クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブルックナー 交響曲第1番 ギーレン(2009)

2016.11.27 (Sun)
ギーレン全集
ギーレン/南西ドイツ放送交響楽団(2009、SWRMUSIC)は重量級のウィーン稿。
初期(リンツ稿1866年)ではなく後期(ウィーン稿1891年)の作品としての演奏。
そうして聴くと実に充実した響きに魅せられる。
初めてウィーン稿の真価を問う演奏が出たといえるのではないか。

この稿の使用はヴァント、ロジェストヴェンスキー、シャイー、飯森盤が
知られているが非常に少ない。
金子健志氏はリンツ稿に対して四半世紀後のウィーン稿について
『白黒フィルムで撮った作品をカラー映画としてリメイクしたようなもの』と評している。

楽器編成は2管のままで異ならないが金管・ティンパニの出番が増え
重厚さと華やかが増したのは事実。
曲想は3.4.8番ほどの大幅な改訂ではないが聴感上のサウンドが違う。

ウィーン稿は晩年に作曲家自身が正規に改訂したものなのに
演奏は現在でも殆どリンツ稿でなされる。
多分若書き(といっても40歳過ぎ)の第1番は線は細くとも一途な勢い
のままの方がよいと考える指揮者が多いのだろう。

さてこの演奏。後期の作品にふさわしい低重心の凄味ある音。
青く軽い印象を持っていた第1番が重量級の交響曲になっている。

第1楽章冒頭の進軍から分厚い。テンポは落ちつているが弛緩はしない。
前のめりに突っ込むことはない。それぞれのパーツを綺麗に聴かせてくれる。
ゴッツイ音ながら分解能が高いのは流石ギーレン。

第2楽章もダラダラではなく意志的。

第3楽章もどっしりドスコイ調。
アクセントは明確だがピラミッド音響なので全く軽くならない。

終楽章は「運動的に火の如く」という指定だが音響の押し寄せは横綱的。
テンポはシャイーほどころころ変わらず勢いを保つが、線は太いまま。
一気呵成に終わってしまうリンツ稿に対して、こちらは雄大な景色を見せる。
このスケール感はブルックナーサウンドの醍醐味(苦手な人はいるだろうが)。

ギーレン(1927~)は2014年に引退を表明したが、この演奏では気力が充実。
また、このオケもドイツらしい実にいい音を出している。

録音は1/25のフライブルク、コンツェルトハウス
Freiburg Konzerthaus
と1/29のグラン・カナリア、アウディトリオ『アルフレード・クラウス』
Auditorio Alfredo Kraus
auditorio_alfredo_kraus_.jpg
でのライブの合体編集。
時間は近接しているがこのように全く形状の異なるコンサート会場での演奏を
繋いだというのは珍しい。しかしその割に違和感がない。
ブルックナーらしいスケールと重厚さをしっかりとらえている。
弦や木管も非常に美しい。ライブらしさのあるレベルの高い音。

13:53  12:59  9:20  15:45   計 51:57
演奏   A+    録音  94点

<参考:ブルックナー作曲時期年表>(クリックで拡大)
リンツ稿とウィーン稿がいかに離れているかが分かる。
ブルックナー年表

コメント

勉強になります
この図を見ると
「旧作の改訂に時間を割かれ、第9の4楽章を完成出来なかった」
ことがよく分かりますね。
補筆完成版でいえば
マーラー第10ほどブルックナー第9は浸透してませんね。
私はアマオケの実演に接して感動しましたが。
No title
影の王子様
9番はずいぶん長いこと作曲が継続されていますが、その間に旧作の改訂作業が立て込んでいたことが分かりますね。
他人による9番の終楽章の補完作業はどれも満足できないのでこの改訂作業による中断がなければ・・・と思ってしまいます。

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