指定期間 の記事一覧
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- 2019/04/19 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー プレヴィン(71) (Gershwin)
- 2019/04/18 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー アントルモン(67) (Gershwin)
- 2019/04/17 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー シュテッキヒト(76) (Gershwin)
- 2019/04/11 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー ペナリオ(56) (Gershwin)
- 2019/04/09 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー バーンスタイン(59) (Gershwin)
- 2019/04/08 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー ワイルド(59) (Gershwin)
- 2019/04/07 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー リスト(57) (Gershwin)
- 2019/04/05 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー イトゥルビ(37) (Gershwin)
- 2019/04/03 : ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー 作曲者自身(27) (Gershwin)
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2019.04.30 (Tue)
ガーシュウィン(p)/M・T・トーマス/コロンビア・ジャズ・バンド(76、SONY)は
ガーシュウィンを現代に甦らそうとした面白い企画。
1925年に作成されたガーシュウィン(1898~1937年)自身のピアノロールを
再生しそれに合わせてバンドが演奏するというもの。
事の経緯はややこしい。
「ラプソディー・イン・ブルー」には大きく下記の版がある。
①1924年オリジナル・ジャズ・バンド稿
②1924年2台ピアノ稿
③1926年オーケストラ稿
④1927年ピアノ・ソロ稿
⑤1938年オーケストラ稿
⑥1942年オーケストラ稿
ガーシュウィンはまず2台のピアノ用で草稿を起こし
グローフェがジャズバンド用に完成させたのが①
それを再度2台のピアノ用にガーシュウィンが完成させたのが②
更にグローフェがオケ用に完成させたのが③
更にまたガーシュウィンがソロ・ピアノ用にしたのが④
グローフェがピアノなしでも演奏可能にしたのが⑤
F・C・ワトソンが③をベースに改訂したのが⑥でこれが現在大半で使用される版。
本盤はガーシュウィンが記録した②(1925年ピアノロール)
(↓これを再生したものがyoutubeにある)
https://www.youtube.com/watch?v=8mON3dBJiYo
から純粋なソロパートのみをとりだし再生し
バンドを合わせて①の版にしたもの。
ガーシュウインの記録はピアノだけなので切り詰めて快速。
特に2:46~4:55のバンドはこのピアノに合わせるべく猛烈なスピードで
つけなければならなくなっている。この場面は笑える。
ガーシュウィンだってバンドと一緒にやっていたらこんな無茶なテンポは
採っていない。彼の1927年の録音を聴いてもそれは分かる。
だからこれには無理がある。全体の演奏時間もぶっちぎりの最短。
しかしガーシュウインのピアノが見事なタッチで再現されているのには驚く。
ピアノロールの再生でここまでできるものなのか。
スコアには描ききれない独特な間合いや装飾には
なるほど作曲者の頭の中で鳴っていたのはこれか、と思わせられる。
全体の演奏としては参考レベルだが製作者の驚くべき執念には頭が下がる。
録音はN.Y.30番街スタジオで収録。
ピアノロール再生用のピアノの音はしっかりしており驚くばかり。
ジャズバンドなので編成は小さく音場は大きくないが明快に録られている。
13:43
演奏 驚 録音 87点
2019.04.29 (Mon)
バーンスタイン(p&指揮)/ロス・アンジェルスフィル(82、DG)はロマンティック。
個人的には1959年盤に思い入れがあるが、
バーンスタイン(1918~90年)がたっぷりと謳うこの盤も捨てがたい。
旧盤の方がピアノにキレとかノリはあったような気がするが、
技巧を超えた情感がある。アンダンテの部分もこってりしていて彼らしい。
(↓1982年 実演時の写真)
バーンスタインとロスフィルの協演盤はこれとあとコープランド集くらいしか
知らないが客演は時折行っていたようだ。
本曲はピアノの弾き振りであり、精緻さを求めるような曲でもない。
オケはしっかりバーンスタインをサポートしている。
なお、旧盤同様数小節のカットがある
(NYフィルのアーカイブにはバーンスタイン版のカットが掲載されている)。
録音はサンフランシスコ・デイヴィスシンフォニーホールでのライブ。
ライブと謳っているが聴衆ノイズは全く聞こえないDG型。
同時期ハリウッド・ボウルで実演をしている記録はあるが
果たしてこちらはライブ?ピアノがかなりオンで入っている。
(なお、ジャケット写真はNYで今は無きW.T.Cが写っている)
17:07
演奏 A+ 録音 92点
2019.04.28 (Sun)
レヴァイン(p&指揮)/シカゴ交響楽団(90、DG)は鮮烈!才気煥発!!
キレのいい分離明快な録音と超絶技巧集団によって
元気だったころのレヴァイン(1943~)の仕掛けが明らかに。
やはり凄い才能だったと感じさせる一枚。
主導するレヴァインのピアノは緩急の変化が大きく実にダイナミック。
オケにイージーなところは無く整然とした凄味さえ見せ、
今まで聴けなかったような音が鳴る。
全体は猛烈に訓練された体操演技を見るよう。
インプロビゼーション的なジャジーな雰囲気は無い。
全てがビシッと決まりまくる。
テンポは一様でなく既存の演奏に比べればフレーズごとに切り替えが素早い。
時に猛烈なアッチェレランド(5:35~)をかけ追い込んでみたり
アンダンテはしっかり謳ってみたり。
そして終結のゴージャスな加速と盛り上がり。
才能豊かな人が呆気らかんと手練手管を尽くす様は
全く「ブルー」ではないとも感じるがこれはこれで面白かった。
録音はシカゴ、オーケストラホールでのセッション。
最弱音の大太鼓もしっかり捉える曖昧さのない音。
スリム系だが音場はしっかり確保。実にフレッシュな音だ。
16:03
演奏 S 録音 95点
2019.04.27 (Sat)
デイヒター(p)/ウィリアムズ/ボストンポップス管弦楽団(89、PHILIPS)は
べらぼうに巧く愉しい。
ピアノが突出するのでなく高い技量の全員でスウィングしている。
ディヒター(Misha Dichter, 1945~ )は米国ピアニストでジュリアード音楽院在学中の
1966年チャイコフスキー国際コンクールで準優勝。
この曲を得意にしているだけあって軽やかなタッチでスキップする。
ジョン・ウィリアムズ(John Towner Williams, 1932~ )は
米国の代表的な映画音楽作曲家であり
かつボストン・ポップスを10年間率いた指揮者。
こちらも多彩な音をキラキラまぶしてくる。
下品にならずソフトタッチなのところがこの指揮者のセンスだ。
そしてボストン・ポップス≒ボストン響がめちゃくちゃうまい。
冒頭のクラリネットの表情など楽しくてしょうがない。
金管のゴージャスで余裕綽々感もいい。
クラシック系というよりまさにポップス系の音楽づくりだが全く安っぽくない。
これを聴いているとやはりガーシュウィンはアメリカの音楽なのだと実感する。
録音はボストンシンフォニーホールでのセッション。
響きのいいホールで溶け合いを重視するフィリップスの録音陣が
量感も十分で上質な音響を作り出す。
17:01
演奏 S 録音 94点
2019.04.26 (Fri)
セルビー(p)/ヘイマン/スロヴァキア放送交響楽団(89、NAXOS)は素朴。
ピアノはタッチがガシガシでオケは非洗練で軽さがない。
セルビー(Kathryn Selby、1962~)はシドニー生まれのピアニストで
米国でも活動している。
指揮者ヘイマン(Richard Hayman, 1920~2014年)は
米国で映画音楽のアレンジャー、ハーモニカ奏者、ディレクターとしても活躍した。
フィードラー/ボストン・ポップスを30年に亘りサポートした。
このピアニストと指揮者で東欧オケという組み合わせはいささか珍妙だが
当時のナクソスの懐具合もあったのだろう。
演奏は冒頭記載の通り、ピアノが期待の軽さがなくただ無邪気に叩いているよう。
クラシカルのピアニストがジャズ的にやろうとしたのか?
ヘイマンの指揮は併録の「パリのアメリカ人」の方で面白さが出ているが、
こちらでは特徴がなく、オケのイマイチの不慣れさが目立つ。
この放送オケの技量は決して悪いことはないのだが
初対面のアメリカンに戸惑ってるっぽい感じも。
(このころの金管はまだ東欧の音がする)
録音はブラティスラバ、チェコスロヴァキア放送スタジオ1でのセッション。
音場はほどほどの広さでつまりもない。
地味な色調ではあるが明快に捉えられている。マイクが少しピアノに近いか?
16:54
演奏 A- 録音 90点
2019.04.25 (Thu)
ワイセンベルク(p)/小澤/ベルリンフィル(83、EMI)は一流感満載。
これはお洒落なピアノだ。
ワイセンベルク(1929~2012)は
ブルガリア出身だが米ジュリアード音楽院で学び、
ジャズにも造詣が深く、「ジャズの様式によるソナタ」を作曲したりしている。
従ってガーシュウィンを録れたからと言って不思議はない。
では相当ジャズっぽいピアノかというとそうではない。全く流したり崩したりしない。
小澤の伴奏も同様。クラシックの曲として正攻法で勝負。
そしてその範疇では最も成功した演奏ではないか。
なんといっても硬質のピアノがキラキラ美しい。
やはり一流のピアニストが弾くとこうなるのかと感心。
全体のテンポは速めで清潔感すらある。
そしてベルリンフィルだが全奏では巨大な姿の片鱗を見せるが、
そうした場面は少なく快適に音楽を運ぶ。
クラシック派の人を唸らせる名演。
録音はベルリンのフィルハーモニーでのセッション。
この会場らしいスケール感はあるとともに
ピアノのタッチもよく捉えられている。低域の量感もありシンフォニック。
15:55
演奏 S 録音 93点
2019.04.24 (Wed)
ウェイス(p)/ファレッタ/バッファローフィル(2012、NAXOS)は相当独特。
1924年のジャズバンドに向けてグローフェが編曲した版、つまり初演版によるもの。
この版は作曲家自身のものを含め、今ではいくつかの演奏で聴くことができるが、
これはとにかく演奏が独特。
演奏時間が18分半と図抜けて長いのはその特異な表情付けに要因がある。
ピアノは基本的にしな垂れかかるよう。
活きのいい感じはなく止まりそうにながら丹念に紡いでいく。
ただ、一方では音楽の流れが停滞する部分もありノリノリになってほしいところも弾まない。
オケといっても初演版なのでジャズバンド編成なので薄い。
従ってピアノ独奏狂詩曲に合いの手程度で数人のオケマンが入る感じ。
ウエィス(Orion Weiss 、1981~)はアメリカの若い世代のピアニスト。
ここまでやるのは指揮者のコントロールではなく彼自身の表現だろう。
新たな可能性を求めて挑戦するのは素晴らしいが、
残念ながらまだ聴き手を完全に惹きこむレベルに感じなかった。
女流指揮者ファレッタ(JoAnn Falletta 、1954~)は
そうした彼を見守っているようだ。
なお、この盤の他の曲は素晴らしく楽しい。
第一曲目の「ストライク・アップ・ザ・バンド」などご機嫌な曲と演奏。
「ポーギーとベス」からの組曲も多彩。
録音はNY州バッファロー、クレインハンス・ミュージック・ホールでのセッション。
エリー湖に面するこのオケの本拠地。
広さも確保されたよい録音。ジャズバンド版だが音場は大きい。
鮮度も当然だが高い。
18:28
演奏 ? 録音 93点
2019.04.23 (Tue)
オライリー(p)/ワーズワース/ロイヤルフィル(94、RPO)は詩情豊かなピアノ。
全体としても最もクラシカルに寄った演奏ではないか。
オライリー(Christopher O'Riley)は
シカゴ生まれのピアニストで音楽番組のMCも務めた。
癖のないピアノでたっぷりと綺麗に弾いてみせる。
ピアノの場面になるテンポはゆったりとなりロマンティック。
粒立ちは確かなのだが打鍵の荒さは無い。
ジャズを無理やり意識することないため崩しもない。
英国の指揮者ワーズワース(Barry Wordsworth、1948~)は穏健派。
派手さのない指揮ぶり。慌てることなく丁寧にいく。
ロイヤルフィルもここでは大暴れしていない。
全体に大人しい印象の演奏。ごちゃごちゃした演奏が苦手な向きには良い。
(併録の「パリのアメリカ人」も同様なのでこの人の傾向だ)
録音はアビーロードスタジオ1でのセッション。
RPOシリーズでは珍しい場所。
EMIよりましだが、やはりこの会場特有の響きの癖は若干残る。
17:27
演奏 A 録音 91点
2019.04.22 (Mon)
ラベック姉妹(p)/シャイー/クルーブランド管弦楽団(85、DECCA)は2台のピアノを使う。
といっても通常のグローフェ編曲版を左手と右手をカティア、マリエルの姉妹が
分け合って弾いているだけ。従って普通に聴いていると2台のピアノを使っている
とは分からないが、ヘッドフォンで聴くと中央を挟んでピアノが左右にあることが分かる。
姉のカティア・ラベック(Katia Labèque, 1950年~)と
妹のマリエル・ラベック(Marielle Labèque, 1952年~ )はフランスのピアニスト。
で姉の方はかなりジャズ寄り、妹はクラシカルという志向がある。
結婚相手も姉はギタリストのジョン・マクラフリン、妹は指揮者ビシュコフという風に違う。
姉妹の担当は明記されていないが左側の方が崩しが大きい。
ジャズ・バーで聴くような雰囲気を持っている。
また、余った手で独自の装飾音を入れていたりする。
しかし、どうしても2台でやらなければならないという
必然性は感じられなかった。
ラベック姉妹は2台のピアノだけで(オケなし)の録音があるが、
そちらのほうが面白いと思う。
シャイーの振るオケはアクセントが明快でスマート。
しかし同じオケならば私はマゼール盤の方が面白いと思う。
録音はマソニック・オーディトリウムでのセッション。
74年のマゼール盤と同じ場所。全体は似た音場感だがこちらの方が音が
ソリッドでオケの後ろが遠いのはマイクセッティングだろう。
アナログながらマゼール盤の方が音が生々しかった。
16:03
演奏 A 録音 92点
2019.04.21 (Sun)
デイヴィス(p)/マゼール/クリーブランド管弦楽団(74、DECCA)は
勿体つけながら痛快綺麗。
冒頭のクラリネットの引き延ばしなどオケに独特の表情が見られるのは
曲者マゼールの仕業。
ピアノも緩急をつけながら謳う。ジャズ的というよりもクラシック的に表情豊か、
という感じ。多分ピアニストの独自性というよりはマゼール(1930~2014年)の
指示ではないか。
ピアニストのイヴァン・デイヴィス(Ivan Davis Jr., 1932~2018年)は
アメリカのピアニストでホロヴィッツに師事したこともある。
ディスクは多くなく10枚に満たないのではないか。
人生の後半は教鞭が主となったようだ。
そんな彼のピアノは粒立ちよくタッチは爽快。
全体にジャジーなノリがいいかというとそういうことは無く揺らぎが支配する。
どんな時もお茶目に自分を刻印するマゼール、好きだなあ。
オケはキリリと引き締まりダルなところは無い。
音が素晴らしく良いのでブリリアントなブラス群などカッコイイ。
録音はクリーブランドのマソニック・ホールでのセッション。
流石DECCAで全帯域伸びが良く、小さく鳴らされる大太鼓ですら
風圧を感じさせる優秀録音。
音は近接に録られているが、ホールの空気感も感じられる。
17:01
演奏 A+ 録音 93点
2019.04.19 (Fri)
プレヴィン(p&指揮)/ロンドン交響楽団(71、EMI)は
元気だったプレヴィン(1929~2019)。
プレヴィン2回目のラプソディー・イン・ブルーは弾き振りになった。
ピアノは丁寧さよりも強いタッチ。ジャズピアノっぽいかというとどうなのか?
独自の揺らぎはあるがクラシックの領域だと感じる。
オケは自由な雰囲気。
やや荒れた感じがあるのはここでは勢いを大事にしているから。
カットもあり弛緩することない。
ただシンフォニックでバリバリ鳴っているのはいいが、
全体にもう少し粋な軽さも感じたい。
録音はアビーロードスタジオ1でのセッション。
リマスターはよく新鮮な音がするが、弦の広域などがきつくなるのは
EMIっぽい。また響きはこのスタジオ特有の響き。
分離はいまいちで奥の楽器が不明瞭になるが濁りやつまりはない。
14:45
演奏 Aー 録音 86点
2019.04.18 (Thu)
アントルモン(p)/オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(67、SONY)は
夢見る絢爛豪華。ゴージャスサウンドを地で行く。
8.2リッターという今では考えられない大排気量のキャデラックの最上位
フリートウッド エルドラードはこの録音当時のアメリカを象徴する。
きっとふかふかシートに座って煌めく街をめぐるとこんな感じだろう、という演奏。
この余裕綽々感はちょーきもちいー。
慌てず騒がず、ノーカットでこの曲を演奏。
そしてフィラデルフィアのソロの巧いこと。
冒頭からのクラリネットはゾクゾクするほど素敵。
ジリオッティ(Anthony Gigliotti 1922~2001年)ではないだろうか。
そしてアントルモン(1934~)のピアノが実にお洒落。
軽やかで適度な溜めを作りセンス満点。
バーンスタインのような感情移入は無いが
このオケの黄金期を感じさせ音だけで魅了する。
作曲者の想定を大幅に上回るこのスケールの大きな演奏は
存在感がある。
録音場所は不明ながら音場を広とった録音。
響きを付加しているかもしれないが輝くサウンドの再現に成功。
リマスター良く現役で通じる。
16:14
演奏 華S 録音 88点
2019.04.17 (Wed)
シュテッキヒト(p)/マズア/ライプチィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(81,DG)
は落ち着いた夜の雰囲気。
オール東独勢の異色の組み合わせのガーシュウィン。
当方保有はDG盤だが、もともとドイツ・シャルプラッテンが原盤。
マズアとこのオケはガーシュウィンがお好きなようで
他にピアノ協奏曲、パリのアメリカ人、ポギーとベスなどを録音している。
ライプチッヒは戦前からジャズが盛んだったこともあり
東独市民にも受け入れられるとこの録音が企画されたようだ。
そして演奏だが「クラシック」に寄っており、やはりアメリカ勢とは違う。
しかしこれはクラシックの耳には馴染み易いかもしれない。
冒頭のクラリネットのグリュッサンドやミュートつきのトランペットなど実にノーブル。
アンダンテの部分もしっかりノスタルジック。
ピアノのシュテッキヒト(1929~2012)はザクセン州の田舎の出身。
ライプツッヒ音楽院を経てドイツ現代ものなどが得意だったようだが
活動範囲が東独内に留まったことからあまり知られていない。
その彼のピアノもオケに埋没感はあるが変な崩しはなく好感が持てる。
打鍵は軽やかとまではいかないが必要以上に力まない。
全体にジャズ的スウィング感は無いがこのような落ち着いた上品な演奏も悪くない。
録音はライプチッヒでのセッション。
アナログで当時の水準をキープした音。
誇張感はなく自然。クラシック的な音の録り方というべきか。
15:53
演奏 独A 録音 87点
2019.04.11 (Thu)
ペナリオ(p)/F.スラットキン/ハリウッドボウル交響楽団(56、Capitol)は軽音楽的。
『軽音楽』という言葉はもはや死語だろうがそれを思いだすような懐かしいムード。
(昔「light music」をNHKが直訳してそのままラジオ番組名として使っていたなあ)
オケの音がまずとても軽い。そしてラテン音楽のような屈託のない明るさ。それが楽しい。
レナード・ペナリオ(Pennario、1924~2008年)はアメリカのピアニストで作曲家。
神童として鳴らしたようで12歳で急病のピアニストの代役でグリーグの協奏曲を
弾いたというから凄い。1950年代はキャピトル(EMI傘下)で1960年代以降は
RCAで多数の録音を残した。
この盤だけで彼のピアニズムを云々することはできないだろうが
希代のゴットシャルク弾きということに通じる明快さを感じる。
逆に言えば、テクニックは抜群なのだろうがやや陰影に乏しい感じがしないでもない。
とはいえオケも全く同じ歩調なのでそのような演奏方針だったのだろう。
(なお、ピアノソロの部分でモノラルになる箇所がある)
指揮者フェリックス・スラットキン(Felix Slatkin1915~63)は
言うまでもなくレナードのパパ。心臓発作で若くして亡くなってしまった。
彼の音盤は小品(EP盤で「剣の舞」を買った記憶)や映画音楽のような
ものしか知らないが、ここでは「軽音楽」に徹している。
如何にも黄金時代のアメリカを感じさせる。
録音場所は不明ながらセッション。
ミュージックホールで聴くようなこじんまりした音場。
ステレオ最初期で「Full Dimensional Sound」として左右を強調した音作り。
セピアがかった色調感ながら音はくっきり。
クラシック音楽的な溶け合い重視ではない。
16:56
演奏 A 録音 85点
2019.04.09 (Tue)
バーンスタイン(p&指揮)/コロンビア交響楽団(59、SONY)は
この曲に多彩な表現を持ち込んだ名演。
個人的にこの盤は刷り込みがあるので客観的な評価ができないが
彼の再録音よりもこちらが好きだ。
またジャズ側のこの曲をクラシックの方に引き寄せた初めての演奏ではないか。
明るく黄金に輝く音楽に憂愁をも持ち込みロマンティックに仕上げた。
まず、バーンスタインのピアノは単調ではなく揺らぎがあり
それはジャズのインプロビゼーションのようでもありロマン派的演奏にも感じる。
この盤だけを聴いているときは感じなかったが、
今から見るとこのピアノは独特で没入しており雄弁だ。
このような表現を臆面なくしてしまうバーンスタインはやはり驚くべき人物だ。
彼の指揮するオケもまた濃厚。
有名なアンダンテの呼吸の深さ、自在な伸縮など比類がない。
カットがあることなど後から知ったが全く違和感はない。
録音はブルックリンのセントジョージホテルでのセッション。
この時期このホテルが時々使われているが音響の良さからだろう。
ステレオを初期のこの盤も細部まで明晰で新鮮な音が聴ける。
フィードラー/ボストンほどのスケール感はないがこの曲ではこれで十分だ。
ピアニストの息遣いまで聴こえる優秀録音でありリマスター(2014年)だ。
16:25
演奏 S 録音 88点
2019.04.08 (Mon)
ワイルド(p)/フィードラー/ボストン・ポップス管弦楽団(59、RCA)は
すべての水準が高い。この曲の一つのスタンダード。
アール・ワイルド(1915~2010年)はアメリカのピアニスト。
1942年にトスカニーニがこの曲を演奏するときに抜擢され
見事に演奏したことから一躍注目された。
彼にとってこの曲は十八番になった。
この演奏でも完全に板についているというか硬軟取り混ぜ
見事な演奏を聴かせてくれる。
ヴィルトゥーオーソであり間然するところがない。
同年録音のバーンスタインよりもピアノはやはりうまい。
アーサー・フィードラー(Arthur Fiedler, 1894~1979年)は
ボストン響を母体とするボストンポップスを半世紀に亘って率いた。
日本では軽薄金満指揮者という評価が長く続いたが
アメリカではその興業的手腕はむしろ尊敬された。
そして、この演奏は実に見事に決まっている。
オケの水準の高さは特筆だが、指揮がきびきびして重くならないのもいい。
それまでの演奏ではピアノが主役でバックは付属のような感もあったが、
本盤はシンフォニックでオケとピアノが対等になった。
バーンスタイン盤が有名すぎてこちらは割を食っている感があるが
往時のアメリカの勢いを感じるゴージャスな演奏。
録音はボストン・シンフォニーホールでのセッション。
素晴らしい音響を素晴らしい録音陣が捉えている。
16:16
演奏 A+ 録音 88点
2019.04.07 (Sun)
リスト(P)/ハンソン/イーストマン=ロチェスター管弦楽団(57、Mercury)は痛快。
バーンスタイン盤(59)によってこの曲は「クラシック」の名曲の仲間入りをした
のではないかと勝手に考えているが、この盤はそれ以前の演奏。
リリカルな部分やメロディを強調するよりズンチャ、ズンチャ、というノリが強調される。
悪い意味ではなく楽しくなる。
パーカッションのアクセントも明快でテンポが弛緩せずメリハリがある。
多分こうした陽気なアメリカンな演奏は昔のクラシック評論家に受けなかったかも
しれないが、ガーシュウィンの自演盤を聴くといわゆるクラシック概念から
もっと遠かったのだからどの尺度でモノを見るかなのだろう。
ユージン・リスト(1918~85年)はフィラデルフィア出身のピアニスト。
バーンスタインと同い年。ヴィルトゥオーソ的との紹介があるが
確かに打鍵の切れを感じる。
指揮者のハワード・ハンソン(1896から1981年)は
新ロマン主義的北欧風の作曲家として私は親しんできた。
『1924年にニューヨーク州モンロー郡ロチェスターにおいて自作の交響曲第1番を
初演したところ、コダック社の創業者ジョージ・イーストマンの注目を惹き、
イーストマン音楽学校の校長職に選任される。
その後ハンソンはロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団の演奏家と、
イーストマン音楽学校から選抜された学生を糾合して、
イーストマン=ロチェスター管弦楽団を設立』
とあり多彩な活動をしてきたことがわかる。
自作ばかりでなくアメリカで自国の音楽を広く紹介してきた実績は多大なものがある。
この盤にみる彼の指揮ぶりは白黒はっきりさせたタイプ。
パンチがありスカッと気持ちいい。
但しもう少し「ブルー」な部分が欲しくもあるがこれはこれで首尾一貫している。
なお、このオケは人数がそれほど多くないのか軽い印象でどの曲でも映画音楽の
ような感じがするがこの曲ではそれがプラスに働いている。
録音はステレオ・セッション。当時のマーキュリーの音がする。
35㎜テープを用い当時としては驚異的なDレンジ。抜けよく爽快だ。
当時の米国の水準の高さを知る。
15:04
演奏 A 録音 87点
2019.04.05 (Fri)
イトゥルビ(p&指揮)/ロスフィル(37、North American Classics)は
38歳で作曲家が亡くなって2か月後の追悼演奏会の記録。
1937年9月8日ハリウッド・ボウルに2万人以上が集った。
プログラムは
①前奏曲第2番(管弦楽版)
②パリのアメリカ人
③歌曲3曲
④ピアノ協奏曲
⑤「ポギーとべス」から7曲
⑥ラプソディー・イン・ブルー
錚々たる演奏者が集いこの若きアメリカン・ヒーローを讃えるムードが横溢。
①は当時ロスにいたクレンペラーが指揮をしている。
本曲はスペイン系のピアニスト、イトゥルビ(José Iturbi Báguena、1895~1980)が弾き振り。
この人はクラシックとポピュラーをクロスオーバーした音楽家で
映画の分野でも活躍した。ということで彼のピアノも実に自在だ。
ガーシュウインの自演盤に比べればテンポはゆったりとロマンティック。
カットも少なくなって近時聴く形に近くなっている。
1942年に完成された現在のワトソン版とは違うこともありジャジーだ。
それでもガーシュウインよりも崩しは少なくなっており
この曲が古典に踏み込む要素も感じる。
1937年・昭和12年といえば盧溝橋事件から日本が戦争に突き進んでいく
契機になった年。アメリカも世界も戦争向かう雰囲気が醸成されていた。
そうした不安の日々を人々は紛らわそうとしているかのようだ。
録音はハリウッドボウルでのライブで拍手が入っている。
もとよりレコード発売を企図したものではないので音はともかく雰囲気を
味わうくらいに考えておいた方が良い。全米にラジオで中継された時の
放送音源と思われる。ラジオから流れる懐かしい音だ。
14:50
演奏 参 録音 70点
2019.04.03 (Wed)
ガーシュウィン(p)/ホワイトマン/ホワイトマン楽団(27、Victor)は自作自演。
1世紀近く前の録音だがそうとは思えなくらい聴ける。
そして演奏だがクラシック側の耳からすると、ほぼジャズだ。
オケは所謂「管弦楽団」というより「ビッグバンド」。
ピアノの崩し方はとてもクラシックのピアニストには真似できない。
これは自作自演でしか成し得ない演奏だろう。
ガーシュウィン(1898-1937)は38歳という短命で世を去ったが、
音楽を習い始めたのが13歳からだから、音楽家としての活動は非常に短い。
また、幼少の時から音楽教育を受けてきたクラシックの大家と違って、
秩序だった教育を受けなかったことが
逆に従来の語法に縛られない音楽を創作することができたのだろう。
この人にはクラシックは高尚、ジャズは低俗などという概念もなかった。
そんな彼に本曲を作曲をさせたのがポール・ホワイトマン(1890~ 1967)だ。
依頼を受けわずか3日でピアノ版を仕上げたが、
オーケストレーションをする余裕がなかったためそれはグローフェが行った。
この曲が発表されるや否や大ヒットとなり同年には初のSP収録がされた。
本盤はその3年後の初演者メンバーによる再録。
SP時代のためカットが多く相当絞り込まれている。
それでも当時を髣髴とさせる雰囲気が充満してる。
まずテンポが猛烈に速くめちゃめちゃ歯切れがいい。
思わず体がズンズン動く。
このテンポもSPに詰め込むためだったのかはわからないが、
表情は多様で楽譜では表せないようなフレーズが頻出する。
有名なアンダンテのメロディも駆け抜ける。
古い録音だが、クラシックの音楽家による演奏に慣れてきた耳からすると
猛烈に新鮮な演奏だ。
録音の詳細は不明。以前のSP復刻盤は針音やブツブチノイズがあったりしたが
最近のリマスターはそうしたものがカットされている。よって思いのほか聴きやすい。
9:00
演奏 (S) 録音 75 点
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