クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブリテン ヴァイオリン協奏曲 モルドコヴィッチ(2000)

2013.03.17 (Sun)
ブリテンvnCANDOS
モルドコヴィッチ/ヒコックス/BBC交響楽団(2000、Chandos)は
高い次元でのスタンダード。私がこの曲に開眼したのはこの演奏。

この曲はブリテンの20歳代の若書き。恐るべき天才ぶりが発露してる。
20世紀のヴァイオリン協奏曲の最高峰ではないか、とすら私は思っている。
多くのヴァイオリン協奏曲が第1楽章は素晴らしいが、終楽章に至ると
やや息切れするような曲が多い。
しかし、この曲は終楽章に大きな感動をもたらす。
1939年完成のこの曲は第2次世界大戦の不穏なムードと安らぎの
希求がミックス。激しい葛藤と深い深い抒情の交錯。
ヴァイオリンは時にオケと対峙しながらも心の叫びを伝える。

一方、ヴァイオリン協奏曲ながらこの曲は特にオケが重要で
ヒコックスのクールで瞬発力のある指揮が素晴らしい。
モルドコヴィッチは細身なれど意志の強さを奥に秘めた演奏が
またマッチしている。
多分これからどんどんいろんな奏者により演奏されることになると思う。

録音は、ブラックヒースホールでブルーの響き持ったカズンズ兄弟の音響。
非常にバランスが良い。

第1楽章のティンパニの弱音からヴァイオリンへ、立ち上る雰囲気は最高。
ヴァイオリンソロのカンティレーナは甘く切なさを湛える。
その後もオケとやりあいながらも美しく主張を続けるヴァイオリンがけなげ。
健康的でなく青白い炎を灯す。
またこの曲ではティンパニも重要で、この演奏の硬質な音がいい。

第2楽章の弾むリズムと後半のカデンツァが聴きもの。
前半のキレのいいソロとオケの掛け合いが格好いい(ティンパニ!)。
必死で超絶パッセージをヴァイオリンが繰り出し、オケが迎え撃つ。
超高音で空高く達した後、ひらひらと墜落していく場面(4分前半)
効果は天才的。
後半3分のカデンツァはバッハのように厳しく清らか。

終楽章にはアッタカで入る。
オケの澄み渡るパッサカリアがヴァイオリンソロを癒す。
前楽章までの緊張から解放され、昇華された世界に入ったかのよう。
トロンボーンはここでもシベリウスの交響曲7番のような啓示。
分厚いオケが頂点を作る。なんという巨大な音楽。
ヴァイオリン協奏曲の枠をはみ出す。
10分過ぎから最後の5分は音楽が一層の高みへ昇る。
心が洗われ粗雑物が一切ない宇宙に突入する。
青白かった魂が癒されてもう一度赤い情念を持とうとする。
しかしそれは叶わぬ夢のまま吸い込まれる。

なんと感動的な曲なのだ。演奏もそれを完璧に再現している。

9:36  9:35  15:08   計 34:19
演奏  S  録音 94点

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