クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ヴァレーズ アメリカ シャイー(96)

2016.07.15 (Fri)
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シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(96、DECCA)の
初稿版初録音は驚異の空間芸術。

《アメリカ》(Amériques)は、1918年~21年にかけて作曲され26年に
ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団で初演された。
この時155人以上の奏者を必要とした。
木管各4、ホルン8、トランペット6、トロンボーン4、チューバ3、
拡大弦楽5部にハープ2台。更に別途バンダ。
打楽器はティンパニ2組、バスドラム2、スネア・ドラム、シンバル、シロフォン、
グロッケンシュピール、トライアングル、タンブリン、ゴング、カスタネット、
鞭、ラチェット(歯車音)、鈴群、ライオンズローア、サイレン、ホイッスル、
ウインドマシーン、チェレスタ、クロウ・コールを15人程度の打楽器奏者で割り振る。
(↓ライオンズローア:太鼓の皮に紐を結び擦ってライオンの唸り音を出す)
ラアイオンズローア
(↓クロウコール:これを吹いてカラスを呼び駆除する。もはや楽器なのか?)
クローコール
さすがのストコフスキーもこれはでかすぎると作曲家に注文をつけ、
ヴァレーズは1927年素材と楽器を圧縮しバンダを除いた改訂版を作った。
これでも5管編成と多彩な打楽器群は健在。これが従来の聴いてきた「アメリカ」。
ヴァレーズを尊敬する直弟子の周文中による改訂版の決定稿が出版された(1973年)。

しかし、DECCAのプロデューサー、アンドリュー・コーナルは初稿版の復活を目論み
周を口説き落とし、ヴァレーズの手稿から1921年初演版を再構成させた。
その記念すべき記録が本盤だ。
周はこの後1998年に初稿版を出版し2005年に更に改訂している。

さて、この演奏、原典版ということに加えコンセルトヘボウ収録である
ことも相まって今までの「アメリカ」とは印象が相当異なる。

冒頭のアルト・フルートの後に叫びをあげる金管が”バンダ”となる効果は絶妙。
そこに改訂版では聞かれないクロウ・コール(カラス音)やライオンズ・ローアの淋しげな声。
広大な空間に飛び交う音に幻惑。浮遊感の中にブラスの俊立音。
今までとは違う宙の彷徨が続く。ホールとオケが一体となって鳴る。
シャイーが時にそれをギュッと締めるので緊張感が維持される。

後半になるとスピードを上げバーバリスティックな迫力を増す。熱気が滾る。
特に最後の4分間は、バスドラによる空爆を受けつつ小銃の雨降る中、
ムチで叩かれ、ヤカンで頭突きを食らわされ逃げ惑う。
やはり、シャイーは演出巧者だ。
Chailly-Riccardo-09[Hiroyuki-Ito]

録音はコンセルトヘボウ大ホールでのセッション。
現代音楽にこのまろやかなホールはいかがかと思ったが
この曲では見事な効果。前例のない巨大なスケールを表出するとともに、
鋭角音も見事にブレンドする技を見せる。流石DECCA。
低域の迫力、レンジの広さ、言うことない。再生が難しい。

24:38
演奏   S   録音  97点

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