クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

マーラー 交響曲第10番 ラトル(99)

2013.01.01 (Tue)
ラトル10BPO
ラトル/ベルリンフィル(99、EMI)は表現意欲に溢れる。
相当読み込んでいる。その真摯さは認めざるを得ない。
問題は才気がそのまま表出している点だ。音楽は難しい。
旧録音よりはるかに彫の深い演奏で発見もあるが、
私にはそれがやや煩わしいと感じた。
最初にこの曲を聴くには千変万化の仕掛けがあるので面白く聴けるだろう。
この全曲版になじみの薄いベルリンの聴衆を意識したのかも。

録音は、ベルリンのフィルハーモニーでの2日間のライブから。
この時期の放送用音源的な自然な録音。これは良くも悪くも、という意味で。
ただ、この意欲的な演奏の録音としてはこれくらいで良かったかもしれない。

第1楽章の冒頭のヴィオラを聴いただけで20年前の旧録音と入念さが
違うのが分かる。遅いテンポで各パートに指示が行き渡る。
表情は振幅を繰り返し劇性が増している。
単純な遅い速いでなく手の入れ方が格段に多くなっている。
これはこの版を深く研究し何度も演奏してきたラトルの成果なのだろう。

第2楽章になってもラトルは手を抜かない。
ベルリンの卓越した合奏力を利用し積極果敢に仕掛ける。
旧盤のおっとりした演奏と気迫、キレが違う。
チンドンしないクック版を用いながらここまで多彩な表情を出した演奏はない。

第3楽章も全く同様なのだが、徐々に揺さぶりが激しすぎるのではないか
という気が擡げる。

第4楽章もラトルの唸りの中でさらに表現は多彩さを増す。
過去の作品の断片が飛び込んでくる様子が鮮烈に呈示される。
最後の大太鼓はおとなしいなり方。
旧盤の方がパンチがあったが、これは変化だ。

終楽章冒頭の太鼓は省略されているが、アタッカで入るので聴感上は
どちらでもよい。
抑制された音楽で進行する。音を抑え表情を抑える。
その演出は旧盤以上に意識的。
各主題の提示が終わるとまたもや意欲的な表現が続出。
終結に向かう10分は本当に真剣で感動的。

この演奏を聴くと、版の問題でいえば、クック版で十分であり、
付加的な音を配したほかの版は余計に感じる。

25:10  11:24  3:55  12:06  24:47   計 77:22
演奏  A   録音 90点

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