クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

シベリウス 交響曲第4番 カム(2014)

2015.10.03 (Sat)
カム全集
カム/ラハティ交響楽団(2014、BIS)は大自然を感じさせる。
勿論、描写でなく心象風景なのだが。

この曲はシベリウスの深い精神的苦悩から生まれたとする経緯をひたすら
強調すると、とても深刻な演奏になる(極端なのはケーゲル盤)。
しかしカムはそうしたドラマに必要以上に肩入れすることない。
シベリウスの腫瘍はこの曲の作曲時点では快方に向かっていた。

一つのヒントは別にある。
1909年、作曲家は義兄弟であり画家のエーロ・ヤーネフェルトとカレリア地域の
コリKoli山地とピエリネンPielinen湖を訪れ強烈な印象を受けたという。
この演奏はその時見た手つかずの自然の深さと荒々しさを感じさせる。
単なる苦悩の曲ならば、シベリウスは旅に誘ってくれたこの画家に
この曲を献呈することはなかっただろう。
(↓義兄ヤーネフェルトが描いたコリ山からの眺め
  単なる風景描写でない心象が窺える Koli National Parkのサイトから)
jarnefelt_koli.jpg
第1楽章冒頭から吸い込まれる。ラハティの弦は谷から湧き上がる雲のよう。
そして射し込む朝日。決して力まず深々としている。
このコンビの音には包容力と優しさがある。
フレーズ感の間などが非常にゆったりしており緊張を溶かす安堵がある。

第2楽章は爽やかな風。金管の角を立てずチャーミングな木管を際立たせる。
彼の劇付随音楽のよう。

第3楽章冒頭の木管は夜の鳥の鳴き声。
漆黒の闇の中でさまざまな思いがぼんやりと浮かんで消える。
決して意表を突くような剛音を出さないこのコンビは夜の静寂(しじま)に溶け込む。

終楽章は朝の心の躍動。
この楽章で通常は目立つグロッケンシュピール抑え華を添える扱いとした
のはカムらしい。自然への憧憬、山々を歩み湖を見渡すことのできる感謝。
しかし荒々しい風も吹く。
終結にかけての名残惜しい心模様をカムは時間をかけてゆっくり奏する。
lake-pielinen.jpg

録音はラハティ・シベリウスホールでのセッション。
このホールで響く音は自然の音と融合している。
言うことない。

11:16  4:50  11:46  9:51   計 37:43
演奏  S    録音 96点

コメント

おはようございます。4番も買わせて頂きました。
今聞いておりますが、想像したより深い音がして一寸意外でしたが、総じて冷え冷えとした空気と自然が感じられ、こちらの演奏の方がしっくりきました。
サラステは意思的であれはあれで深刻になりすぎず良いのですが、こちらの方が好みです。
こうなると全部順番にそろえたくなってきました。来日公演行けなさそうなので残念ですが…
蛇足ですが、カムのタピオラや吟遊詩人、テンペスト等がはいったアルバムも購入しました。こちらも良いです。交響曲はそのうち全部かってしまいそうです…。
cinqさん
こんばんは。
当方のブログを参考にしていただき恐縮です。
カムの全集は先日、山の小屋に持っていき再度全曲を
聴きましたが、窓からの山・森・空・雲・雨・霧・紅葉
などと見事にマッチしていました。
ご紹介のカムの後期交響詩集も実に素敵なアルバムですね。
来日公演 11/27
オッコ・カム指揮フィンランド・ラハティ交響楽団
「生誕150年記念シベリウス交響曲サイクル」
11月27日(東京オペラシティ コンサートホール)
交響曲第3番
ヴァイオリン協奏曲
交響曲第4番
心が満たされた演奏会。
第3番はCDよりもアグレッシブで速いテンポ。
カムの予想外の情熱的な指揮に、合わせるのに
一番苦労していたヴィオラ陣が終了後
顔を見合わせていたのが印象的。
協奏曲独奏は、フィンランドの俊英イーヴォネン。
彼の明るいキャラを映すような能弁さ。
ここでも伴奏が光った。
第4番は白眉。
なんという美しさ!この曲を晦渋から解放し
自然の中に置いてくれるのは彼らしかいない
と確信した。
ホールを後にした時の夜の冷気が実に心地よかった。

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