPOで一度全集を作っていてこちらの方は
オケも含めて一段と立派な音響だった。
しかし60年代のこのステレオ盤は独自の境地・風情。力が抜けきる。

そしてこの演奏でのびっくりお楽しみは両端楽章のカデンツァ。
ベートーヴェン弾きと称されたケンプ。
しかしここでは作曲家のカデンツァではなく自作を披露。
これが実に愉快。

第1楽章まずは立派なオケで序奏が奏でられる。
いよいよピアノ登場。肩すかしのような非力なピアノ。非力というのは語弊がある。
対抗対決など毛頭考えない自在なピアノ。ひらひら舞う感じはむしろモーツァルト。
フォルテではなく弱音で吸い込まれる。
12:48からのカデンツァは14:04までと作曲家の5分バージョンよりはるかに短い。
しかもそれが実にモーツァルト。
軽やかに転がる。ベートーヴェンのこれ見よがし感は全くない。

第2楽章は秋の気配。
モーツァルトの最後のピアノ協奏曲のように夕映えだ。
sunset.jpg

終楽章は着崩し感。
オケはシャキッとしているがピアノはここでも妙な力みはない。
余裕を持った脱力はお洒落でもありジャジーでもある。
ラテンのティコ=ティコダンスもさりげなくすぎ驚きは6:42。
この楽章のカデンツアはあっという間に終わるのが大半だが
ケンプはここにお茶目をぶち込む。
聴いたこともない素朴でユーモラスなダンス。思わず吹き出す。
あれあれと目が丸くなっている間に終わってしまうのだが・・・。
そしてシフがモーツァルトの「魔笛」のパパゲーノのフルートと呼んだ
上昇音階(8:05)がこれまた差し込まれにやり。
ケンプ独自の演奏。愉しくかっこよくて粋だ。

録音はベルリンのUfaスタジオでのセッション。
あまり聞きなれない場所だが映画音楽の収録などに使われたようだ。
響きは美しい。
鮮度はさすがに落ちるがDGらしく派手さはないがしっかり綺麗に録れてる。

14:31  12:05  9:26   計 36:02
演奏   粋S    録音  88点

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