クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ストラヴィンスキー 春の祭典 ドゥダメル(2010)

2016.08.27 (Sat)
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ドゥダメル/シモン・ボリヴァル・ユース管弦楽団(2010、DG)は
アマゾン系音響伽藍。超個性派。

180名超の大人数オケの大味な演奏を想像していたが、それを超えた。
マッシブな音自体独特だし巨大な音響に驚きの連続だが、
ドゥダメルが上手く持ち味を最大限に発揮させたことが大きい。
最近のありがちな整然スマートな演奏とは対極。
低域が拡充された音は威力満点でこれほどでかい音塊は初めてだ。
しかも巨物なのに、いざとなればリスクテイクして
アッチェレランドを豪快にかけていく姿は彼らの挑戦魂を感じる。

この1999年設立のユース・オケは「エル・システマ」活動から生まれた。
この活動は、音楽による青少年育成を目的として、
1975年南米ベネズエラで始まった音楽教育システム。
現在、同国の約40万人の子どもたちが参加しているという。

子どもたちは無償で楽器と音楽指導が提供され、高い演奏技術だけではなく、
集団での音楽体験を通じて優れた社会性(忍耐力・協調性・自己表現力)を
身につけられるとして、その効果は世界中で注目されている、とのこと。
貧困と青少年の犯罪が深刻な問題であるベネズエラで
犯罪や非行への抑止力としても役割を果たしているようだ。
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エル・システマの理念は素晴らしい(下記)。

1. すべての人が経済的事情を懸念することなく、音楽にアクセスできることを保障
2. 集団(オーケストラ)での音楽活動を通じ、コミュニケーション能力を高める
3. 社会規範と自己の個性の表現を両立することを、音楽体験を通じて学ぶ。

難しいことはともかく映像に見る
彼らの溌剌とした喜びに充ち溢れる演奏に接すると胸が熱くなる。
(彼らの十八番、バーンスタインのこの「マンボ」を見て感激した)

また、単なるノリだけでなく超絶的な技術も合わせ持っていることに驚く。
それはこの「春の祭典」でも分かる。

第1部
⑤「対立する部族」の低弦のごッツさは聴いたことがない。
⑧「大地の踊り」の壮絶なスピードは結束と信頼の証。

第2部
⑨序奏のもわっとした空気感の中でもポルタメントに表現意欲がのぞく。
⑪「選ばれし乙女への賛美」直前の11連打からは
増幅されたパーカッション群が風圧を感じさせる。
⑭「生贄の踊り」の前にのめった驀進力には感嘆する。

録音はカラカスのCentro de Acción Social por la Música Simón Bolívar
でのライブ。(↓盆地のカラカスは大都市だ)
700px-CaracasAvila.jpg
(↓このオケの本拠地ホールはでかい)
シモンボリヴァル
巨大オケ巨大会場のため肥大化しているのは確かだが
頑張っている。放送用マイクを数本置いただけではぼやけてしまう
奥の楽器なども巧く入っている。
量感たっぷりの分厚い響きでとげとげしさはなく、
低域のボリュームは極めて多く、大太鼓の風圧は凄い。
ティンパニも輪郭を維持して強打される。

併録のレブエルタス「マヤ族の夜」(凄い演奏!)には拍手が収録されて
いるが「春の祭典」ではない。

16:12  17:48   計 34:00
演奏    巨S    録音  93点

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