クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

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ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 クレーメル(92)

2017.08.07 (Mon)
クレーメルアーノンクール
クレーメル(Vn)/アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(92、TELDEC)は
意志的ユーモア。そのココロは5分に及ぶ第1楽章のカデンツァ。
現在聴かれる演奏の中では一番異彩を放つ。
それ以外の箇所は逆に非常に真っ当な演奏にして見せる。

このカデンツァはベートーヴェンがピアノ編曲した際に作ったカデンツァを
ピアノのパートとして持ち込んだ上に、ヴァイオリンも合体させる。
まさに鬼才クレーメルならではのアイデアだ。
ただ、あまりにも突飛過ぎて拒絶反応が出てもおかしくない。
この優美なヴァイオリン協奏曲の中に突然現れる不思議な異空間。
とはいえ、この80%はベートーヴェン自身のアイデアなのだ。
私はこのピアノ版カデンツァを聴くと、苦虫をつぶしたようなベートーヴェンの
壮大なギャクを感じて嬉しくなる。
観念的精神論の中軸に祭り上げられた楽聖がニヤリとしている姿を想像する。
彼だっていつもしかめっ面していたわけではない。
ベートヴェン笑う
なお、本演奏は自筆譜を再チェックしたうえで児島新が校訂した
ヘレン版新全集に依っている。テツラフ88年版もそうだったが
当時ベートーヴェンのスコアが見直され演奏も新たな視点が出ていた。

第1楽章冒頭からライブらしい覇気のある音。
室内管弦楽団とあるが会場の豊かな響きもあってフルオケ同様の響き。
クレーメルはアタックが強い。滑らかな美音というより、意志を持った音。
オケ、独奏共にぐっと力がこもり粗くなる寸前。テヌートも押しつけるよう。
深い沈み込みを見せたり、壮大なトゥッティを響かせるなど積極的。

さて問題のカデンツァ。
オケが止み18:17から突然ピアノ独奏が鳴りだす。
そこにクレーメルのヴァイオリンが協奏的に絡む。
更に19:45からはティンパニが乱入しピアノ、ヴァイオリンと三重奏。
ティンパニ含めそれぞれの主張が強い。23:16まで続く。面白い。

第2楽章は前楽章の破天荒なカデンツァのショックの後、
何事もなかったかのように厳かに始まる。豊かな情感があふれる。
クレーメルは甘さも併せて美しい。

終楽章は活力があり聴きごたえがある。
ヴァイオリンの逞しさと繊細さを交互に押し出す。オケはパワフル。
そしてここのカデンツァも短いながらピアノが挿入され
不思議な世界を垣間見せる。

録音はグラーツのシュテファニエンザールでのライブ。
KUG_Orchester_Stefaniensaal.jpg
2日間の収録で編集。休憩も含まれているが最後の拍手はカット。
聴衆を入れても響きの豊かなホール。
そうと書かれなければライブと気がつかないかも。
マイクセッティングもしっかり行き亘っているようでマストーンと
個々の楽器の両立がされている。

24:13 8:51  9:52   計 43:07
演奏   独A+    録音  92点

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