2015.11.19 (Thu)
ストゥールゴールズ/BBCフィル(2012,CHANDOS)は積極果敢。
面白く聴かせようとアイデア満載。
いじりすぎかも知れないが、この曲は浅薄な面を敢えて内包。
つまり、真に「深刻」なのではなく「深刻そうにしている」ことを
やや茶化して描いているのだから。
嘘っぽいわざとらしさが同居してごちゃまぜになっているのだ。
第1楽章「胆汁質」は変幻自在、所々溜めや強弱を作り、聴かせる。
硬いティンパニは必要に応じて引き締める。元気だったり心配げになったり。
オイオイ演技もいい加減にしろ、とこの主人公に言いたくなる。
第2楽章「粘液質」は速めのテンポで粘液性は薄く、とぼけた音楽を描く。
が、前楽章のような手練はない。
第3楽章「憂鬱質」は確かに重苦しさを「演出」。テンポも遅い。
ただし、中間部の木管を主体に弦を優しく絡ませていく部分(4:10~)は
この演奏の白眉ともいうべき美しさ。
いかにもニールセンらしいパッセージだが、同時に「北欧」を感じさせる
澄みきった抒情だ。今まで強がっていたがふと見せた真実を感じる。
故に6:40からの思いつめたホルンの強奏が胸に刺さる。
最後は怒りにも似た突き上げた感情が爆発するがそれは押し込められる。
怒ったポーズなのか本心からの叫びだったのか。
終楽章「多血質」のどんちゃん騒ぎは前楽章の「深刻」のすぐ後だけに
いつも面食らう。
統一的人格を描いているわけでないので仕方ない。
中間部テンポをぐっと落として多血質といっても複雑な思いを抱えている
ふりをするが、最後はお馬鹿なんです的超楽天的終結が待っている。
指揮者は屈託なくそれを表現して見せる。
真面目な聴き手は連続した時間の中でこの分裂的「交響曲」に接するので
心の整理が難しい。
わかりやす過ぎるこの曲が今一つ理解されないのはニールセンのひと癖ある
愛すべきキャラクターが起因しているのだろう。
(↓少年時代のニールセンの多面相から)
録音はサルフォード・メディアシティUKでのセッション。
この全集の最初の録音にあたり、サウンド・エンジニアはシュテファン・リンカー。
サブがこの第2番だけデニス・エルスという人。
サウンドキャラクターは全集で統一されているが響きが多すぎず
明快に録れているのが良い。新鮮な音だ。
9:47 4:12 11:56 6:58 計 32:53
演奏 多S 録音 94点