クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

アッテルベリ 交響曲第6番 児玉宏(2009)

2016.09.05 (Mon)
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児玉宏/大阪シンフォニカー交響楽団(2009、KING)は清潔なロマンが溢れる。
指揮者児玉宏(1952~)は、このCDの解説に『演奏を聴いた聴衆の皆様が自ら作品の
価値判断できるように様々な選択肢を提供することを大切に考えています』と記している。
このコンビの演奏会とCDはおよそ日本では通常取り上げられないような曲を演奏してきた。
それは本当に素晴らしいことだ。
このオケは今は大阪交響楽団と改名しているが
児玉の音楽監督は今年でもって8年間の任期を終えた。
児玉宏
その最初期の成果がこのCDだが、ほかの演奏と比べて細身ながらとてもよく歌う。
そして北欧のオケといってもおかしくないくらい共感を持って演奏している。
テンポは全体的にゆっくり目で迫力面ではN・ヤルヴィやラシライネン盤に負けるが、
この曲の日本初演がこれだとは驚くが、丁寧で啓蒙的な姿勢は好感が持てる。

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アッテルベリ(1887~1974)はスウェーデンはエーテボリ出身の作曲家、
なのだが本職は工科大学卒での王立特許局の官僚(1912~68)。
局長まで行ったから出世しているし、著作権保護協会を設立し会長にもなっている。
ある意味日曜作曲家なので作曲で生計を立てる必要は全くなかった。

この人の曲は大時代的ロマン派で作曲当時は「時代遅れ」なのだろう。
しかし、本業が別にあったので、音楽の革新に対する気負いもなく好きな音楽を
書けばよかった。その意味で幸せな”作曲家”だった。
そして21世紀になりかつて進歩的と持ち上げられた曲が今や見向きもされない一方
このようなコテコテが命脈をしっかり保っているということは意味深い。
(作曲家自身、知的人間なのでコテコテであることは百も承知だった)

とにかく、しっかり役所・会社勤めしながら趣味のように書いていた作品が
現在まで残っているなんて多くのサラリーマンにとってまことに羨ましい生き様。
会社にしか軸足がなければそれが全てであるが、
別の軸足があれば心に余裕ができる。
多元多軸は人生の処世術でもある。

そしてこの第6交響曲は皮肉な経歴を持つ。
それは、この曲がウィーン楽友協会とコロンビア・レコードが1927年にシューベルト没後100年を記念した
作曲コンクールの優勝作品ということ。
応募500作品超の頂点なのだが、次点以下の作品にはフランツ・シュミットの
交響曲第3番やブライアンのゴシック交響曲なども含まれていた。
とにかくプロ作曲家のあまたの作品を押しのけて日曜作曲家が一等賞。
本人はこのコンクールの優勝発表会に出ていなかったというから
晴天の霹靂だったのかもしれない。

曲はとにかく分かり易い。
第1楽章は明確で勇敢で耳に残りやすいメロディにあふれる。
第2楽章はロマンティックな夕映えのようなアダージョ。
終楽章はシンプルに明るい主題を繰り返すヴィヴァーチェでお決まりの壮大なコーダ。
効果を狙った映画音楽のようで、底が浅いと言われればそれまでだが
愛すべき作品(個人的には第5番のほうが上)。

録音は大阪、ザ・シンフォニーホールでのセッション。
大阪交響楽団
非常に綺麗に録れており全く不足はない。伸びや明晰さも十分。
オクタヴィア・レコードの面々が録音しているといえば想像できよう。

10:31  13:54  9:51   計 34:16
演奏    A    録音  94点

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