クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 リヒテル(60)

2017.06.13 (Tue)
リヒテル1ミュンシュ
リヒテル(p)/ミュンシュ/ボストン交響楽団(60、RCA)は包容力。
これはピアノよりもオケに言える。
若書きのはずのこの協奏曲のスケールの大きさに驚くのは
音場を捉えた優秀録音のせいばかりではない。

リヒテル(1915~97)は1950年代まで西側に行けず「幻のピアニスト」だった。
父親がスパイ容疑で当局に銃殺され母親はすでに別の男と西独にいたため、
ソ連に未練のない彼を西欧に出したら亡命してしまう懸念を持ったからだ。

「雪解け」の時期にソ連に行ったグールドやクライバーン、ミュンシュが
彼の地でリヒテルを聴いて衝撃を受けて帰ってくるなど話題だけが先行した。
クライバーンとリヒテル

1960年初めて米国ツアーを許されたリヒテルの西側デビュー盤の一つがこれ。
リヒテルとミュンシュ
ボストンでコンサートが開かれそのあと同じメンバーでセッション録音された。
リヒテルはこのミュンシュ&ボストンのコンビに痛く感激した
(その前にシカゴで共演していたライナーとはウマが合わなかった)。

第1楽章は実に堂々。ゆるがせにしないテンポ。巨大な神殿のような安定感。
ピアノも美しくも悠然と進む。両者のスリリングな競奏というより巨大なモーツァルト。
12:44から始まるカデンツァはベートーヴェン作曲の3種のうち一番長いやつだと
思って聴いていると16:03に突如終了する。あの終わりそうで終わらない
長大なカデンツァの最初に終わりそうなところでぶった切ってしまったようだ。
確かにこのカデンツァの5分は長すぎるので気持ちはわかる!
リヒテルのタッチは力で押さない。

第2楽章はふかふかのベッドで羽毛に包まれるよう。ロマンティック。

第3楽章も慌てず騒がず立派で深い。
ただ、このロンドにしてはピアノは少し大人しい感じも。

リヒテル衝撃の西側デビュー盤を期待したところだが
ミュンシュの正攻な指揮ぶりに惹かれた。
Charles-Munch.jpg

なお同時期に録音された併録のピアノ・ソナタには圧倒される。

録音はボストン・シンフォニーホールでのセッション。
当時のRCAの優秀な録音陣によるもの。
ホールの広々感と煌めくピアノとマッシブなオケが捉えられている。
トッティでの飽和感もぎりぎりセーフ。

16:20  11:41  8:40   計 36:41
演奏   A    録音  87点

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