クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

指定期間 の記事一覧

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 オピッツ(93)

2017.09.30 (Sat)
BrahmsPiano Concerto No. 2oppitz
オピッツ(p)/デイヴィス/バイエルン放送交響楽団(93、RCA)は一番好き。
ピアノ、オケ、録音全て素晴らしい!とにかく壮大爽快。

この演奏に最初に接したとき、今まで聴いてきた他の演奏とは
異次元の世界に引っ張り込まれた。ともかく途方もなくスケールがでかい。
ブラームスのセンチメンタリズムを超越した、ブルックナーの交響曲のようだ。
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①まずはバイエルンのオケ。
洗練はほどほどに分厚い太い音。時に見せる唸りと色気。胸板の厚さ。
弦が主体で低弦からピラミッドで重層をなし安定感抜群。どこまでも深い。

②更にコリン・デイヴィス(1927~2013)の指揮がやたらと巨大。
慌てない堂々とした引率なのだが、独特の息遣いが見事に決まる。
スコアをなぞっただけで表出できない微妙な綾。深呼吸。
やはりこの人は凄い指揮者だった。

③そして勿論オピッツ(1953~)。
バイエルン生まれのブラームスの名手だが、低域からどっしり安定感。
逞しいのだが粗くない。師匠のケンプ譲りの虚飾ない味わい。
オケの音とテイストがぴったり合っているのはやはり同郷の好。

この盤が有名なのかどうか知らないけれど、
この曲がお好きなら是非一度は聴いてみてほしい。

録音はミュンヘンの本拠地ヘルクレスザールでのセッション。
ヘルクレスザール
このホールの音響も非常に素晴らしい。適度な響きだが混濁しない。
RCAの録音陣もバイエルン放送局の協力を得て
このオケの最善の姿を捉える。
ピアノの音像はしっかりだが溶け込んでいる。

18:36  8:52  13:10  9:08   計 49:46
演奏   S    録音  95点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 バックハウス(67)

2017.09.27 (Wed)
バックハウス2
バックハウス(P)/ベーム/ウィーンフィル(67、DECCA)は干し柿のよう。
バックハウス(1884~1969)の83歳での録音。
同齢時のルービンシュタインよりもテクニック的に衰えがみられる。
また、ポリーニやブレンデルと比較すると輪郭がぼやっとしている。
つまりはっきり言えば巧くない。
勿論、味があると褒めることは容易だ。
しかし、いろいろ聴いてこのピアノを聴くとやはり粗が多い。

にもかかわらず・・・心になじむ。これまた音楽の不思議なところだ。
巧けりゃ感動し下手なら聴けない、とならない。
この温もりは田舎で食べたおばあちゃんのカレー。

第3楽章のチェロとピアノを聴いているとほろほろと心が崩れる。
終楽章は陽だまり。

ベームとウィーンフィルは寄り添う。鄙びた感触がこれまた素敵だ。
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録音はウィーン、ゾフィエンザールでのセッション。
DECCAらしい明快さを持ちながらも60年代前半のギラギラした
感じがなく好ましい。少しもっさり感があるがこの演奏にあっている。           

17:10  8:45  12:19  9:45   計 47:59
演奏   温   録音  87点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ブレンデル(91)

2017.09.26 (Tue)
ブレンデルアバド
ブレンデル(p)/アバド/ベルリンフィル(91、DECCA)は積極的作為。
旧盤ではやたらに硬質な響きに、本盤では前半の作られた表情に少し当惑。
多分この曲に自分が求めているものが第1番とは違う「おおらかさ」のようなもの、
その先に見える「達観した明るさ」だからかもしれない。
一生懸命考え抜いた強弱、溜めなどが煩わしさの一因に。
ピアノ・オケのの力量はさすがとしか言いようがないのだが。

第1楽章のピアノは非常に能弁だ。
旧盤のようなカリカリ感はなくなり多彩な表情がみられる。
劇性は高まった、ただそれが自然の帰結と感じられないところが謎。
アバドの指揮も合わせて揺れる。ということで非常な熱演ではある。

第2楽章も引き続きオケもピアノも攻める。なんだがせわしない。
多分積極性、千変万化がそう思わせるのか。

第3楽章は両端は詩情豊か。実に美しく磨かれている。

終楽章はピアノはキラキラ輝き、オケも落ち着きを見せる。
ここでの表情はわさわさしないので逆に好感が持てる。

録音はベルリンのコンツェルトハウス(旧シャウスピールハウス)でのセッション。
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Konzerthaus-b.jpg
DGだとフィルハーモニーでの録音が主だがDECCAはこちらを選択する。
後者のヴィンヤード型の拡散する響きに対してこちらはシューボックス型で
音きがまとまる。個人的にはこちらの会場のほうが焦点が合い
芯も明確なので好み。ピアノはもとよりオケも明快。

17:59  9:20  12:15  9:28   計 49:02
演奏   A- → A     録音  93点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ブレンデル(73)

2017.09.25 (Mon)
ブレンデル1973
ブレンデル(p)/ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(73、Philips)はピアノが硬い。

ブレンデル(1931~)とハイティンク(1929~)の同世代の協演。
ブレンデルは本録音に先立ち第1番をイッセルシュテットの指揮で録音していたが、
その後この指揮者が急逝したため2番はこのコンビとなった。
当時のハイティンクの評価は万年好青年かもしれないがこの伴奏は立派。
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第1楽章の序奏のオケとピアノの出だしは今後の展開を期待させる出来。
ブレンデルがロマンを湛え希望に胸を膨らませる表現が素晴らしい。
ただその後の長丁場ではピアノが明晰にすぎ夢からさめたような感触。
オケの音は相変わらず素晴らしいのに何かかい離している。
ブレンデルはここではブラームスのまだまだ若やいだ心意気を表出する。
それは分かるのだがちょっと触るような強音が個人的には耳につく。
ハイティンクは自己主張しないが立派に鳴らしている。

第2楽章もブレンデルのタッチは明快そのもの。かなり叩く。

第3楽章の抒情的な部分もピアノは今一つ乗り切れていない単調な音。
気持ちが乗っていない?オケはいい。

終楽章はオケもピアノも力強い。

録音はコンセルトへボウの本拠地でのセッション。
アナログだが流石フィリップスでいい音。
ただ、ピアノが少しオンすぎるような気も。
ゆえにブレンデルの音が結構ガンガン聴こえる。

17:57  9:22  12:14  9:19   計 48:52
演奏   A-    録音  91点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ギレリス(72)

2017.09.21 (Thu)
ギレリス2
ギレリス(p)/ヨッフム/ベルリンフィル(72、DG)は
「やはり」鋼鉄のタッチ。
このコンビのブラームスの協奏曲の第1番はぴったりと思う。
しかしこの第2番ではもう少し穏やかなものを求めたくなる。

ギレリスの弾いたグリークを限りなく愛聴している。
それを思うとこの演奏では如何にも鋼鉄線を叩いてます
という音が時折聴こえるのが気になる。
彼の場合それが濁った感じにならないのが美質なのだが。

また、彼のピアノは滑らかというよりどこか棹さすような運びがある。
それが音楽をゴッツイ感じにもする。
これはこれでブラームスの素朴な強さを出していて加点材料。

そしてヨッフムの率いるベルリンフィルはこれまた筋肉の音で
けしかける(特に第1楽章)。
第3楽章のチェロも甘くなく気高い。終楽章は慌てない。
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しかしなぜこの録音の指揮はカラヤンではなかったのだろうか?
カラヤンは当時DGとEMIを二股にかけベルリンフィルを
振っている全盛期。伴奏指揮者は厭だったのか。
それともギレリスとは合わなかったのか?
でも、ヨッフムの指揮で良かったかもしれない。

録音はべルリン・イエスキリスト教会でのセッション。
手なれた場所で安定感ある音。
案外協奏曲で聴くのは少ないがピアノはもとより
大事なオケもぼけることなく録れている。

18:14  9:24  14:02  9:43   計 51:23
演奏   A   録音  89点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ルービンシュタイン(71)

2017.09.20 (Wed)
ルービンシュタイン2
ルービンシュタイン(P)/オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(71、RCA)は
矍鑠悠然。テンポはむしろ速めだが、いつも余裕がある。そして誤魔化さない。

ルービンシュタイン(1887~1982)の84歳での録音。
同じく80代半ばでこの曲を録音したバックハウスのものよりタッチが明快。
1929年にこの曲の世界初録音を完遂した者の矜持というのか、
慌てず騒がすの中にビシッとしたものがある。
この人を軟なショパン弾きと考えていると間違う。
強固なアクセントに込めた意志はバックハウス以上。

第1楽章はインテンポで進む。
ピアノは大家なのに着崩したりせずまっすぐ。そして優しさと強さを仄かに見せる。
これみよがしはない。そしてオーマンディもきっちりつけていく。必要にして十分。

第2楽章も流麗と言えないが一音一音しっかりタッチしていく。

第3楽章も優美な音楽に流されない真面目さ。
保有盤最短レベルでこのロマンティックな楽章を切り上げる潔さ。

終楽章は力みがない。フレーズの最後をきっちり強く。
それによってカチッとした印象が強まる。
オケは相変わらず自己主張せずピアノと協調。
清潔で実に気持ちの良い音楽を聴いた、という感想。
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人生の終盤においても真剣に向き合える人は尊敬できる。

録音はフィラデルフィア・スコティッシュ・ライト・カテドラルでのセッション。
ここはタウン・ホールとも呼ばれるが内部の写真が殆どなく
どのようなアコースティックかはわからないが録音で聴くと色々。
高域にピークのある硬い音で潤いのない響きの場合もある。
しかしこの録音は良い出来。
アナログ的ヒス・ゴロを探そうと思えばあるが、強音での崩れはない。
ピアノの音もしっかり。

17:25  9:20  11:52  9:14   計 47:51
演奏    S    録音  87点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ツィマーマン(84)

2017.09.19 (Tue)
bernstein zimermam brahms2
ツィマーマン(p)/バーンスタイン/ウィーンフィル(84、DG)は風圧強し。
ピアノもオケも張り出しが強く足を踏ん張って聴かないと投げ飛ばされる。

ツィマーマン(ツィメルマン、Krystian Zimerman、1956~)はポーランドの
ピアニスト。1975年当時の史上最年少でショパン国際コンクールで
優勝してからずっと第一線で活躍している。
多くのアメリカのピアニストが辿ったような音楽産業の餌食にならないよう
自己抑制を貫いたから着実に進化をしている。
また、日本人と結婚し家も持つ日本贔屓。
(↓1984年、当時はまだ髭がなく爽やかな見た目)
bernstein zimermam 1984
バーンスタインはこのピアニストをかわいがっていたようだ。
この両者は実演でも多く共演し、なかなか相性が良かったと思う。
(↓1984年バーンスタインは完全にウィーンを掌握)
bernstein zimermam brahms 1984

そしてこの演奏。二人の強い意志がそのまま演奏に表出。
第1楽章冒頭のウィーンフィルはまろやかな中に秘めているのがわかる。
バーンスタインが振るとこうなるのだ。濃密な中に繊細な表現ググッと出てくる。
相変わらずの譜読み。
そしてピアノ。録音時21歳と思えない逞しい音。
しかもうねりを持った表現はすでに自分のものになっている。
指揮者に支配されていないのでちらちら火花さえ見える。
この曲が「第1番」かと思えるほどの激しさ。

第2楽章は一層燃焼度が高くピアノが巨大、オケも負けない。

第3楽章のチェロはヘルツァー。こちらはひたすら美麗なのだが
ピアノの方は燃えている。オケは粘液質。後半のチェロは影響されてか濃厚に。

終楽章はショパンのようなロマンティックさ。
バーンスタインの指揮は表情過多の一歩手前。ピアノが強い音でそれを遮る。
ピアニストの自我の発露が素晴らしい。終結まで意志は強固だ。

録音はウィーン・ムジークフェラインでのライブ。
ただし、ノイズはなくライブと書かれなければ全く分からない。
ピアノが大きくフィルアップされ周囲をオケが囲む。ホールの響きも美しい。

18:14  9:15  14:30  9:02   計 51:01
演奏   A+    録音  94点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ポリーニ(2011)

2017.09.17 (Sun)
ポリーニティレーマン1
ポリーニ(p)/ティレーマン/ドレスデン・シュターツカペレ(2011、DG)は
ドイツのシュヴァルツヴァルトのよう。深くスケールの大きな音楽に魅せられる。
ドレスデンのオケの懐の深さに聴き入る。
Schwarzwald_20170917083628d73.jpg

ところでこれをブラインドで聴いてポリーニだと思う人はどれくらいいるだろうか。
昔の硬質強固な彼の音で刷り込まれていると気づかない。
テクニックの問題ではなく、ピアニストの音が変化した。
この音楽家の過去に捉われると違和感があるだろが、
これだけを聴いているとこれはこれで素晴らしい。
録音時、ポリーニ(1942~)は齢70近く、50過ぎのティレーマン(1959~)と
協調して温かな音楽を創る。
Maurizio Pollini, Christian Thielemann
当時ティレーマンはルイージが辞任したこのオケの後任として
首席指揮者になったが、順調にスタートした。
そして25年ぶりにこのオケとの協演を果たすポリーニは
この演奏会で十八番のこの曲を選んだ。
『伝説的ピアニストが戻ってきた』という触れ込みだったようだ。

第1楽章序奏のオケは低重心でウィーンよりも分厚い音で収録されている。
所謂ピラミッドスタイルで安定感がある。
ティレーマンはそのうえで仄かなロマンを醸し出している。
そこにポリーニが入っていくが違和感が無い。
神経に触るような音は無くむしろ温厚な表情を見せながら一体となって
ブラームスを奏でる。

第2楽章は両者の長所が出る。オケはゆったり美しい。
ベームが際立たせたような低域の意志を見せつけることは無く自然体。
そして凛としたピアノ。

終楽章も対決姿勢でなく余裕を持った音楽。
終始ヒステリックさは無く重厚さの上に清涼剤的ピアノが心地よい。

録音はドレスデン・シュターツカペレでのライブ。
マス的に音が捉えられオケの後方の分離がいまいちのもっさり感があったので
モニター型ヘッドフォンで聴く。すると木質で分厚いこのオケの良さを味わった。
ピアノの音はさほどオンではなく溶け合いながらも綺麗に録れている。

21:03  12:32  11:55   計 45:30
演奏   A+    録音  91点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ポリーニ(79)

2017.09.16 (Sat)
ポリーニベーム1
ポリーニ(p)/ベーム/ウィーンフィル(79、DG)はオケの香りを聴く。
ポリーニ(1942~)の3つあるこの曲の録音の最初のもの。

ベーム(1894~1981)は最晩年に差し掛かっていた。
録音時85歳だがここでは弛緩は感じない。
多分指揮の動きは少ないのだろうが、長年付き合ったウィーンフィルが
読み解いて音にしているのだろう。そして結局はこのオケの音に魅せられた。
時に秋の風。時に月夜。か細い室内楽であったり巨大な包容力を見せたり。

一方、ポリーニは十分情熱的。
ただアナログ録音の限界なのか最強音でも綺麗な音を維持できているか
というと、どうだろうか。オケは熟成し、ピアノは青春の中にいる。
Pollini-Maurizio-005[1979]

録音はムジークフェライン大ホールでのセッション。
アナログ末期でオケは良いのだが、ピアノは少し厳しい場面がある。
ピアノソロの録音ならばもっと綺麗にポリーニの音を捉えたであろうが、
オケと同時録音では制約は多い。

20:45  13:23  11:50   計 45:58
演奏   A   録音  88点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ワッツ(68)

2017.09.14 (Thu)
ワッツとバーンスタイン
ワッツ(p)/バーンスタイン/ニューヨークフィル(68、SONY)は驚いた。
ピアノもオケも素晴らしい。
「驚いた」というのは、正直全く眼中になかった盤に目を醒まされたから。
他の有名ピアニストで同曲を聴いていたがつまらなくなって、
たまたま持っていたこの盤に手を伸ばした。そして先述の通り驚愕覚醒した。

アンドレ・ワッツ(André Watts, 1946~)は1960年代にアメリカで一世を風靡した
ピアニスト。ハンガリー人の母とアメリカ陸軍下士官でアフリカ系アメリカ人の父を
持ちニュルンベルクに生まれた。幼少の頃に母親から音楽の手ほどきを受け
フィラデルフィア音楽院でピアノを専攻。
10代半ばでバーンスタインに見いだされ、グールドの代役で注目を集めた。
André Watts b
見た目は完全に黒人ピアニスト。
1968年1月23日21歳の時に録音したのがこの盤。
当時米国は過激化する黒人運動やベトナム戦争などで揺れていた。
そしてキング牧師が暗殺されたのが同年の4月4日。
勿論そのようなことは関係ないのだろうが、この音楽を聴いていると
ピアニストと指揮者の時代を背負った意志を感じる。

その後70年代以降はワッツは商業ベースに乗らなくなったのか
音盤製作は途切れてしまう。従って我々の視界からは消えてしまう。
でも今でもリサイタルなどはやっている。
AWatts.jpg

さてこの演奏、まずはバーンスタイン。結構本気だ。
この若武者を盛り立てるとともに主導する。
オケは凝縮し力強くアクセントは明快。
音楽の高揚に合わせて伸縮するバーンスタイン節が聴ける。

一方ワッツは竹を割ったようなまっすぐでしなりも十分。
楽章間の性格付け、変化が乏しいと言われる可能性はあるが
剛直なまでの音は気持ちいい。バックに全くひけをとっていない。
グランドキャニオンのスケール感というより大陸横断鉄道の逞しい突進力。
音は濁らずコントロールが効いているのは天才の証。
これは思わぬ拾いものだった。

録音はエイヴェリー・フィッシャーホールでのセッション。
この会場の音響は比較的デットでスケール感や潤いが乏しい憾みは
あるがリマスターもよく当時の水準は確保。
ピアノの音も濁らずちゃんと録れている。

18:07  9:09  13:57  9:18   計 50:31
演奏   A+   録音  88点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ハフ(2013)

2017.09.13 (Wed)
Stephen Hough12
ハフ(p)/ウィッグルスワース/ザルツブルグ・モーツァルテム管弦楽団
(2013、hyperion)は綺麗に揺蕩う。英国で評価されたこの盤はなるほどと思う。
派手さは皆無で品よく歌う。
両翼配置のオーケストラも美しくピアノと溶け合う。癒され度筆頭格。

ハフ(Stephen Hough, 1961~ )は英国のピアニスト。
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ウィッグルスワース(Mark Wigglesworth, 1964~ )も英国の指揮者で
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ここではオーストリアのオケを振っている。

第1楽章はテンポに緩急があり息遣いがいい。
単に弾きましたというのではなく思いが込められている。

第2楽章のアパッショナータは少し大人しいと感じるかもしれない。
しかし情念は常にむき出しである必要はない。

第3楽章も繊細な味わいを持つ。ピアノのタッチが実に綺麗でかつ深い。
ブラームスが書いた音楽の中でも飛びきり夜想的だ。チェロがまた切ない。

終楽章は可愛く軽やか。ピアノは飛び回る蝶、オケはそよふく風。
アクセントはまろやかで角が立たない。
どこにも大家はいないが、ささやかな幸福を感じさせる音楽。

録音はザルツブルグの祝祭大劇場でのセッション。
外から見ると丘を背負った単なる建物だが、
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後ろの岩盤をくりぬいた大ホールがある。
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響きは美しく本録音でも穏やかなスケール感を演出。
ピアノ他各楽器のピックアップも適切で美しい。

18:19  9:10  11:52  9:30   計 48:51
演奏   S   録音  94点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 オソリオ(90前後)

2017.09.12 (Tue)
osorio batiz
オソリオ(p)/バティス/ロイヤルフィル(89?/Mexico)は
押し出し強い。正当な力を感じさせる。

ホルヘ・フェデリコ・オソリオ(Jorge Federico Osorio,1951~)は
オソリオ
メキシコを代表するピアニストで現シカゴ在。
同郷のこの指揮者とは度々協演している。
また、ブラームスは彼の中心的作曲家でもある。

バティス(1942~)はラテン系の「爆演」指揮者といわれることもあり、
確かにそうした演奏も多々あるのだが、いつもそうとはならないので、
妙な期待をすると裏切られる。
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彼はメキシコの生んだ神童ピアニストでもあり、
ジュリアード音楽院で指揮を学んだ正当派でもある。
この演奏も男性的ではあるが「爆」とは言えない。

第1楽章冒頭はティンパニからホルン、ヴァイオリンから低弦へ
と強拍をアウフタクト的に微妙にずらし巨匠音響を作り上げる。
手兵メキシコ響では実現できないような重厚さ。決して虚仮威しではない。
ピアノはしっかりしたタッチ。がっぷり四つ。オケに負けない。
ただ、ピアノは多彩な表現かといえばそうとも言えない。
むしろオケの分厚い迫力に魅了。

第2楽章は全般に圧が強いが単調。
ロイヤルフィルに重心の低い音を出させている。
ピアノはブラームスの若き覇気を演出するようで
少し力が入りすぎているような。

終楽章は良い。空回りしない勢いを感じる。
オソリオのピアノはフォルティッシモでは粗いが
図太い響きになる。
エネルギッシュな終結は痛快。

録音はロンドンでのセッション。
録音年含めた詳細の記載が無いのは誠に大らかなメキシコレーベル。
デジタル収録で響きは多くなく、
各楽器の分離もいまいちだが全体としては力のある音。

21:10  14:14  12:10   計 47:34
演奏   A   録音  90点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 バレンボイム(2004)

2017.09.11 (Mon)
バレンボイム&ラトル
バレンボイム(p)/ラトル/ベルリンフィル(2004、EuroArts)は
直情径行ヴェリズモ・オペラ。濃厚な表情を以って歌いオケも厚く熱い。
体調の良い時に聴けばロマンの泥沼に溺れることができる。
さらりとした風景が好きな当方もここまで振り切られると感心する。
今このような表現を惜しげもなく繰り出すピアニスト、指揮者は貴重だ。
バレンボイム(1942~)は日本での評価はいまいちかもしれないが
私はこの天才職人を最近非常に尊敬している。
この一発録りのDVDを観ると彼にとって還暦など屁のようなものだ。

第1楽章序奏のオケは物々しく表情がつく。遅いテンポでラトルが入念。
劇的な気配が漂う。そしてバレンボイムのピアノがまた語る。
こうなるとマーラーの音楽もかくやと思わせる。
終結に向けてドラマは激しく高揚する。
もうこれが終わっただけで拍手が起こってもおかしくない。

第2楽章も分厚いベルリンの弦に支えられピアノがたっぷりと展開。

終楽章もバレンボイムは全く衰え知らず。攻めてくる。
そしてベルリンは流石。凝縮した響きが実に心地よい。
ラトルが嬉々として振っているのが印象的。
終結はライブらしく物凄い勢いで盛り上がりこちらが熱くなる。
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録音はアテネのヘロデス・アッティコス奏楽堂での屋外ライブ(DVD)。
Odeon of Herodes Atticus
この2000年の歴史を誇る建造物を背景にした映像は非常に魅力的。
また驚くほど音がいい。
拡散する前に音を拾っているので映像を見なければ、
そして小鳥のさえずりが聞こえなければ屋外と分からない。
しかも直接音ばかりでなく残響もありどうなっているのかと思う。
映像で見る限りそれほどマイクが林立している風に見えない。
ピアノは勿論オケの音もしっかり分厚く収録されている。

23:33  14:57  14:54   計 53:24
演奏   濃S    録音  92点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 アラウ(60)

2017.09.10 (Sun)
arrau 1emi
アラウ(p)/ジュリーニ/フィルハーモニア管弦楽団(60、EMI)は
面食らう重量感。土石流を感じる。
ジュリーニ(1914~2005)の指揮するオケはぶっとくうねり、
アラウ(1903~91)のピアノもこれまた線が太い。
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第1楽章冒頭からのオケは粘性を帯び渦巻いて迫る。
フィルハーモニアでどうやったらこんな音を出せるのか。
ピアノは力一杯叩かなくてもなぜこうも豪快な音が出るのか。
呆気にとられる。

第2楽章も緊張感ある重厚さ。15分かけてグイッと押し出す。
弦はゴリゴリゴォーと響くのはリマスター時に強調したから?
アラウのピアノはここでも無骨。

終楽章はピアノがリードして前面に。独自の節回しでぐいぐい。
オケは最初はサポートに回りながらも
徐々に自我を出しスケールの大きな音楽を作る。

巨大な地滑りを目の当たりにするような音楽。
Butte-Land-Slide2.jpg

録音はアビーロードスタジオでのセッション。
リマスターがいいのか迫力ある音が潰れずに聴ける。
会場はデット気味だが演奏によって巨大な規模を獲得。
プロデューサーにウォルター・レッグの名前。
この直後のッジュリーニのブラームスの交響曲全集より音がよく迫真。

23:28  15:06  12:54   計 51:28
演奏   S    録音  87点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ワイセンベルク(83)

2017.09.09 (Sat)
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ワイセンベルク(p)/ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団(83、EMI)は
立派なピアノ交響曲でまっとうな演奏なのだが、どこかよそよそしい。
というかこのピアノは不思議な感触がある。
音楽が大きく盛り上がるところでも何か醒めている。

ワイセンベルク(1929~2012)はブルガリア生まれの仏国籍のピアニスト。
スイスのルガーノで82歳で亡くなった。父親は外交官、母親はピアニストという
エリート家庭に生まれ幼少のころからピアノの才能を発揮、
というと羨ましいばかりだが彼の苦難は戦中以降。
(↓1941年ブルガリアの恩師Pantcho Vladiguerovと)
вайсенберг20дете
両親が離婚調停中にナチス・ドイツが、ブルガリアを支配し、
あろうことか父親はユダヤ人であった母とその息子(ワイセンベルク)を密告。
このため母子は祖国から逃亡。だが甲斐なく収容所に入れられてしまう。
しかしながらイギリス空爆や母親の機転やらのお陰で脱出に成功。
生き延びた。

1946年米国でジュリアード音楽院に入学した後活躍を始めるが
1956年には「自分を見つめ直す」として隠遁生活に入ると同時に仏国籍取得。
1966年にカムバックしてからは再び脚光。
そしてカラヤンとの協演盤が話題となりスターとなる。
カラヤンと
日本では黒柳徹子が40年来の交際を告白しているが
黒柳徹子と
90年代以降はパーキンソン病との闘病生活を送ったとのこと。
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彼の屈折したところは上記の生い立ちにも関係するのか。
グールドが褒めた数少ないピアニストがワイセンベルク。
何か共通する孤独を背負っていたのかもしれない。
彼にはドビュッシーやスカルラッティの方が似合う気がする。

さてこの演奏。オケはやたらに立派で言うことは無い。
そしてピアノも滅法うまい。
しかし両者ともにもう一歩の踏み込みをしていない。
この大曲で感動させてやる、という気負いを感じない。
ワイセンベルクは72年にジュリーニとこの曲を録音しているが
その時は指揮者のペース。
では今回はどうかというと、ここでも指揮者に合わせながら
間然とするところが無い。

録音はフィラデルフィア・オールド・メットでのセッション。
水準的な音。オケの量感は捉えられているし、ピアノもちゃんと聴こえる。

21:50  13:30  11:40   計 47:00
演奏    醒A    録音  90点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 フィッシャー(42)

2017.09.08 (Fri)
fischer Furtwängler brahms2
フィッシャー(p)/フルトヴェングラー/ベルリンフィル(43、DG)は名コンビ。
フィッシャー(Edwin Fischer, 1886~1960)は、スイス出身のピアニスト、指揮者。
フルトヴェングラー(1886~1954)と同い年で盟友。
fischer Furtwängler
この二人はよく協演しており手のうちを知り尽くしている。
従って両者の積極性が出ている。

第1楽章などフルヴェン節で表情がつくがフィッシャーはしっかり受けて立ち
自分の真っ直ぐな音楽を貫く。技巧がどうのというより貫禄がある。
それは第2楽章も同じ。
第3楽章は指揮者の面目躍如。ロマンティックでベルリンのチェロが歌いまくる。
終楽章はテンポが揺れるが息はぴったり。オケは結構けしかけるが
ピアノは乱暴にならない。ただ、このピアノは今の水準からみると
決して巧いとは感じない。それでも聴かせてしまう。

録音はベルリン、旧フィルハーモニーでのライヴ録音。
ピアノが前面で強打されるところでは潰れ気味になる。
想像力で音を補う。
やはり普通に聴くにはもう少し音のいいものが欲しくなる。

16:42  8:26  12:23  9:03   計 46:34
演奏   友   録音  71点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 エッシュバッハー(43)

2017.09.07 (Thu)
Furtwängler
エッシュバッハー(p)/フルトヴェングラー/ベルリンフィル(43、VIRTUOSO)は
この指揮者の思いやり演奏。

エッシュバッハー(Adrian Aeschbacher、1912~2002)はスイスのピアニスト。
Adrian Aeschbacher
同じくピアニストであった父親から手ほどきを受けた。
しかしながら表舞台での活躍は短く音盤も少ない。
人生後半はスイスで後進の指導をしていたようだ。

その彼が20代最後にビッグネームと組んだライブ。
数少ない正規録音の中、50年代前半にケンペン/BPO(DG)とこの曲の
録音があるから得意だったのか?
ただ再録音時の演奏タイムは本盤より相当速い。
むしろこの盤は前年この指揮者がエドウィン・フィッシャーと組んだものと
テンポは近似している。
父親ほど年上のフルトヴェングラー(1886~1954)主導の演奏だったのだろう。
ただ、この指揮者らしいアクの強さは見られずこの若きピアニストをサポート。
エッシュバッハーは健闘しているが
ミスタッチが散見されかつ弾きこなすことで手いっぱいの雰囲気。
この貧しい録音では彼の個性をうかがい知ることは出来ない。

フルトヴェングラーぽさは第2楽章の終結にかけて
怒涛の追い込みを見せる程度。

このあと47年のルッツェルン音楽祭でも彼を起用しているので可愛がっていた
ピアニストの一人だったのだろう。

録音はベルリンでの戦時下のライブ。相応の音。

16:40  8:28  13:09  8:50   計 47:07
演奏  -   録音  70点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 カツァリス(89)

2017.09.05 (Tue)
Cyprien Katsaris inbal
カツァリス(p)/インバル/フィルハーモニア管弦楽団(89、TELDEC)は知性的。
そして最後まで淡い憧れを感じさせる。

カツァリス(1951~)はフランスのピアニストとして記されているが、マルセイユで
ギリシア系キプロス人の家庭に生まれ、幼少期はアフリカのカメルーンで過ごしている。
生粋のパリジャンとは言えないが13歳にしてパリ音楽院に入学しているので
神童だったのだろう。

彼のイメージはショパンやグリークの小品、もしくはリスト編曲版のベートーヴェンの
交響曲全集のイメージ。ブラームス、ましてやその協奏曲のイメージはなかった。
聴いてみて確かにブラームスの分厚い音とは一線を画したタッチ。
したがってこれがブラームス的かといわれると分からない。

が、第2番の演奏としてどこまでも綺麗で濁らないピアノは魅力的だ。
この曲に叩きつけない清冽なピアノも良い。オケはずっしりと安定感がある。
第3楽章も深くインバルの瞑想が出る。
全編ピアノ、オケともに作為的な表情はなく正攻法なのは好感が持てる。
劇的な演奏とは言えないし終楽章のノリも抑制的。
しかしこうしたブラームスもいい。
贅沢にあと一点のぞむとすればオケの音色の魅力か。
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録音はEMIのアビーロードスタジオでのセッション。
編集がラフな点はあるが、TELDEC録音陣はこのスタジオで
うまくスケール感や重厚さを出しておりEMIのお家芸的平板さから逃れている。

18:18  9:12  13:27  9:33   計  50:30
演奏   A   録音  91点
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