クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ドヴォルザーク 交響曲第9番 ジル=オルドニェス(2013)

2016.04.28 (Thu)
ドヴォルザークハイアワサ
ジル=オルドニェス/ポスト・クラシカル・アンサンブル(2013、NAXOS)は変化球。
この盤はダイレクトに「新世界」を演奏しているのではない。
ドヴォルザークが構想していた未完の歌劇「ハイアワサ」に「新世界」の音楽をつけて
オルドニェスがナレーション付きメロドラマとしたもの。
CDの原題は「ドヴォルザークとアメリカ」(DVOŘÁK AND AMERICA )。

NAXOSの帯の説明文をそのまま転載すると
『1891年の春、ニューヨーク・ナショナル音楽院の創立者・理事長ジャネット・サーバーから
音楽院院長職への就任依頼が届き、逡巡しながらもアメリカに旅立ったドヴォルザーク(1841-1904)。
しかしアメリカの人々は彼の渡米を心から喜び、すぐさま彼自身もこの土地に馴染んだのでした。
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(↑アメリカの地を踏んだドヴォルザーク一家)
1893年には交響曲第9番「新世界から」を完成させていて、この曲には黒人霊歌の旋律などが
使われていることは良く知られていますが、実はそれよりも、彼自身が長年構想を温めていた
という歌劇「ハイアワサ」に使うための素材が数多く用いられていたのです。

「ハイアワサ」というのはネイティヴ・アメリカ(昔でいえばインディアン)の英雄の名前であり、
彼を主人公にした「ハイアワサの歌」という長編の詩をH.W.ロングフェローが書き、
それに目をつけたドヴォルザークが歌劇の題材にしようと目論んだのでした。
結局、音楽院の委員会の反対によって、歌劇「ハイアワサ」の構想は実現することなく、
ドヴォルザークはいくつかの曲をそのまま「新世界より」に流用。
有名な第2楽章が哀しさを帯びているのは、実はハイアワサの花嫁ミンネハハの死を
描写した音楽だったのです。
この史実を考えると、これまで言われていたような"「新世界より」はドヴォルザークが
故郷を思って書いた作品である"と簡単に言ってしまうのは早計であるのかもしれません。
このアルバムは、そんなドヴォルザークの構想を「メロドラマ(音楽と朗読の融合)」として
再現したもの。良く知っているメロディが次から次へと現れる興味深い物語となっています。』
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このメロドラマは全体が33分ほどのもので以下の構成
①プロローグ (1:16)
② ハイアワサの求愛 (9:55)
③ハイアワサの結婚式の饗宴 (5:30)
④ミンネハハの死 (5:38)
⑤パウ=プク=キーウィスの狩り(8:02)
⑥ エピローグ:ハイアワサの出発 (2:29)
それぞれの場面につきナレーションと音楽が流れる。

音楽は「新世界」他から引用されたものだが、
そもそも「新世界」のメロディが「ハイアワサ」から転用されているというから
どちらが先なのかよくわからない。
⑤の狩りの場面は「新世界」の第4楽章が用いられるが
多分全く当てつけなのだろうが、迫真のナレーションとともに聴くと
実にフィットしてしまって、劇音楽に聞こえてくるから不思議なものだ。

勿論この創作を認めないことも可能なのだが、この有名な交響曲第9番「新世界」が持つ
パッチワーク的な唐突な楽曲の変転や哀しさの感情の昂ぶりの不思議さの由来について
このメロドラマを聴いていると、なるほど・・・と思えてしまう。
「新世界」に興味があったら一聴に値するCDだと思う。

録音はメリーランド州クラリス・スミス・パフォーミング・アーツ・センターでのセッション。
編成の少ないオケが伸びの良い空間で力まず鳴っており快適。
また、ナレーターのケヴィン・デアスの声も落ち着いた感じで好感が持てる。
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CD全体  76:41     録音 94 点

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