クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

シベリウス 交響曲第5番 カム(2014)

2015.09.26 (Sat)
カム全集
カム/ラハティ交響楽団(2014、BIS)でようやく巡り合えたのかもしれない。
初めて4番→5番→6番→7番が繋がった。
何回聴いたかか分からないこの曲で今更これ程心が動揺するとは予想外。
今まで見てきた景色は何だったのか?

従前は渋すぎて難解な第4番の反動として明るく分かりやすい第5番が来た、
とされていたのだが、この演奏は明らかに第4番の先にある第5番。

ベルグルンド/ヨーロッパ室内管の演奏も削ぎ落された大人の演奏で
意志の力で音を凝縮しているのに対し、カムは敢えて「強靭な意志」を
内奥に仕舞い込み自然の音の重なりだけにしてしまっている点で大きく違う。
音が弱いということはではない。しかしこれ見よがしの壮麗とは無縁。
そして、シベリウスが求めていたのはまさにこのような音だったのではないか。

第1楽章に一途に隆起する祝典的晴れやかさはない。
靄のかけらからのぞく陽の光。決して強くない。
それは一様に力を増すのでなくためらいがち。
断片が徐々に集合するも密着しない。湧いては消える薄雲を見ているよう。
白樺の林の中を歩んでいたのがいつしか高みに飛翔する。
しかし、威圧するような単純な輝かしさはない。儚さを伴う。

楽章前半のテンポが遅いため15分かけた音楽。
しかし、同じく15分かけたバーンスタイン/VPOの遅さとはまるで違う。
こちらはどこまでも淡く内省的。

第2楽章がこれほど錯綜して聴こえたことはない。
極めて分かりやすいメロディで明るく歩む音楽、のはず。
しかしなぜこれほどまでに影が射し込むのだ?
テンポは自然に揺れ、心にはとても優しいのだが・・・。

第3楽章は弦の明解な刻みの上に、ホルンの勇壮なテーマが乗る
・・・と思いきやこのホルンはそうならない。物足りないばかりに普通。
脱力しているのではない。明快ではあるが、音に何か含んでいる。
そして3:50からの「ミステリオーソ」では弱音器つきの弦が一斉に息を潜める。
聴き手は一気に集中を強いられる。
そこで場面が急転換して終結に引きづり込まれる。
重層的な木霊の末、
たっぷり休止をとった6つの和音で心は宙へ放り出される。

世界のラトル/ベルリンフィルのシベリウス全曲録音が出ることになったが
このローカルなカム/ラハティ響には太刀打ちできないだろう。

これを聴いてヴァンスカ/ラハティ響で初稿を聴いたときの衝撃を思い出した。
カムも実演ではやっている。それを猛烈に聴きたくなった。

録音はラハティのシベリウスホールでのセッション。
どこか素朴なこのオケの音を見事に捉えている。
空間の広さ、楽器のフォーカス、繊細なピアニッシモから
全奏やパルス音まで無理なく再現される。
最高の演奏にして最高の音響。   

15:08  9:29  9:48   計 34:25
演奏  S   録音 96点

コメント

やっと巡り会えました。
いつも参考にさせて頂いています。最近シベリウス集中的に聞き始めていたのですが5番で気に入る演奏がなくて探しておりました。ベルグルンド&ヘルシンキ、バルビのライブ、ヴァンスカ旧版とピンと来なかったので、押し出すタイプじゃない演奏なら合うかと思って参考にカムの新盤かったらドンピシャでした。なんと爽やかで心がざわつく演奏なんでしょう。おかげで良い演奏に巡り会えました。ありがとうございます。
cinqさま
嬉しいコメントありがとうございます。
シベリウスは好きでいろいろ聴いてきたつもりですが
今一番心に届く全集は、このカム盤です。
初期の交響曲はより効果を狙った演奏がありますが
地味な部分も滋味と思える演奏はなかなかありません。
カムの歩みの集大成という気がします。
ありがとうございます。
カムは5番しか買っていない(当方BISから直接ハイレゾをDL購入がメインなので)為、4番も買ってみようと思っております。
4番は記事を参考にさせて頂きサラステを購入したのですが、前のめり気味で一寸疲れてしまう+カムの5番を聞いてカムの方がより自分に合っていると思って…
尚他の番号は今までヤルヴィの旧版をメインで聞いています。

今後も楽しみに参考にさせて頂きます。
cinqさま
カム/ラハティ響の7番までたどりつかれることを
祈念いたします。

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