クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

吉松隆 交響曲第6番 飯森(2013)

2014.05.08 (Thu)
吉松第6番
飯森/いずみシンフォニエッタ大阪(2013、DENON)は「鳥と天使たち」の表題そのもの。
美しくキラキラ。ノスタルジックなムードもたっぷり。

作曲者が還暦を迎えて無邪気に童心に帰って書いた「音のおもちゃ箱」とのこと。
ライナーノートに記載はないが、これだけ聞くとこれはまさに
ニールセンが60歳のときに書いた交響曲第6番「シンプル」と同類のよう。
(第5番の交響曲で力作を書いてその後に脱力系の交響曲を書いたのも同じだ)
違うとすればニールセンの方が全てから解き放たれた自由な「童心」であるのに対し
こちらは「童心」に帰ったと思いこもうとしている。

そう、作曲者が自分で言うほど人生を俯瞰した印象はない。
確かに曲想は(作曲者が記している第2楽章のみならず)全編が
他の作曲家の引用にとどまらず、過去の自作のパッチワークのような印象。
しかし、だからと言って人生を振り返った風情があるわけではない。
クールにいえば安易ではあるが、老境の枯淡ではない。
むしろ基本的性格は「第4番」の系譜だが、
それならば「第4番」の方が静謐を含む抒情で綺麗。

吉松はこの後どうなってしまうのか。
もはや全て出し切ってしまい昔の遺産で生きながらえるのだろうか。
そうは思いたくない。60歳なんて今は若いのだ。一休みしただけだ。
頑張ってほしい。
あのパワフルで活力の漲る名作「第5番」以上の「第7番」を書いてほしい。
そう期待を込めざるを得ない。

なお、演奏は技術も含めて最上のクオリティ。

録音は大阪いずみホールでのライブ録音。
しかし、曲が終わって拍手が起こるまでライブとは気がつかなかった。
いずみホールは聴衆が入っていても雰囲気のあるいい響きのホール。
また録音もヌケの良い透明感と分離感がある。
オケが中編成ということもあり明瞭で気持ちのいい音。

第1楽章が始まった瞬間吉松の音たちが舞い始める。新しい音はない。
吉松の従来の世界が広がる。音たちの浮遊。それはそれでおとぎの世界。

第2楽章は作曲者はパウル・クレーの「忘れっぽい天使」(↓)の副題をつける。
忘れっぽい天使
ただ私は作曲者の解説とは別に
夜の森の鵺(ヌエ=トラツグミ)の鳴き声のような密やかさを感じる。
尺八奏法のような和のテイストの木管。
薄れる意識の中でシベリウス、ショスタコーヴィッチ、チャイコフスキーの順で
他の作曲家の第6番の素材、そして自作旧作が浮き上がる。

終楽章はリズムが戻るがここでも過去の継ぎはぎが続く。
弦の持続音の上を転がる木管は吉松のトレードマーク。
そこにドビュッシー牧神、ベートーベンの第6番、自作などなどが折り重なり終結。
「ブラボー」という声も聞えるが戸惑う感じの聴衆の拍手に共感できる。

次は爆発でもリリシズムでもいいからシベリウスの「第7番」を目指してほしい。
私は「第5番」で活力をもらったのだ。

13:35  8:15  7:59   計 29:49
演奏  A   録音 94点

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