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- 2017/07/13 : バーンスタイン ミサ ナガノ(2003) (Bernstein)
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2017.07.13 (Thu)

ナガノ/ベルリン・ドイツ交響楽団(2003、harmonia mundi)はノーブル。
バーンスタインの自作自演盤から30年あまり。
誰もしなかったこのミサ曲の録音に果敢にチャレンジした。
ケント・ジョージ・ナガノ(1951年~ )は、日系3世の米国指揮者。
バーンスタインとの交錯はどこなのかよくわからないが、明らかに使徒のひとり。
私の印象ではこの人は奇抜な音楽を作らずバランス感が効きスムーズ。

そして本盤も同じアプローチ。
バーンスタインが問題意識を剥き出しにして音楽が汚れるのも構わず
攻めた部分はここでは流麗になる。
歌唱も押しなべて伸びがよく美しく、癖がない。
速めのテンポが自作自演盤のような毒や棘を消している部分もあるが、
むしろクラシックやミュージカルを聴く人が違和感がないのはこちかもしれない。
バーンスタインによる70年代のロック・エレキの音は今聞くと古臭く
場合によっては老人が無理して若作りをしたように聴こえる。
しかし、このナガノ盤はその”ダサさ”を感じさせない。
ここら辺の音づくりに2世代くらいのセンスの格差を感じる。
バーンスタイン盤では終盤の聖体分割式で聖杯を叩きつけ粉々にする場面が
オドロオドロしく描かれるのに対して、ナガノ盤はスピーディに崩れを描ききる。
そのあとの静寂と「シークレット・ソング」はテンポを落としリリシズムを極める。
そう、ナガノはこの曲から最大の透明な美しさを引き出した。
ただ説得力はやはりバーンスタイン。
もうそろそろその呪縛から解放されなければならないのだろうが。
録音はベルリンのフィルハーモニーでのセッション。
2ch用なので定位はしっかり安定しておりここらへんも通常のクラシック的。
ハルモニア・ムンディ・フランスの録音陣のセンスも洗練されており
広がりと伸びの良さが心地よい。
105:59
演奏 A 録音 94点
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