クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

マーラー 交響曲第4番 ヘレヴェッヘ(2010)

2012.08.15 (Wed)
ヘレヴェッヘ4
ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ宮管弦楽団(10、Phi)は知的洗練の極み。
この演奏はただメルヘンチックに奏されているわけでない。

指揮者が語る、『マーラーの曲は私たちが実際に眠りに落ちている時の、
ごくとりとめのない夢想の数々をそのまま反映したようなもの。
現実社会の残酷さとおよそ現実にはあり得ないほどの
優しい慰めが分かちがたくないまぜになっている』という、まさにその感覚。
ベルリオーズの幻想交響曲に通じる錯綜した心象を持ちあわせている。

古楽器使用と書いてあるが、バロック時代のものでなく
弦はガット弦、金管・木管もマーラー時代のものを用いるということだ。
確かにこれらでは実演では音量が今のものと比べて劣るということも
あるのだろうが、録音芸術ではそのことによる不満はない。

録音はフランス東部ドーフィネ地方グルノーブルのMC2劇場。
広い空間に明瞭ながら柔らかい音がこの曲にマッチ。

第1楽章は速めのテンポで、室内楽風の透明感ある演奏。
しかし、ムード的演奏でなくそれぞれの楽器はしっかり主張し生きがいい。
ワンフレーズワンフレーズがしっかりコントロールされ
しかしそれがわざとらしくない範囲に収まるのがヘレヴェッヘだ。

第2楽章も雄弁なホルンをはじめとした各楽器がきらきら飛び交う。
悪戯っぽい表情。かと思うと沈み込み、次の瞬間には日の射す草原、
次には軒下でそよ風に吹かれる。その変転が非常に自然なのには驚かせられる。
ソロパートの技量には舌を巻く。

第3楽章は前楽章とは対比的に弦の流れを中心においている。
全ての音が抑制されヴェールをかぶったよう。
何かが起こっても弦の通奏持続音が、ここは夢の世界、ということを示す。
思い切りのよい清々しさではなく、まどろんで意識が混濁している。

終楽章は透明感あるジョシュアのソプラノが、広い空間に響く。
ここにもはや意識の世界を超えた天上の世界。
風のように過ぎていく。やはり幻なのだろうか。

この演奏は単なる屈託のない演奏ではない。
ヘレヴェッヘが完璧に演出しているのだが、
ノーブルさが全てを包んでしまっているところが凄い。

15:31  8:55  20:05  8:41   計 53:12
演奏  S   録音 95点

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