クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

モーツァルト 交響曲第29番 ベーム(68)

2014.12.28 (Sun)
ベーム
ベーム/ベルリンフィル(68、DG)は遅固さがいい塩梅。
優美なこの曲が無骨な外形。
場違いな男気、でも恥じらいながら優しい音楽を作ろうとする。

録音はイエスキリスト教会でのセッション。
このころのDGの落ち着いた響きながら芯のある音がする。
当時の黒地のジャケットのLPに馴染んだ者にとっては懐かしくも安心感ある音。

第1楽章は一歩一歩かみしめるよう…いや照れながら?始まる。
テンポは非常に遅い。

旧モーツァルト全集ではこの楽章はC=4/4拍子だったが
新全集ではアラブレーヴェ=2/2拍子なので、
旧全集を使用している昔の演奏では遅くなるというのを読んだことはある。
クレンペラー(65)が遅いのはもとより、確かにフリッチャイ(61)もスウィトナー(60)も
本来テンポ感の遅い指揮者ではないが意外なほど(今からみると)遅い。
モーツァルトの新全集は1955年に着手されているが
交響曲でその成果が発表されたのは1970年ころではないか。
となると60年代の演奏は今の標準より1.5倍くらい遅いテンポ感になるかもしれない。
しかし、カラヤン(65)は旧全集時代だが、速いという例もある。
そう、至極当然の話ではあるが、拍子だけでテンポが決まるわけではないのだ。
大まかにいってモーツァルトの交響曲の演奏史でいえば、
オケは小編成になりテンポは速くなる一方反復は律義に実行される傾向が
あり全体の演奏時間は長くなってきた。そうした流れはある。
しかし、一番重要なのは指揮者の指向だ。

さてこの演奏、遅いテンポが全く気にならない。
表面は決して流麗ではないが、愛情が溢れているのがよくわかる。
弦の刻みなどたどたどしいくらいだが時に見せる可愛い合いの手の
ギャップが堪らない。クレンペラー以上に遅いのにここには距離感がない。

第2楽章も全く遅い。コッホの素敵なオーボエを伴い弦がそよぐ。
それにしてものどかを通り越して茫洋とした宙に浮かぶような
不思議な感覚である。ブルックナーの第8番のアダージョに通じる世界。

第3楽章もベルリンの重い弦がズリズリ。

終楽章は速い。ここまでが遅かったから余計そう感じる。
活き活きしている。開放感ある喜びに満ちた音楽。
ここまでの遅さ、鈍重さはこのための演出だったのか。
最後の最後にはなんとベームの唸り声が収録されている。
思いの深さが露出した瞬間だ。

9:05  8:50  3:49  4:57   計 26:41
演奏  愛    録音 87点

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