クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

コープランド アパラチアの春 カンゼル(95)

2016.06.29 (Wed)
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カンゼル/シンシナティ・ポップス管弦楽団(95、TELARC)はノリよくいい感じ。

因みにこのCDには、ポピュリスト時代の人気曲が一通り網羅されている。
どれもいい気分で聴ける。
  ① 市民のためのファンファーレ (1942)
  ② バレエ組曲「ロデオ」 (1943)
  ③ 静かな都市 (1940)
  ④ バレエ組曲「ビリー・ザ・キッド」 (1938)
  ⑤ バレエ組曲「アパラチアの春」 (1945)

コープランドは1900年NY生れだが、
当時は米国の音楽教育もドイツ系偏重だった。
それに飽き足らない彼は21歳でパリに行きナディア・ブーランジェから
多くの薫陶を受けた。で、出来上がったのは、バリバリの前衛音楽家。
彼の交響曲第1番を初演した指揮者ダムロッシュの名言がある。

「24歳でこんな曲を作曲するなら、30歳になったら人殺しもしかねないだろう」

豈図らんや、彼は30歳になると転向した。
「音楽は聴かれなければならない!」
1930年代後半から1940年代に創作されたのがこのアルバムの曲。
現在、彼の代表作といわれるものは略この時期に集中している。

1950年代以降再びコープランドは前衛手法に転ずるが、
それらが演奏される機会は少ない。

彼の軌跡は芸術家の創作意向と一般の受容との間に
溝があることを改めて感じさせる。
ビジネスの世界ではプレゼンテーションは受け入れられなければ
意味がないが、芸術の世界は同じではないということか。

私は1960年代から70年代に日本でも吹き荒れた
謎のゲンダイオンガクに辟易とした。
もし、他人に分かってもらわなくていいと本気で考えるなら、
創ってもいいが発表しなければいい、とすら思ったことも。
そして、結果的に今それらの曲を聴くことは殆どない。

音楽における「革新」「進歩」に多くの作曲家は悩む。

閑話休題。

さてこのアルバムはそのクラシックの歩んだ晦渋とは別の世界。
なんといってもオケの名前が「ポップス」である。
母体はシンシナティ交響楽団だが何が違うのか分からない。
プロの音楽集団のなせる演奏が展開される。

そして指揮者エリック・カンゼル(1935~2009)。
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彼は既にこの世にいないが一貫して軽やかな世界に身を置いた。
それも生き方。
この演奏はどれも愉しそうで活き活きしている。
ダンスのリズムが弾む。
こうして人を楽しませる、気分を和ませるのは案外難しい。

録音はオハイオ州・シンシナティのミュージックホールでのセッション。
この時代のテラークらしい、平然と落ち着いた優秀録音。
ホールトーン含めてオケのダイナミクスと静けさの快感を味わう。

25:24
演奏   A+    録音  95点

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