クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

シベリウス タピオラ ヴァンスカ(97)

2015.12.05 (Sat)
ヴァンスカタピオラ
ヴァンスカ/ラハティ交響楽団(97、BIS)は清涼な幻想。
ヴァンスカが育てたラハティ響とのコンビは今聴き直してみてもやはり素晴らしい。

生誕150年ということで、今年はシベリウス演奏会の当たり年。
11月29日(日) オッコ・カム指揮ラハティ交響楽団(東京オペラシティ)と同じ曲を、
12月 4日(金) オスモ・ヴァンスカ指揮読売日本交響楽団(サントリーホール)で聴いた。
一週間に2度も交響曲史上最高の傑作群を生で味わうというのは夢のような出来事。
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シベリウス
・交響曲 第5番 変ホ長調 作品82
・交響曲 第6番 ニ短調 作品104
・交響曲 第7番 ハ長調 作品105
(但し、アンコールはカムが3曲に対してヴァンスカはなし)

全く同じ構成で聴いたので自ずと相違を感じた。
①指揮者②オケ③ホールについて少し記したい。

①カムとヴァンスカは作りだす音楽が違う。
ヴァンスカのメリハリに対してカムは大らかベースに時々ぎゅと締める。
たとえば、単一楽章の第7番においてカムは太く流れるのに対して
ヴァンスカは場面による緩急が付き明快。
指揮姿もヴァンスカは全身を大きく揺らしジャンプしたり鋭いキューを出すのに、
カムは大きくはなく職人的だ。これらはカムが歳をとって地味になったからではない。
カムは1982年ヘルシンキ・フィルと来日した30年以上前から基本は同じだ。

②読響の普遍的レベルの高さについては言うを待たない。
しかし特に第6番の弦のラハティ響の粉雪のような音や高まりにおける切ない表情は
生まれ持ったもののように感じた。巧拙を超えた話。
これはヴァンスカがラハティ響とミネソタ管を指揮したシベリウスを聴き比べても感じたこと。

③サントリーホールは好きなホールなのだが、今回の編成・曲目ではオペラシティの方が
クリアな音がした。金管も迫力があった。勿論座席位置による違いはあろう。
(ラハティ響のオペラシティ・コンサートホールでは3日間席をあちこち変えてみた)
スケール感ではサントリーの方だろうが。

さて、今回のコンサート。
やはりエンジンがのかかる後半にかけてどんどんヴォルテージが上がった。
第5番は直前に聴いたミネソタ管との驚異的集中が忘れられなかったが、
第6番の終楽章はヴァンスカ流のスピードと迫力で圧倒した。そして、
第7番は冒頭のエピソードが一段落して弦の分割9部による憧憬に満ちた主題が
呈示されトロンボーンによる啓示の場面ではもういっぱいになってしまった。
この曲ではカム/ラハティ響と双壁に達していた。

演奏後、静寂のあと盛大な拍手が起こった。
数日前のカム/ラハティ響の異様ともいえる熱気はなかったが、
むしろあれが特殊なことだったのだ。
ともかくシベリウスを満喫した一週間。
こんなことは生誕150年だから実現したのだろうが、生誕151年もやってほしい。

閑話休題。
このタピオラも同じオケを指揮したカム盤と併せて聴いた。
録音時、シベリウスホールができていなかったので、ラハティの十字架教会が会場。
そのため教会らしい美しいシルキーな響きがとても綺麗。
ヴァンスカとカムの演奏時間はほとんど同じだが、
ヴァンスカはテヌートを多用しロマンティックな表情なのに対し
カムはもっとザッハリッヒで峻厳。
しかしどちらも北欧の冷気たっぷりなのは言うまでもない。
敢えて言えば、ヴァンスカは黎明の森、カムのは漆黒の森。

録音はラハティ十字架教会でのセッション。
先述の通り、響きはカムのシベリウス・ホールの方が少なくクリアだが、
こちらはより幻想的雰囲気を醸し出す。これも素晴らしい音。

17:22
演奏   S    録音 94点

コメント

当初、ヴァンスカ読響への侵攻も検討しましたが、さすがに遠方であり断念しました。150周年も関西ではほとんど何も無いかのようです。ヴァンスカは諦めましたが、きっと安曇野さんが行かれるだろうと予想、安曇野さんのいつもの精緻なレヴューで演奏の概要は掴めるものと確信していました。
ラハティは素晴らしい体験でした。様々な困難を乗り越えても侵攻した価値がありました。生涯忘れることができないでしょう。
リベラ33様
正直なところヴァンスカの演奏を聴きながらも、
カム/ラハティ響が頭から離れませんでした。
それほどこのコンビの交響曲サイクルは
私にとっても奇跡的な体験でした。
彼らのシベリウスの交響曲全集のCDは
この演奏会の記憶を呼び覚ます意味に
おいても一生ものとなりました。


最高です!!
CDを聴いてみましたが、
迫力満点なのに決して騒々しくないフォルテ
繊細な管弦楽、コーダの美しさ!!
最高です!!
ついつい2度聴いてしまいます。

これは勝手な持論ですが、シベリウスの名演が北欧系に集中しているのは
「本場物だから良い」という単純な理由ではなく
シベリウスの各曲ごとに違う(「金太郎飴」ではない)
細に入り微を穿つ管弦楽の妙を
北欧系の演奏者たちがそれだけ深く理解しているからではないか?
ということです。
影の王子様
仰る通り本場物で片付けられない何かがあると思います。
シベリウスのスコアを眺めていると
よくこんな断片的な音符を書きつけたと感心します。
それを音楽にするのは相当のイマジネーションが必要かと。
それを共有しているのが、北欧勢なのでしょうね。

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