クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

メンデルスゾーン 交響曲第3番 マーク(86)

2016.05.31 (Tue)
メンデル3マークベルン
マーク/ベルン交響楽団(86、IMP)は驚くべき寂寥感。
この指揮者に何があったのかと思うほどのちょっと怖い演奏。

マーク3種(ロンドン、ベルン、マドリッド/都響は未聴)のスコットランドは
はっきり言って同じ指揮者のものかと思うほど違う。
その中で圧倒的な救いのなさ、哀愁に塗れているのがこれだ。
救いのなさと書いたが、そもそも救いを求めているようには感じられない。

ロンドン響のものは心に訴えかけが強いが、この段階ではどうだこれだけ
寂しいんだという表情が迫ってくるような押しの強さがあった。
これはロンドン交響楽団の立派さも手伝っていただろう。

しかし、この演奏ではそんな大袈裟な表情は全くない。
どうした、大丈夫なのかと不安に陥れられる。

後年のマドリッド響とのものは、もう突き抜けた古典的な潔さの世界に
身を置いているが、本盤は未だ現生の迷いの中を彷徨する。

マーク(1919~2001)、スイス・ザンクト・ガレン生まれのこの指揮者が
母国のオケと残した一世一代の”儚い”名演だ。
scottish1.jpg

第1楽章はこの演奏の白眉。
マークはこの楽章にこの曲の本質が全て投影されていると考えたのだ。
提示部の反復をして17分超と保有盤最長の演奏時間。
遅さは感じないし退屈を感じない。
冒頭の木管と弦のバランスが絶妙。絹のような弦に木管が冷風で並走する。
か細い歌が連綿と続く。オケの薄さが荒涼とした心象を映す。
長い序奏の後の主題提示も他に比べればよわよわしい。
しかし肝心なところでは弦も木管も意志的な表情を突如として露わにする。

第2楽章は一転軽やかに。何事もなかったかのようなこの変転が怖い。
ただし、金管のアクセントは奥に引っ込み激しくはない。
弦の掛け合い(対向配置?)は目覚ましい効果。

第3楽章へもアタッカで入りまたもや心細い道をとぼとぼ歩く様な
気配に包まれる。弦のヴィヴラートは上品なのだが・・・。

終楽章も含みを持った音楽。
前半のヴィヴァーチッシモからして快活一本ではない。怒涛の音響もない。
そして後半のマエストーソ・アッサイにかけてはじんわり。
問題の終結は音を粘らせ引きずるように進む。取ってつけた感はなく、
未解決の重いものをずっしり受け取ることになる。

録音はベルンのKultur Casinoでのセッション。
Kultur Casino, Bern
大きすぎず石造りのクールな美しい音響。
ベルン音楽公社音源をカールトン・クラッシクがライセンスを得てCD化している。
録音プロデューサーにトニー・フォークナーの名前がありこの録音の
レベルの高さに合点がいった。かといって作為的なものはなくむしろさらりとして
物足りないぐらいかもしれない。しかし、演奏のあり方と見事に合致した音だと思う。

17:17  4:17  10:38  10:39   計 42:51
演奏    寂S    録音  91点

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