クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) メルクル(98) 

2017.02.03 (Fri)
ALT006_007.jpg
準・メルクル/NHK交響楽団(98、Altus)はロマンティックで情熱的。
ラトルと並びこの曲を愛奏しているメルクル(1959~)。
N響を燃えさせ快演を成し遂げた。

シェーンベルク(1874~1951)はブラームス(1833~97)の若書きの
ピアノ四重奏曲第1番作品25(1861完成)を1937年に管弦楽曲に編曲した。
契機はクレンペラーからの依頼といわれているが、シェーベルクは
この曲が気に入っていた。彼は編曲の理由を以下のように述べている。

①私はこの曲が好きだから
②この曲は滅多に演奏されないから
③演奏されても酷い演奏ばかりだから(ピアノの音で弦が聞こえない)

そして出来上がった曲は編曲者曰く「ブラームスの第5交響曲」。
まあ、ブラームスが生き延びて自身で編曲しても多分このような響きには
成らなかったと思うが、実に面白い曲だ。
私は室内楽の原曲よりシェーンベルクの編曲の方が好き。
ブラームスが交響曲で使わなかったバスドラム、シンバル、グロッケンシュピール、
スネアドラム、タンバリン、トライアングル、シロフォンなどを投入し、
ホルンでなくトランペットで金切り声をあげる。
ブラームスのロマンとシェーンベルクのグロテスクが同居する。
Schoenberg-350.jpg

第1楽章の憂いを帯びた主題提示とその展開が実にキャッチー。
この曲がポピュラーになる要素を持つ。
そして管弦楽版は内にこもりがちな情感をうまく開放し伸びやかさを
付加する。準・メルクルはしっかりメリハリをつけながら歌う。
シェーンベルクに近かったクレンペラーやR・クラフトのザッハリヒ
ともいえるスタイルとは異なる。
ただ、ここはNHK交響楽団と日本放送協会の録音、中立的な音で
演奏の濃さを中和する。
ただ、打ち込みは素晴らしく、冒頭より熱は十分伝わる。
音はだれずグイグイ引っ張る。

第2楽章は速めのテンポの間奏曲。
ここでも単に流すのでなくホルンに隆起させる場面などここらがこもる。

第3楽章はシェーンベルクの編曲が素晴らしい。
大オケと室内楽的楽想、両端の歌謡性と中間部の輝かしいマーチ、
憂いと高揚の対比に驚くばかり。
メルクルはその変転を強調しながら愉しませてくれる。
ブラームスのメロディーを使ったマーラーのようでもある。

終楽章はプレストだが、この指揮者は千変万化。
そして冷静なNHK交響楽団を本気に熱くさせている。
アンサンブルはぎりぎりの面はあるかもしれないが、テンポと表情の変転は
めまぐるしくかつダイナミック。ぐっと溜めを作ったり豪快に走ったり。
終結部の燃焼はすさまじく、聴衆の拍手が興奮している。
当時まだなじみのない指揮者、曲に対してこれほどの喝采が
贈られるのは珍しい。感動の記録。

録音はNHKホールでのライブ(デジタル収録)。
nhkホール
この多目的ホールの音響は知られたところだが、この録音はよい部類。
ホールトーンを味わうことはできないがスッキリ明晰。
低域の量感は望めないがこの曲を厚ぼったくさせない面ではプラスかも。

14:10  8:01  11:49  10:58  計 44:58
演奏   情A+    録音  90点

コメント


管理者のみに表示

トラックバック