クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

メンデルスゾーン 交響曲第3番(ロンドン稿) シャイー(09)

2014.08.28 (Thu)
メンデルシャイー2009
シャイー/ゲヴァントハウス管弦楽団(09、DECCA)は誠に衝撃的。
衝撃要素は二つ。
まず、なんといっても新発見版の使用。
次に演奏が逞しくこの曲の本質の変容を迫ること。
この演奏を何度か聴くうちにすっかりはまってしまった。
「金持ちボンボンがスコットランド旅行の印象を綴る絵画的交響曲」
という従来のイメージはぶっ飛ぶ。

メンデルスゾーンはモーツァルトに並ぶ音楽界の天才と言われてきているが、
このユダヤ人作曲家の真剣な研究が始まったのは東西冷戦が終わってから。
ここ20年くらいで確認された曲が250曲から750曲に膨らんだばかりか
既存の曲にも多様な版があることが分かってきた。

この曲に関しては
①1942年3月ライプチッヒ初演稿
②1942年6月ロンドン初演稿=本CD演奏版
③1943年3月出版稿=現行の演奏版
がある。①の初演は大成功だったがロンドン初演を行うにあたって
改訂しこれも大成功。だが作曲者自身は更に楽曲のつながりと
洗練を求め97小節の削除などを敢行し現行の③に改訂し出版した。
(②を大英図書館で発見したのは日本の音楽学者、星野宏美氏)

したがって、交響曲第4番の場合と違い作曲者自身の最終稿が
現行版なので従前の演奏の正当性については全く問題ない。

ただ作曲者が初演①を実際に聴いて物足りないと思って一度は
改訂した②を聴くことでこの曲の狙いを垣間見ることができる。
この生誕200年の演奏会の意義は大きく、この後のファイや
ブリュッヘンの演奏に見るようにこの曲の捉え方がまるで
変わってしまうのである。
「スコットランド」は完全にロマン派の心象の中にいる。

録音は本拠地でのメンデルスゾーン生誕200年記念演奏会のライブ。
このホールの豊かな残響を聴衆がある程度吸収している。
本物のライブ録音でマス重視傾向だが混濁はなく、
くすんだ音色が曲に合致。

第1楽章冒頭ほの暗い情念が鄙びた音に宿る。抜群の雰囲気。
主題の提示もくすんだ音色から勇壮な盛り上がりまで変化に富む。
シャイーは流麗なだけで終わらせない意志。
提示部を反復して展開部へ入るが、ここまでは版の違いは
感じさせないが展開部でのクライマックスでブラスパートが
追加強奏されるのでまず軽いジョブ。
その後も逞しい音楽が続く。
ライプチッヒのオケも燃えている。
そして最大の驚きは再現部からコーダに入り、ひたひたと
近づいてきた嵐が襲来する頂点で、
突如絶壁から突き落とされたようなブラスの下降音型の
強奏とティンパニの強打で打ちのめす場面(13:11~)。
更に立ち上がろうとするも打倒する。劇的で粗削り。
それが収まると平然と冒頭が回想されピチカートで閉じる。
かなりの衝撃だ。こんな無茶を作曲者は考えていたのだ。

第2楽章に入りスケルツォが速いテンポで奏されるが
金管・打楽器の打ち込みも激しく軟弱性が微塵もない。
オケの線は図太い。

第3楽章も癒しのアダージョではない。
いつ噴火するともしれないマグマの胎動を聴く。
悪夢に魘される様な重い行進。
少し聴いているのが苦しくなるぐらい。

終楽章はまさに戦い。
突撃1分もしないうちに現行版とは違うアクセントが
飛び込んでくる。ティンパニが叩きつける。
くどいまでの叩きつけ。
音楽の流れを重視するとグルグル回るような部分は
削除してもよかったかもしれない。
しかしその執拗な激情に作者の思いがこもっていたのだ。
最後の2分はクレンペラーが違和感を持った突然の変転だが、
この演奏はノーテンキに明るいわけでなく
雄渾に立ち上がる感動的な音楽にしている。

「スコットランド」を語る上で欠かせない盤となった。

14:35  4:11  8:34  9:02   計 36:22
演奏 衝S   録音 91点

コメント

このレビューきっかけでCD買ってみました
いや、最高ですねこれは
クレンペラーしか聞いたことなかったので、この荒々しい迫力には驚きました
愛聴盤になりそうです
ルーサーさん
コメントありがとうございます。
私のつたないメモがお役に立ったなら何よりです。
演奏家が気概を持って新たな局面を開こうとするのは
素晴らしいですね。

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