クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

メンデルスゾーン 交響曲第3番 マーク(97)

2016.06.01 (Wed)
メンデルスゾーンマーク34
マーク/マドリッド交響楽団(97、ARTS)は端正ですっと立つ。
マークのスコットランドの中で一番軽く快活。
これはオケの音色にもよるのだろうが、
マークはここでは古典作品を扱うかのような表現に「達して」いる。

60年ロンドン響との押しつけがましさや、86年ベルン響との心細さはここにはない。
全てをくぐりぬけた一種の晴れやかさ爽やかさが漂う。

マークは60年代前半、40代半ばに思い立ち世を捨て禅の世界に入った。
もともと哲学を履修するような素養があったのだが、
出世への希求、他人への妬み嫉みが強くなった自身に気付き、
邪念粗雑物からの脱却を求めて修業に入った。

しかし、ある意味ではこうしたことができるのは羨ましい。
常人は働き盛りに世俗を捨てることなどできない。

それはともかくマークの「スコットランド」を並べて聴くと
彼の精神世界の変遷が見て取れるような気がする。
修行前のロンドン盤は世評が高いがこのころ彼は大きな悩みを抱えていて
それを吐露するような印象がある。
86年盤はすでに肩の力が抜けて虚無の世界すら見せている。
そして人生の終盤に録音されたこの演奏は嬉々とした明るさを獲得している。
捨てた後に得た幸福感に満ちている。
人間こんな風に生きることができたらいいな。
マーク

第1楽章はバランスよく歌とほの暗さが変転しながら進む。
ノーテンキではなくおさえるところを押さえているのが流石。

第2楽章はカラリとしている。

第3楽章は天上の安息の世界を垣間見るよう。

終楽章は落ち着いたテンポと抑制の効いた音で始まり徐々に感興を増す。
オケの編成なのか力みなく軽さを維持する。ティンパニの合の手がとてもいい。
問題の終結はじっくりとテンポを落とし深淵を彷徨った後、宙に昇る。
これが彼の辿りついた境地。

録音はマドリッドのオウディトリオ・ナシオナル・デ・ムジカでのセッション。
ES_Madrid_Auditorio_Nacional_de_M__sica.jpg
ヌケよくオン気味に捉えた明確な音像。
弦の擦れ感ある音など独自だが、ピリオド的な音色を持つ。
乾いた硬質なティンパニの音が気持ち良い。

14:07  4:32  10:17  10:45   計 39:41
演奏   A+    録音  93 点

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