クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

グレインジャー 戦士たち サイモン(89)

2016.10.30 (Sun)
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サイモン/メルボルン交響楽団(89、ABC)はこの曲の先導役。

パーシー・オルドリッジ・グレインジャー(Percy Aldridge Grainger)の
「想像上のバレエ音楽:The Wrrriors(戦士たち)」。
この曲は私が密かに尊敬する楽曲。
既存の概念から外れているが実に生き生きとした音楽とダイナミックな
オーケストレーションで魅せる。最後は特に素晴らしく感動的。

グレインジャーは1882年メルボルン生まれ1961年ニューヨークで
癌のため亡くなった異彩天才。その生涯と人物像は未だ謎めいている。

研究家の宮澤淳一氏によればこの作曲家は
「鳥の飛翔のような旋律、大洋の波のようなリズム、夕暮の空のような和声」
を目指したというがこの曲にはそれがある。

グレインジャーの1200ほどの楽曲の中でこの曲は最大規模でかつ突然変異的。
楽器編成は拡大されたオケ+多彩な打楽器群+3台のピアノ
+舞台裏のブラスセクション。
全く違うテンポとリズムでオケと打楽器群が並走する場面があるためと
舞台裏のために指揮者が3人。
(↓演奏風景:右に正指揮者、手前中央左に副指揮者1、
  左上に3台のピアノ、奥の扉の向こうに副指揮者2とバンダ)
戦士たち

曲想は何か原作があってつけた音楽でなく作曲者のオリジナル。
8つの場面に分かれるが、明確なストーリーはない。
テーマは『地球上のあらゆる種族の戦闘ゲームのような乱痴気騒ぎ』。

作曲時期は1913~16年にかけて。
ディアギレフ主宰のロシア・バレエ団の、イギリス公演のためのバレエ音楽として
指揮者のトーマス・ビーチャムから委嘱されたとなれば如何に作曲者が張りきったか
わかろうというもの。
ストラヴィンスキー『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』『プルチネルラ』『結婚』、
ラヴェル『ダフニスとクロエ』、ドビュッシー『遊戯』、プロコフィエフ『道化師』『鋼鉄の歩み』、
サティ『パラード』、 レスピーギ『風変わりな店』、 プーランク『牝鹿』・・・皆このコンビだ。

しかし、何らかの理由で上演されなかった。これがこの曲の運命を変えた。
もし、上演されていたならば音楽史上の位置づけは変わっていただろう。

登場する部族は、ギリシャ、ズールー族、ヴァイキング、アマゾン、グリーンランド、
インディアン、フィジー、ポリネシアンなどからかき集められているというから
これまた破天荒。
但し、音楽は上記にかかわらず土俗的というより煌びやか華やかな音の饗宴で品もある。
リズムの扱いは複雑なのだが最後は終結して巨大な大団円。
言葉でこの曲を説明するのは難しいが最後は感動的とだけ言える。

さて、この演奏はデジタル録音としては最初のものという記載があるが
私はそれ以前の盤を知らない。
指揮者ジェフリー・サイモンはアデレード生れイギリスで活躍する指揮者だが、
多分グレインジャーを自分と重ねているのだろう。
母国のオケを振って活力ある演奏を聴かせる。

この曲の演奏は非常に難しく、ダラダラやると拡散してしまうが
見事にオケを掌握し切り込み隊長の役割を果たした。
残念ながらマイナーレーベルでの発売だったため有名な盤ではないが、
後続の有名指揮者の意欲を掻き立てたと思う。

録音はメルボルン・タウン・ホールでのセッション。
メルボルンSO
ABC(オーストラリア放送局)の優秀な録音陣でスケールの大きな録音を
成し遂げた。空間は十分広く、DレンジもOK。
各楽器も明確に録れ、バンダは11:44から右奥から登場するが効果的。
EMIより上だ。

1810
演奏   A+   録音  92点

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