クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ムソルグスキー 展覧会の絵 ウゴルスキ(91)

2015.04.14 (Tue)
展覧会の絵ウゴルスキ
ウゴルスキ(91、DG)は私にとっての金字塔。
以前は管弦楽版も含めてこの曲の良さがピンと来ていなかった。
ハルトマンの絵を見て受けた印象を綴った曲、そしてラヴェルの編曲は
それを管弦楽技法を駆使して豪華絵物巻に仕立てた、という程度。
しかし、この演奏によりぽっかり開いた深淵の世界を知った。

ひょっとしてこのピアニストは病んでいるのではないか、そう思った。
『ウゴルスキ、1942年生まれ。ユダヤ系。子供の頃から歌がうまく、
レニングラードの児童音楽学校ピアノ科、ついでレニングラード音楽院で学ぶ。
15歳の時カナダのピアニスト、グレン・グールドのモスクワ公演に
大きな影響を受けた。20世紀の現代音楽を好んで弾いたため破壊活動分子
としてピアニストとしての活動を禁止され、1968年から14年間“文化労働者”
として少年合唱団の伴奏をするなど不遇の時代を過ごすが、
評判に屈した当局によりレニングラード音楽院教授に据えられた。
また、反シオニズム運動の標的にもされ’90年旧東ドイツに亡命。
その後、難民収容所にいるところを作家ディーチェに見出され、
’91年ドイツ・グラモフォンと契約、’92年50歳にしてフランクフルトで
センセーショナルなデビュー・コンサートを開く』とネットでは紹介されている。
この録音は西側に出はじめた時の演奏なのだ。

録音はハンブルグ・フリードリッヒ・エベルト・ハレでのセッション。
癖のないこじんまり美しい響き。内面を覗き込むようなこの演奏には
スケールの大きなホールよりはこちらの方が良い。

「プロムナード」はまずすくっと立った音でワンフレーズ、
続く次のフレーズが音とテンポを弱めて受ける。
これを聴いただけで単に歩き回っているのではない精神の葛藤を感じさせる。
「小人」は沈み込むような気配。
「第二のプロムナード」で落ち着きを取り戻すが左手の低音が暗示的に響く。
「古城」は弱音を駆使しながら沈思を続ける。読経聴いているようだ。
「ビドロ」は決然としているが、それでも乱暴にならない。
「第三のプロムナード」は前曲の激しさ優しく受容。
その後もしっかり弾いているのだけど何か虚無感が付きまとう音が続く。
「カタコンブ」などは宙にいるような浮遊感。
「バーバヤガ」では意識が明滅する不思議な表情。
一小節ごとに入念なため一筋縄でない。
そして挙句の果てはいつの間にやらスーッと「キエフの大門」を弱音で始めている。
リヒテルやホロヴィッツが豪快に叩きつけた音楽とは全く別の世界。
はっきり言って曲が違うとまで言える。ポツリポツリ独白するかのよう。
終結では救済を求めてようやく光を見つけたかもしれない。

36:17
演奏    S    録音  93点

コメント

本日中古で購入したCDが届きました。まったく別の曲に聞こえますね。チェリビダッケが目指す大伽藍のような巨大な構築物としての大門ではなく、心の中で見つけた小さな光が自分にとっての確信に発展するような響きですね。素晴らしい演奏の紹介ありがとうございました。
北の火薬庫さま
嬉しいメールありがとうございます。
素晴らしい文章にも感服でございます。
 「以前は管弦楽版も含めてこの曲の良さがピンと来ていなかった。」との記載に共鳴します。私もその通りでした。ある意味、知ったかぶりしてました。
 正直、過去の先人の評価の意味が、分からなくて、分からなくて、ラヴェル以外の編曲のオーマンディのボックスも手に入れました。原点版のリヒテルのライブも手に入れました。でも発見できませんでした。
 この盤の重要度を指摘されたことについて、全く脱帽でございます。
 

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