クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D.960 ブレンデル(88)

2016.11.01 (Tue)
ブレンデル960
ブレンデル(88、Philips)はこみ上げる切なさ。
テンポは流れるが常に歌っている。そして目がウルウルしている。
どの楽章も何か哀しい。快活な最後の二つの楽章でもだ。
タッチは繊細を極め、そして哀しい。

ブレンデルは眼鏡をかけて一見大学の教授のような理知的な見かけ。
しかしこの演奏を聴くとなんとロマンティストなのだろうかと思う。

第1楽章は最初は何事もないかのように始まる。うつむき速足。
しかしだんだん感情が堪え切れない。泣いている!こちらももらい泣き。

さて、この演奏で問題となるのは第1楽章呈示部の反復がないこと。
楽曲が始まり5分。冒頭に戻るための毅然と区切りをつけるような9小節を省略し
(冒頭に戻らず)そのまま展開部に突入する。
ブレンデルは、反復の是非よりもこの9小節の経過句を問題にしているようだ。

確かに他の演奏で聴こえるこの唐突な「タラッ、タラッ、タラッ、タラッ」は
一瞬何が起こったのかと思う。ドキッとする。
そしておもむろにまたもや冒頭の不安な平穏に戻る。この効果は絶大だ。
しかし、ブレンデルはこれを異分子の混入と見る。

確かにそう言われるとそうだし、ブレンデルの流れのいい演奏で聴いていると
楔のようなこの楽区は如何にも違和感の出るものだろう。
従ってこの演奏では省略も納得。

このD.960は前2楽章と後半2楽章の形相が違いすぎるが、
ブレンデルの演奏で聴くと一つの宇宙を作っていることが分かる。
これは第1楽章を重たくしすぎないようにしたことも効いている。

録音はバイエルン州ネノイマルクト・オベルプファルツでのセッション。
ノイマルクト
Neumarkt_20161030144927160.jpg
実に綺麗なピアノが捉えられている。

14:47  9:18  3:46  8:30   計 36:21
演奏   A+   録音 95点

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