2016.04.22 (Fri)

ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団(2006、BIS)は現在一番好きな演奏。
他の演奏と断然違う。
巨匠の演奏が多かれ少なかれノスタルジックで過去を懐かしむ風情があったが、
この演奏は立脚点が異なる。
今を生きる!青春の張り裂けんばかりの思い。
なんという生命力、そして新鮮なロマン。
この盤は第9番「新世界」との併録でそちらの方が話題になることが多いのだろうが、
私はこの第6番の方により衝撃を受けた。
第9番はすでに色々なアプローチの洗礼を浴びているが
この第6番は本場物系が寡占しているからだ。
そうした中にピリオド奏法を伴った清新な若武者のような演奏が切り込んできたのだ。
若気といっても音楽は単調ではなく速めのテンポの中に
表情を変転させる考え抜かれたもの。
トーマス・ダウスゴー(1963~)は現在もっとも注目すべき指揮者の一人だ。

オケは1995年創立の38名編成。現代楽器を用いながらきりっとした筋肉質な音。
肥大化した音が多い中これも好みだ。

第1楽章は希望を胸に歩み出し高鳴る感興がどっと押し出される。
この楽章で驚いたのはその後だ。
ひとしきり盛り上がった4分頃から音楽が鎮まると同時に、
ひんやりとした冷気が流れるこむ。
これはまさにスウェーデンの作曲家スンハンマルの交響曲第2番の世界だ。
ボヘミアから北欧へワープしてしまう。
ひっそり内奥に向かって心を溜めるというのは寒い冬を経験する民族の特技。
この北欧コンビはこの曲でそれをやってのけてしまった。
第2楽章も音が立っている。
第3楽章フリアントは快速だ。青い苛立ちのような始まり。
やり場のない感情。それを中間部で無理やり押し殺すがもちろん収まるはずはない。
終楽章は密やかさから起立する様が素晴らしい。
音の粒立ちが良く、それぞれの表情が活き活き。
音楽のノリが良く一気に最後まで運ぶ。
ブラスが力奏し非常に輝かしく幸福感に満ちていて気持ちいい。
録音はスウェーデンのオレブロ・コンサートホールでのセッション。
それほど広くない木質のホールでこのくらいのオケには丁度よい。
音は響きが少なめで、ドライな感じがあるがこの演奏の特色をうまく伝える。
マイクが近いわけでなく人数が少ないので明晰さが保たれる。
12:05 10:19 7:30 10:14 計 40:08
演奏 鮮S 録音 93点