クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

シベリウス 交響曲第3番 カム(2012)

2015.10.06 (Tue)
カム全集
カム/ラハティ交響楽団(2012、BIS)は立体感抜群。
この曲で重要となる弦楽部が勇壮で実にいい響き。力と色気が乗る。
この交響曲が第2番より凝縮・明快さで格段の進歩を遂げたことを実感する。

また、この曲のメロディーは北欧独自の節回しを感じるが、ラハティは万全。
ここら辺はシベリウスを得意とするイギリスのオケとは微妙に違うところ。

72年のカム/ヘルシンキ盤とタイムラップはほぼ同じ。
あれは素晴らしい名演だが一層彫りが深くなっている。
しかも鮮度が高く生命力は衰えていない。

第1楽章の弦の進行はリズムが前向き、第2主題はしっかり歌う。
積極的だ。弦の各声部が重層的に運動しながら盛り上がりティンパニが
推進力を補強する。ここでのカムは全く枯れていない。

第2楽章は「感情のこもったアンダンテ」であるがフルート、クラリネットの歌、
呼吸感が素晴らしく、弦の心の震えがいじらしい。

第3楽章は低弦のゴリッとした音が逞しさ、それぞれのピースの立体感、
押し寄せる波のような動感など素晴らしい。
べたっと厚塗りで単純に隆起するのとは違う。
ホルンはゲシュトップも含めてしっかり鳴って迫力を補強。
最後の終結まで一途に進む。安定感も抜群で図太く描き切る。

録音はこの全集で最初期に当たるが既に完成されている。
適度で木質なホールトーンでオケ全体を捉えながらも
それぞれの楽器の明解さが失われていない。
同時期のストゥールゴールズ(シャンドス)盤と比べてもその点で一歩リード。
ともかく演奏・ホール・録音混然一体となって高みを目指す。
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(ヤルヴェンパーのアイノラ荘で生まれた最初の交響曲 Ainola HPより)

10:11  10:05  8:55   計 29:11
演奏  S   録音 96点

コメント

ととべい様
ご無沙汰しています。
CD、早く届くといいですね。
この演奏が気に入って頂ければ嬉しいです。
vs ラトル/BPO
ラトル/ベルリンフィルの意匠を凝らした演奏を聴いて
確かに面白いと感じた。
ベルリンの木管の巧さは流石としか言いようがない。
しかし、しかしである。
「行雲流水」「天衣無縫」のカム/ラハティ響の前では
「手練手管」に聴こえてしまう。
カムにはほとんど作為がないように見える。
時に懐中に持つ剣のようなものが光るだけなのだが
それが誠に恐ろしい。
ラトル聴きました
べらぼうに上手いのに、どうにもシベリウス感が伝わってこなくて、もどかしいやら苛立たしいやらで4番まで進まずに聴くのをやめてしまいました。

翻ってカム/ラハティso。
シベリウスの音楽を、「冷涼」だとか「透明」「峻厳」といった表現「だけ」で括ってしまったかつての著名評論家諸氏の呪縛から見事に解き放ってくれた演奏です。冷涼、透明、峻厳であるけれども優しさや温かさも併せ持つのがシベリウスの魅力だと思います。優しくて、時に厳しいのがカムのシベリウス。

さらに、交響曲なら特にこの3番や6番でシベリウスの「祈り」も多く聞こえてきます。3番1楽章の終結(アーメン)、3楽章中間のビオラから始まるコラール風の歩み、6番1楽章開始の祈り、3楽章の聖歌風の開始・・・
絵画でもそうだと思うのですが、祈りの姿が美しいのは、そこに共感があるから。
カムやヴォルメルの素晴らしさの一端は、オーケストラのメンバー含めてそんな祈りにも共感して演奏しているからに他ならないのだと思います。
H.U.様
レコーディングがあまり好きではなく
全く欲のないカムですが
シベリウス交響曲全集をラハティ響と
整った音響で録音してくれて本当に
良かったと思います。

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