クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

マーラー 交響曲第5番 シップウェイ(94)

2012.10.04 (Thu)
シップウエイ5 (←保有盤    最近のSACD盤→)シップウエイ5 (2)
シップウェイ/ロイヤルフィル(96、RPO)はこの曲で一番好きな盤。
潔さと清らかさ、そして華がある。

この盤は近所のドラックストアで315円で売られていたのを見たことがあるが、
価格と内容がこれほどかけ離れているCDも少ない。
私は「ロイヤルフィルハーモニックコレクション」シリーズ(実売1000円)を
昔、買い漁ったことがある。まったく無名演奏なのに録音が極めてよく、
その中に滅法優秀で個性的な盤が隠れていたから。
もしこの盤を315円で入手されて後悔するような方がいたら
私が弁償して差し上げたい。

録音はワトフォード・コロセウムでこのシリーズ特有のクールで
透明感を伴った名録音。情報量が多くDレンジも広くヌケもよい。

第1楽章のトランペットの音を聴いただけで引き込まれる。空気の音がよい。
一撃は限りなく突き抜けるが、抒情的な場面に来るとヒンヤリ泣く。
この対比を聴くとこの指揮者のノーブルな感性がわかる。

第2楽章も上品でドロドロしない、のに落差が大きい。
感情移入しすぎると凭れる。さらりとやりすぎるとサーカス。
この演奏は不思議なことに情感と音響を両立している。

第3楽章は何といってもロイヤルフィルの名手ジェフリー・ブライアントの
スカッとするホルン。天を駆ける。やりすぎなほどのこの威勢は最高だ。
この素晴らしいホールで音を割らんばかりの最強音で朗々と鳴るホルンを
聴くだけで爽快になる。打楽器群も痛快。

第4楽章アダージョがまた絶品。
キーンと冷えた空気の中、抑えた弦がたおやかに進行。
この慎ましい情感の表出が英国の良さなのだろうが、これは北欧・日本にも
通じる感性だと思う。音は夢見るように儚く深淵の中に消える。
ここではロイヤルフィルは金管ばかりでなく弦も素晴らしい。

終楽章は音を短く軽々始まる。流麗な弦が流れを作り、
そして金管と打楽器が乗って気持のよいフィナーレ。
最後は例の筆頭ホルンやその他金管が豪壮華麗に結ぶ。

暴論かもしれないが、マーラーの5・6・7番は
私は意味を求めすぎてはいけないのではないか、と思っている。
これらの曲はある種の支離滅裂さが内包されており、
意味を追求しすぎると通常の感性では辻褄が合わなくなると思うからだ。
だから絶対音楽的に楽しむ必要があり、そうした意味でこの演奏は最高なのだ。

13:17  15:32  17:43  12:37  14:35   計 73:44
演奏  S   録音 94点

コメント

また失礼します。
このロイヤルフィルのシリーズ懐かしい。

先日、オラモ/バーミンガムのシベリウスの2番について、コメントを書きましたが、実はあのころ私は英国ノッティンガムに住んでいました。今はどうか知りませんが、そのころロイヤルフィルがノッティンガムのロイヤルコンサートホール準本拠地にして定期演奏会をやっており、それをよく聞きに行ったのです。
演奏会が終わると時々楽団員がロビーでこのCDを売っていました。当時でもバジェットプライスでしたが、いまはHMVなどで、30枚組3000円くらいで売っています。
一枚100円(!)です。
このシリーズはどれも演奏、録音とも優秀なんですがね、なんか複雑な心境です。

このうちの何枚かはもっていますが、このマーラーの5番は持っていません。今度見かけたら購入しようかと思っています。

では
とどべい様
コメントありがとうございます。
私はロイヤルフィルを生で聴いたことがありませんが
どのようなオケなのでしょうか。
財政問題などあったようで、映画音楽なども
積極的に手掛けていますね。
私にとってはブラス群が強力という印象を
持っています。
このマーラーでもそうでした。
管理人殿
私がよく聞いたのは1990年代後半ですので、随分前の話になりますが、、、
なんていうか、ロイヤルフィルはニュートラルなオケ、という印象でした。
どの楽器もそこそこうまく、バランスが取れていました。
金管もうまかったですが、特に強力という感じはしませんでした。
演奏家で印象的だったのが、クラリネットトップのおばさん、(まだいるのかな?たしかプルーデンス ワッタッカーだったかな)。
彼女はビブラートをかけるのです。私はその昔学生オケでクラリネットを吹いていましたが、どうもビブラート付のクラリネットというのは苦手です。
演奏会に行くと「あっ、また今日もあのおばさん」という感じでした。
ノッチンガムにはLPOやLSOはきませんでしたが、たまにフィルハーモニアやバーミンガム市響が来ました。
フィルハーモニアはとても音に色彩感がありよかったです。
こんなところでしょうか。
では
ととべい様
ありがとうございます。
昔ロンドンに出張に行った際、当時の日本からみると
毎日ビッグネームのコンサートが開催されていたのを
思い出します。チケット入手も往復はがきで
抽選ということもなくて、気軽に手に入る現地の人が
羨ましかったです。当地は音楽の大市場でしたね。

素晴らしいですね!
S評価なのにHMVでは廃盤とのことで、Amazonで安めに購入できました。聴いてびっくり、まさに快感ですね。インバル=都響も素晴らしいCDですが、シップウェイ盤は同等あるいはその上をいきます。若き日に夢中になったバーンスタイン盤よりも好きです。「絶対音楽的に…」とのご指摘はまったく同感です。若き日、バーンスタインの新盤で6番をわくわくしながら聴いたとき「なんてウルサイ音楽だろう」とがっかりしたのを思い出します。
としちゃん様
シップウェイ盤聴かれましたか!
メジャー録音でないこのような盤が
素晴らしい演奏&録音をしてくれているのを
「発見」した時は嬉しくなりました。
殆ど採り上げられない盤だと思いますが
共感していただき、これまた嬉しいです。

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