クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

マーラー 交響曲第10番(マゼッティ版) スラットキン(94)

2011.07.16 (Sat)
スラトキンマゼッティ10
スラットキン/セントルイス交響楽団(94、RCA)はマゼッティ版による初録音。
解説によると、マゼッティはクック、フィーラー、カーペンターのそれぞれの版を検討し
前二者は薄すぎ、後者は濃密過ぎると感じ、補筆完成版を目指したとある。
果たしてその成果は?

録音はセント・ルイスのパウエルシンフォニーホールの3日間のライブ録音から編集。
表記がなければライブとわからない。暖色な音色で落ち着いた音響は好ましい。
なお、オーケストラはマーラー時代の歌劇場配置である
両翼(第1Vn→ヴィオラ→チェロ→第2Vn)配置。

第1楽章は打楽器の使用(音楽が盛り上がる部分で太鼓のロールが厚みを付加)などを
除けば基本的にクック版と大きく変わらないように思われる。
誠実な演奏で落ち着いたテンポ。
第2楽章はクック版より分厚い。色彩感も増している。打楽器も積極的。
そうした意味では9番のスケルツォとの近似性を感じるのがこの版だ。
しかし、10番は別の浄化された音楽だとするならばクック版の方がフィットする。
両翼配置の効果が出る。
第3楽章も色彩感が増しているが違和感はない。
第4楽章も前2楽章と同様の感触。欧米的な肉厚さを感じる。
とはいっても下品な音楽でなくむき出しの諧謔性を中和している。
最後は強烈な打撃。
終楽章は前楽章同様の強い打撃音で始まる。
これは消防隊長の葬列の行進で打たれた太鼓の響きというより、
もっとパルス感の強い強烈な音だ。
その後、クックはテューバソロで進行させるが、マゼッティはコントラバスにハープを重ねる。
そして2:20からは聞きどころのフルートソロ。
ここでもいくつかの楽器を重ねて進行していくので音の厚みを増す。
しかし、私はここはクック版をとりたい。
救いを求めて手を天に突き出すようなこの音楽はか細い心の震えを伴う。
となると極限まで音を切り詰めた方が淋しさを表出でき前後の音楽との対比を
明確にできると思う。その後も9番の終楽章に比べるとカロリーの高い内容だ。

この版の評価は10番をアルマとの心の葛藤を反映した私的な曲とみるのか、
9番を更に進めた彼岸の世界への彷徨とみるのかにより異なると感じた。
前者に立つならばこの温かく慰めもある情熱的でロマンティックな音楽が納得感を持つ。
後者ならば、やはりクックの研ぎ澄まされた世界が忘れられない。
最近の映画(アドロン監督)「君に捧げるアダージョ(陳腐な邦題!)」的には前者だ。
しかし、クック版で刷り込まれた耳には、余分なもののない清らかさが離れられない。

なお、演奏自体は、明るいオケの音色はあるものの真摯なもの。
単に新たなヴァージョンを楽譜通り紹介するといった域を超えた積極性がみられる。

24:31  11:40  3:51  11:07  24:08   計 75:17
演奏  A   録音 91点

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