クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブルックナー 交響曲第9番(キャラガン補筆完成版) タルミ(85) 

2012.01.28 (Sat)
タルミブル9
タルミ/オスロフィル(85、CHANDOS)は補筆完成された第4楽章を持つ初のCDだった。
2枚組みで最初の一枚は完成された第3楽章までで、これは通常の9番の演奏。
もう一枚は、キャラガンによる補筆完成された第4楽章(21:58)と
オリジナルスケッチの断片を繋いだもの(15:53)。ある意味親切な構成。
企画優先のCDなのであろうが、通常の「9番」の部分も悪くない。
二枚目はどうしても違和感がないわけではないが、補筆とスケッチを対比できる
唯一の盤であり価値がある。

録音はオスロフィルハーモニックホールでのセッション。
充分な空間が確保された上で明晰さもある。

第1楽章は比較的速いテンポの中息遣いを聴かせながら進行。緩急はある。
神々しいと言うより人間的。もう一歩密度が欲しい。
オケの安定感ももう一歩なのだが残響に救われている。
第2楽章も細かなところで独自の表情を見せる。ティンパニの乾いた音が印象的。
第3楽章アダージョはいい。響きの多いホールで儚い音楽が奏でられる。
美しい。無理で強引なところがないが、老成した感じではなく表情が初々しい。
タルミが意識したのかどうかわからないが、
これは第3楽章であって終楽章がまだあるかもしれないという明るさを持っている。

補筆完成された第4楽章。
補筆完成版の時系列的録音は以下のようになる。

キャラガン版[1981-83]
  タルミ指揮(1985年録音)
サマーレ/マッツーカ版[1987]
   インバル指揮(1986年録音)
   ロジェストヴェンスキー指揮(1988年録音)
サマーレ/マッツーカ/フィリップス/コールス版[1992]
   アイヒホルン指揮(1993年録音)
サマーレ/マッツーカ/フィリップス/コールス改訂版[1996]
   ヴィルトナー指揮(1998年録音)
キャラガン改訂版[2002-03]
   クライン指揮(2003年録音)
サマーレ、フィリップス、マッツーカ&コールス校訂(1983-2007年)
   ボッシュ指揮(2007年録音)

全部を聴いたわけではないがマーラーの交響曲第10番とは別に論じなければならない。

キャラガン版は残されたスケッチによる主題を継ぎ合わせ執拗に繰り返す。
厚みにかけるので最初はうるさいとも思った。
しかし、一度聴いただけでは駄目だと思い再度聴く。
徐々に慣れていく。
音楽の変転の激しさはスケッチを繋いだだけのような部分が多いから。
また、初期の交響曲とも印象が似ている。
終結の壮大さは今までのいろんな交響曲をごちゃ混ぜにした感じ。

しかし私はこの後に続くトラック②のつぎはぎ断片集に惹かれた。
うそっぽい感じがない。
断片と断片の間の無音部分はあたかも「ブルックナー休止」。
最後は盛り上がろうとするところでいきなり切れ、終わる。
突然、虚空の宙に放り出されたような・・・。
これはこれで意表をついた劇的な効果を持つともいえる。

この盤での最大の収穫はこのオリジナルスケッチ集をあたかもひとつの
楽章のように続けて聴いて、つかの間の未知のブルックナー体験ができた
ことではないだろうか。
皮肉なことだが・・・。

23:38  10:53  25:18   計 59:49
演奏  A   録音 90点

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