クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ムソルグスキー 展覧会の絵 リヒテル(58)

2015.04.15 (Wed)
展覧会の絵リヒテル
リヒテル(58、Philips)は二つの意味で歴史的演奏。

一つは当時「幻の」リヒテルが西側に登場した時の録音ということ。
1958年2月25日にブルガリアの首都ソフィアで行われた演奏会の記録で
センセーショナルな話題となった。東西冷戦下の時代は、東の演奏家は
ヴェールに包まれ、よく「幻」と言われたものだ。

もう一つは、ムソルグスキーの自筆譜に準拠した演奏だということ。
これを境に以降のピアノ演奏はほぼ原典版によることになった。
それまではR=コルサコフ版やホロヴィッツの独自版が大勢。
この曲は1874年に作曲されたが、実際出版されたのはR=コルサコフの校訂に
よるものだった(1886年)。ラヴェルが管弦楽曲に編曲して(1922年)、
この曲が人気化し1931年にようやく自筆譜に沿ったピアノの原典版が出版された。
しかしながら実際の演奏の世界ではすぐには広まらず
このリヒテルの演奏を機に一斉に変わった。

なぜ、そうなったのか。

それはリヒテルの鬼気迫る演奏が凄いから。
ラヴェル編曲の管弦楽曲とあまりに雰囲気が違ったのだ。
ホロヴィッツなどはピアノでオケの響きにどこまで肉薄できるかという方向だが、
リヒテルは「展覧会の絵」は極めて異形の独自のピアノ曲なんだということを
聴き手につきつけた。

演奏は飾り気のない冒頭から異様な雰囲気。
その後も速めで打鍵が強く、この曲は決して生易しくも華やかでもないことを示す。
ミスタッチはあちこちで発生。ここまで多い演奏も珍しい。
しかし、全くそんなことにお構いなく突き進むところが恐ろしい。
美感も何もあったものでない。

しかし、改めて感じる。この曲はとんでもない。
ムソルグスキーは突然変異の天才だ、ということに気づかせてくれる。
これに比べればラヴェル版は曲の本質をとらえていない、と感じる。

録音はモノラル収録のライブ。それほど近接していないので音割れはないが、
相当古めかしい。ノイズもあり今の時代に聴くとしたら一定の覚悟は必要。
演奏の価値は先述の通りだが、個人的には今のいい録音で聴きたい。

31:24
演奏   歴     録音 70点

コメント


管理者のみに表示

トラックバック