クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

指定期間 の記事一覧

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 タン(89)

2017.06.19 (Mon)
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タン(fp)/ノリントン/ロンドン・クラシカル・プレーヤーズ(89、Virgin)は
フォルテピアノによるコロコロ演奏。

メルヴィン・タン(1956~)はシンガポール生まれで英国を中心に活躍する
フォルテピアノの第一人者。
melvyn-tan.jpg

さてこの演奏、モダンピアノを聴きなれていると最初は戸惑う。
木質で地味で減衰の早いフォルテピアノは乾いた音になる。
モダンピアノによる煌めきや表情の多彩を知っていると、
このくすんだ音色には不足を感じる。
モダンピアノがフォルテピアノを駆逐してしまったのは故なきことではない。
(なお、インマゼール盤のフォルテピアノはもっとモダンピアノに近い音が
しておりこの楽器の個体差の大きさを感じる)

しかし第1楽章のベートーヴェン作曲の長大な方の
カデンツァ(11:04~16:00)を聴いていると・・・発見した。
モダンピアノでこのカデンツァを弾くと5分に及びかつ
その華麗な音色が如何にも見せびらかしのようにくどく聴こえる。
ところがこの演奏で聴くと大袈裟にならず妙技が愉しめる。
そうか、ベートーヴェンの頭の中で鳴っていたのはこちらの方なのだ。

テンポはノリントンの方針もあるのだろうが一貫して快速。
第2楽章など通常11~12分だがこの演奏は8分。
ノンヴィブラートで全ての音がスパっと消えていく。
そうした意味での余韻に乏しくこのラルゴ楽章がアレグロに聴こえる。

第3楽章はこの楽器に最も沿うと思うが、音量が大きくないので案外地味。
ノリントンの伴奏はフォルテピアノの特性を熟知したうえで
この個性を生かそうというもの。小編成オケでどんな場面も重くならない。
リズミックで活き活きはノリントンのアドバンテージ。

録音はアビーロード第1スタジオでのセッション。
編成が小さいのでこのスタジオでも不満は無い。
響きは少ないが適度な潤いはある。

16:21  8:16  8:29   計 33:06
演奏   雅A    録音  90点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 バレンボイム(68)

2017.06.18 (Sun)
klemperer barenboim beethoven
バレンボイム(p)/クレンペラー/ニューフィルハーモニア管弦楽団(67.EMI)は
指揮者の演奏。
クレンペラー(1885~1973)82歳とバレンボイム(1942~)25歳の協演。
もうこれだけで勝負あった。
まずテンポが若者ののそれではない。バレンボイムはそれについていく。
また、ピアノ自体もポツリ系でクレンペラーが弾いているよう。
これ以降バレンボイムはこの曲を自分で弾き振りをしていく。
後年の録音は本盤とはずいぶん印象が違う。
ただし、カデンツァだけはこの時から自身で創作して意地を見せる。
(↓録音時既に指揮活動を行っていたバレンボイム)
バレンボイムとデュプレ

そもそもこのベートーヴェン全集はクレンペラーとフィルクスニーという
老大家同志で録音される予定だったが両者の健康面で問題が発生し、
当時新進気鋭のバレンボイムにおはちが回ってきたという。
クレンペラーはバレンボイムを高く評価していたが
結局はこの若者に主導権を渡さなかった。

第1楽章序奏の重く無骨な響きはまさにクレンペラー。
ピアノが入るまでにこの楽章の進め方は決まっている。
速く走りたいのを抑えてバレンボイムが入ってくる。
後年の流暢で抑揚の大きなバレンボイムとは違う。
13:54から15:48まで自作カデンツァ。
ベートーヴェンの作曲した長いカデンツァを半分に圧縮するが、
如何にもベートヴェンっぽい違和感の無いもの。

第2楽章も歩みは遅く鬱蒼としている。
表面上の美音が続くのとは違う音楽が流れる。
抑制された表情は渋い。

第3楽章はドイツ対ラテン。
オケは相変わらず正調なのだがピアノが目覚めていきいき。
ティコティコの場面など積極的。異質な文化の衝突が面白い。
(なお、カデンツァ終結7:05で明らかにテープを繋いだ跡)
とはいえ全体は若書きうきうき「第1番」としてははかなり異質な演奏となった。

録音はアビーロードスタジオでのセッション。
一聴しただけでこことわかる、ナローレンジで伸びの無い地味な音質。
オケの対向配置は分かる。
ピアノの音は必ずしも美しく録れているとは言えない。音の潰れなどは無い。

16:15  13:13  9:18   計 38:46
演奏   A-   録音  86点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 グールド(58)

2017.06.17 (Sat)
グールド1
グールド(p)/ゴルシュマン/コロンビア交響楽団(58、SONY)はめちゃ楽しい。
バッハ+ハイドン+ラテンのノリ。
両端楽章がリズミックで快速、中間ラルゴ楽章がしっとり歌う強烈な対比。
そしてバッハと現代音楽をMIXしたグールド独自のカデンツァ。
正統的な名盤とは言えないかもしれないけど、
この曲が好きな人なら一度お試しをと薦めたくなる。

グールドはバッハのほかにベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲がレパートリー。
特に第2番を偏愛していた。でもこの第1番はグールドにぴったりな気がする。

指揮者ウラディミール・ゴルシュマン(Golschmann, 1893~1972年)は
ロシア系でフランス出身の米国人。ハイドンの交響曲を大量に残しているが、
ここではグールドの音楽を活かしたよい伴奏。
(↓ゴルシュマンとグールドのレコーディング打合せ)
ゴルシュマンとグールド

オケはニューヨークフィルなどの抜粋メンバーによる。
ワルターが振っていた西海岸のそれとは違う。

第1楽章オケが速めのテンポで颯爽と入るが
グールドが入ると一層加速しコロコロと転がる。快速!
タッチはまさにグールドのそれ。ペダルなしのパルス的な刻み。
ただ、会場の響きがあるのでぽきぽき感は少ない。
そしてお楽しみカデンツァは10:31から。
なんと突然主題を用いたバッハの世界でフーガが始まる。
シンプルな世界から重層的なスケールへ。

第2楽章は一転もっとも遅い瞑想的ペース。
オケはしっとり流れそこにグールドの寂しげなピアノがポツリポツリ。
これまた独自の心象風景。

第3楽章はノリノリ。前楽章からアタッカで入り突然視界が変わる。
明るく眩しい。ハイドン的にウキウキする。
2:33からのティコティコのノリの良さは聴きもの。オケの相槌もよい。
こんなラテンの映像とシンクロする。
ピアノの粒立ちの良さが光る。
そして6:09からのグールドのカデンツァ。
ゲンダイオンガク風な混沌の世界から清涼な世界に戻る場面の効果が抜群。
気持ちの良い終結。

録音はニューヨーク30番街スタジオでのセッション。
30番スタジオのグールド
ステレオ初期だが響きをうまく取り入れ綺麗に録れている。
潰れもなく2010盤のリマスターがよい。
(第2番もステレオで入れ直してほしかった!)

12:20  12:07  9:04   計 33:31
演奏 楽S   録音 87点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ケンプ(60)

2017.06.14 (Wed)
ケンプ11960
ケンプ(p)/ライトナー/ベルリンフィル(61、DG)は
チャーミング&びっくり。
洒脱でモーツァルトへのオマージュ的演奏。

私はケンプのピアノが何だか好き。
巨匠でもヴィルトゥオーソでもなくて少し枯れた感じもするけどでも親しみやすい。
ケンプは50年代にケンペン/BPOで一度全集を作っていてこちらの方は
オケも含めて一段と立派な音響だった。
しかし60年代のこのステレオ盤は独自の境地・風情。力が抜けきる。

そしてこの演奏でのびっくりお楽しみは両端楽章のカデンツァ。
ベートーヴェン弾きと称されたケンプ。
しかしここでは作曲家のカデンツァではなく自作を披露。
これが実に愉快。

第1楽章まずは立派なオケで序奏が奏でられる。
いよいよピアノ登場。肩すかしのような非力なピアノ。非力というのは語弊がある。
対抗対決など毛頭考えない自在なピアノ。ひらひら舞う感じはむしろモーツァルト。
フォルテではなく弱音で吸い込まれる。
12:48からのカデンツァは14:04までと作曲家の5分バージョンよりはるかに短い。
しかもそれが実にモーツァルト。
軽やかに転がる。ベートーヴェンのこれ見よがし感は全くない。

第2楽章は秋の気配。
モーツァルトの最後のピアノ協奏曲のように夕映えだ。
sunset.jpg

終楽章は着崩し感。
オケはシャキッとしているがピアノはここでも妙な力みはない。
余裕を持った脱力はお洒落でもありジャジーでもある。
ラテンのティコ=ティコダンスもさりげなくすぎ驚きは6:42。
この楽章のカデンツアはあっという間に終わるのが大半だが
ケンプはここにお茶目をぶち込む。
聴いたこともない素朴でユーモラスなダンス。思わず吹き出す。
あれあれと目が丸くなっている間に終わってしまうのだが・・・。
そしてシフがモーツァルトの「魔笛」のパパゲーノのフルートと呼んだ
上昇音階(8:05)がこれまた差し込まれにやり。
ケンプ独自の演奏。愉しくかっこよくて粋だ。

録音はベルリンのUfaスタジオでのセッション。
あまり聞きなれない場所だが映画音楽の収録などに使われたようだ。
響きは美しい。
鮮度はさすがに落ちるがDGらしく派手さはないがしっかり綺麗に録れてる。

14:31  12:05  9:26   計 36:02
演奏   粋S    録音  88点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 リヒテル(60)

2017.06.13 (Tue)
リヒテル1ミュンシュ
リヒテル(p)/ミュンシュ/ボストン交響楽団(60、RCA)は包容力。
これはピアノよりもオケに言える。
若書きのはずのこの協奏曲のスケールの大きさに驚くのは
音場を捉えた優秀録音のせいばかりではない。

リヒテル(1915~97)は1950年代まで西側に行けず「幻のピアニスト」だった。
父親がスパイ容疑で当局に銃殺され母親はすでに別の男と西独にいたため、
ソ連に未練のない彼を西欧に出したら亡命してしまう懸念を持ったからだ。

「雪解け」の時期にソ連に行ったグールドやクライバーン、ミュンシュが
彼の地でリヒテルを聴いて衝撃を受けて帰ってくるなど話題だけが先行した。
クライバーンとリヒテル

1960年初めて米国ツアーを許されたリヒテルの西側デビュー盤の一つがこれ。
リヒテルとミュンシュ
ボストンでコンサートが開かれそのあと同じメンバーでセッション録音された。
リヒテルはこのミュンシュ&ボストンのコンビに痛く感激した
(その前にシカゴで共演していたライナーとはウマが合わなかった)。

第1楽章は実に堂々。ゆるがせにしないテンポ。巨大な神殿のような安定感。
ピアノも美しくも悠然と進む。両者のスリリングな競奏というより巨大なモーツァルト。
12:44から始まるカデンツァはベートーヴェン作曲の3種のうち一番長いやつだと
思って聴いていると16:03に突如終了する。あの終わりそうで終わらない
長大なカデンツァの最初に終わりそうなところでぶった切ってしまったようだ。
確かにこのカデンツァの5分は長すぎるので気持ちはわかる!
リヒテルのタッチは力で押さない。

第2楽章はふかふかのベッドで羽毛に包まれるよう。ロマンティック。

第3楽章も慌てず騒がず立派で深い。
ただ、このロンドにしてはピアノは少し大人しい感じも。

リヒテル衝撃の西側デビュー盤を期待したところだが
ミュンシュの正攻な指揮ぶりに惹かれた。
Charles-Munch.jpg

なお同時期に録音された併録のピアノ・ソナタには圧倒される。

録音はボストン・シンフォニーホールでのセッション。
当時のRCAの優秀な録音陣によるもの。
ホールの広々感と煌めくピアノとマッシブなオケが捉えられている。
トッティでの飽和感もぎりぎりセーフ。

16:20  11:41  8:40   計 36:41
演奏   A    録音  87点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 ゼルキン(62)

2017.06.08 (Thu)
ゼルキン皇帝
ゼルキン(p)/バーンスタイン/ニューヨークフィル(62、SONY)は
血を見るバトル。
何枚か聞き比べてやはりこの演奏に漂う気迫が尋常でないのを確認した。

『皇帝』は曲が「立派」すぎて威圧的でそんなに得意でないのだが、
ここまで開きなおってやってくれれば言うことなし。
柔らかな美しさはないが、最近ほとんど見ないピュアな覇気がある。
「爆演」かもしれないがゼルキンもバーンスタインも本当に凄ましいのだ。

第1楽章冒頭のバァーン!!からピアノの硬質な音が上下したあと、
オケが負けじと競い始める。ニューヨークフィルが対抗心メラメラ。
アクセントが強く低弦がゴリ押す。ブラスはぶっ放す。
そうなるとピアノも一歩も引かない。
バンバン撃ち合う。なんじゃこりゃ!!!
静まったところでも異様な緊迫感が漂っている。
ゼルキンってこんなに唸る人だったかと思うほどウーウー言っている。
serkin.jpg
青年バーンスタインは全く構うことなく還暦オヤジに襲い掛かる。
Leonard_Bernstein.jpg
容赦なし。テンポは必然的に速くなる。

第2楽章は逆にゆったりだが分厚さは変わらない。
このうねる様な感触はバーンスタインのものだ。
ピアノは強く臨界点一歩手前。

終楽章に入るとまたもやゼルキンの強打で耳が痛い。
当然オケがまた目覚める。なんでこう挑発するのか?
男ゼルキン絶好調でバリバリ弾きまくる。
終結に向かい渦巻くオケ。ギラギラ感満載。

この盤は世の中的にどのような評価なのか知らない。
こんなのまともなベートーヴェンではない、という人が
いてもおかしくない。
しかしこの真剣勝負は尊敬に値する。

録音はマンハッタンセンターでのセッション。
響きが大きいが巨大さ、豪快さならここだ。音響から少しハイ上がりに
なるところが緊張感のスパイスにもなってしまっている。

19:33  8:45  9:59   計 38:17
演奏   爆S   録音  88点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 バーンスタイン(60)

2017.06.07 (Wed)
バーンスタインPcon1
バーンスタイン(p&指揮)/ニューヨークフィル(60、SONY)は才人の面目躍如。
ロマンティックで愉しい。
「第1番」はバーンスタインのピアノ弾き振りレパートリーの一つ。
バーンスタインピアノ2
1970年ウィーン芸術週間で「フィデリオ」を振る合間にこの曲でコンサートをやっていた。
その時の模様はTVで放送され、バーンスタインは
「ベートーヴェンはウィーンのもの。私はみなさん(VPO)にお任せするのみ」
と語っていたが、そんなことはない。しっかりバーンスタイン流だった。
バーンスタインVPO

第1楽章の冒頭のオケは音場の広さもあって、この曲の想定を遥かに超えるでかさ。
そこに悠然とバーンスタインのピアノが乗る。大柄なタッチながらよく歌う。
カデンツアはキース・ジャレットを聴いている感じでもある。実に能弁雄弁。

第2楽章は思いがこもり情緒纏綿。

第3楽章は活き活きノリノリ。
巨大なオケの響きが少しミスマッチだが、ピアノはスゥイング。
『ティコ・ティコ』の音楽が流れだすと体を大きく揺らしながら笑顔で弾いている(と思う)。
チャーミングなオケの合いの手で幕を閉じる。

録音はマンハッタンセンターでのセッション。
この場所特有の響きの大きさはこの曲ではちょっと。
ただし、オケ、ピアノともに伸びはよく、強音でも潰れない当時の優秀録音。

18:32  11:16  8:32   計  38:20
演奏   愉   録音 87点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ロール(95)

2017.06.06 (Tue)
pcon15ロール
ロール(p)/シェリー/ロイヤルフィル(95、RPO)は密かな愛聴盤。
速めのテンポで軽やかで粒立ちよく実に気持ちがいい。
英国コンビらしくノーブルで表情に気負った癖がないのもいい。

ロール(Michael Roll 1946~)はイギリスのピアニストで17歳にしてリーズ国際
ピアノ・コンクールの覇者となった(1963年2位はクライネフ)。
因みにこのコンクールはルプー(69年)ペライア(72年)が第1位、内田光子(75年)が
第2位などになっている。
この人の両親はウィーン出身だがユダヤ系のため英国に来たのだろうか。
そんな由来もあってか独墺物を中心演目にしてきたが、近時は教鞭をとっている。
マイケルロール

また本盤の英国の指揮者のシェリー(Howard Shelley 1950~)自身高名なピアニストで
ひょっとするとロールよりも沢山ピアノのCDが出ているのではないか。
しかしここでは完全にサポートに回いい指揮ぶり。
Howard-Shelley.jpg

第1楽章冒頭の序奏を聴くと刈り込まれたオケが爽やかでよい予感。
そしてピアノの登場。
颯爽としたテンポで転がる。ハイテクで全くもたつくことない。
軽快なのだがフレーズごとの表情はきっちりで単調ではない。

第2楽章は朝の音楽。空気感が澄んでいてピアノが凛としている。

第3楽章いきなり飛び出すピアノの多彩な表現を聴いただけで
この人は只者ではないと思う。ロンド・アレグロの中の一瞬の隙に陰影。
2:31から始まるラテン音楽『Tico Tico No Fuba ティコ・ティコ・ノ・フバー』も
ふざけすぎないがノリがいい。
(ティコティコは⇒こちらで試聴
終結に行くに従いオケも好調。

録音はC.T.S. Studios, Londonでのセッション。
このロイヤルフィルシリーズで好録音を連発している場所。
抜けよく響きの塩梅もよい。ピアノもキラキラ綺麗。

13:46  11:12  8:23   計 33:21
演奏   S    録音  94点

ベートーヴェン 交響曲第7番 バレンボイム(99)

2017.06.05 (Mon)
バレンボイム78
バレンボイム/ベルリン・シュターツカペレ(99、TELDEC)は
ドスコイ充実の極み。
ピリオド奏法に全く目もくれずこのオケを信じわが道を行く。

バレンボイムには10年前のベルリンの壁崩壊記念演奏会ライブがある。
あの興奮に憑かれた演奏に比べ、演奏時間は反復実行も加え6分長くなり、
じっくりどっしり型の演奏が出来上がった。

第1楽章ギュッと固まった響き。弦は流麗というよりゴリゴリザクザク感を残す。
木管は清らか。金管は逞しくティンパニは硬質に打ち込まれる。
バレンボイムの解釈は恣意的でなく正攻法で力強い。
変哲ないのにここまで素晴らしい演奏になったのは、
指揮者には申し訳ないが低重心のオケの威力。
いや、ここまで立派な音を出させた指揮者の力量というべきか。

第2楽章も遅いテンポでひたひた迫る。音響が地に足がついている。
ブルドーザーの行進。

第3楽章も軽はずみにならない。
とはいえ、ここでは粘性が高いのが気になる。

終楽章はテンポは普通なのだが確信犯的にリズムの刻みを
前の音にかぶせるような処理。これにより舞踏感を出しているよう。
しかしながら相変わらず重い音なので独特の雰囲気を醸し出す。
最後の追い込みもさすが。スタジオ録音だが燃焼してる。
最近の小手先の軟な演奏とは違うぜ!と演奏が言っている。
Barenboim.jpg

録音は旧東ドイツ側にあった放送局スタジオでのセッション。
ここの響きがまことによろしい。音が止むときに残響も綺麗。
マルチマイクで録りながらうまくミックスしてこのオケの最良の音を伝える。

14:27  9:37  9:37  8:35   計 42:16
演奏   A+    録音  94点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 デミジェンコ(95)

2017.06.04 (Sun)
デミジェンコ23
デミジェンコ(P)/ラザレフ/ロンドンフィル(95、hyperion) は優しく深い。
デミジェンコ(1955~)はウクライナ系ロシア人。
彼はモスクワ音楽院で学んでいるときロシアの叩きつけるようなピアニズムに
反発していたようだ。むしろジョン・フィールドの流れを大事にガンガンバリバリでなく
弱音、まろやかさ、深さで勝負する。

彼は1978年のチャイコフスキーピアノコンクールで第3位。
この時の優勝者がプレトニョフ。対照的だ。
むしろショパンコンクールに照準を絞った方がよかったのかと思わせる。
なお、この人はイギリスのハイペリオンと専属契約してしまっているので
マイナーなイメージだが素晴らしいピアニスト。
Demidenko.jpg

たまたまyoutubeで彼の演奏するこの曲の映像を見つけた。
スペインでの2015年のライブ (SinfonicadeGalicia)

60歳の演奏ということもあるかもしれないが輪郭はしっかりなのだが
実にまろやかで、我々がイメージする旧いタイプのロシアのピアニストでは無い。
プロコフィエフの外見上のモダニズムというより
聴いたことのないような詩的で太い演奏。そして静かだがしっかり主張している。
このビデオに感動してしまったので本盤を取り寄せた。

そしてこの映像の20年前の1995年録音のこの演奏も既に同じ方向性だった。
第1楽章の序奏のアンダンティノは幻想的に進み、アレグレットに入ると
逞しくなるのだが決して大柄に叩かない。
第2楽章は20年後のビデオより速いテンポで軽やかだが濁らない。
第3楽章は白眉。遅いテンポは既にこの時から。隈取りしっかりしながら
踏み込んでくる。どんどん巨大になる。心に迫る。
終楽章はオケも好調で緩急つけながら。ピアノは冷静と情熱。

彼はコンクールの審査員を通じて日本のピアニストも多く見てきている。
その時のインタビュー記事があったので抜粋を転載させて頂く。
『日本には才能ある若い演奏家が多くいますね。あるところまでは大変優れた
成果を挙げますが一つだけ足りないとすればそれはコミュニケーション。
日本では伝統的に、自分の感情や意見を人々に向けて発信することを
あまり良しとしない傾向があります。しかし音楽とはコミュニケーションの芸術です。
ピアノも楽譜も物にすぎません。それを本物の音楽をするためには、
感情を出してコミュニケーションすることが大事です。
もちろんこれは一朝一夕に変えられるものではありませんし、
乗り越えるには多くの時間が必要です。
しかし世界には、勇気を振り絞り想像力を駆使して壁を乗り越え、
劇的な変貌を遂げたアーティストが何人もいます。
自分がこう感じるという内面の感情を人々に伝えることは、
何ら悪いことではありません。ただ、勇気を出せばいいのです。』

これは何も日本人ピアニストだけのテーマではない。

録音は場所の記載は無いがセッション。
このレーベルらしい誇張の無い音。
アビーロードのような感じもする。ピアノはそれほどオフではなく
全奏ではオケが包む。実演に近い印象。

12:26  2:38  8:33  11:41   計 35:18
演奏   S   録音  91点

バッハ ナチュラリー ジェンセン(p)(96)

2017.06.03 (Sat)
ナンシーヤンセン
ジェンセン(p&cem)(96、NorthSound)は「音楽と自然の調和」というシリーズの一枚。
クラシックをBGM化したものは多々あり、当方も休日や移動の中でよく流して癒されている。
そうした中でもこのシリーズは自然音と鍵盤楽器が巧くマッチしている。
また、音が良質でサラウンドで聴くと一瞬にして森や高原や海にワープする。

このシリーズでは「ベートーヴェン」「モーツァルト」「ショパン」「ドビュッシー」などが
あるがこの「バッハ」が一番好き。
ベートーヴェンでは人間や意志を感じる。自然と音楽がこれほどマッチするなんて
やはりバッハは偉大、なんて言うと不謹慎かしら。

本盤の構成は4部に分かれており、最初に自然音が流れ始め、そこに音楽が乗る。
メニューは下記。
Ⅰ 「せせらぎと鳥のさえずり」
  ① Prelude In C
  ② Sheep May Safely Graze
  ③  Italian Concerto, 3rd Movement
  ④ Jesu, Joy Of Man's Desiring
Ⅱ 「海辺にて」
  ⑤ Arioso In G
  ⑥ Prelude In F Minor
  ⑦ Air On A G String
Ⅲ 「高原の夕映え」
  ⑧ Minuet In G, No. 114
  ⑨ Italian Concerto, 1st Movement
  ⑩ Minuet In G Minor, No. 115
  ⑪ Fugue In C Major
  ⑫ Fugue In C Minor
  ⑬ Minuet In G, No. 116
Ⅳ 「雨、遠雷」
  ⑭  Prelude In F Minor
  ⑮ Italian Concerto, 2nd Movement
  ⑯ Prelude In B Flat Minor

演奏はナンシー・ジェンセン女史がピアノとハープシコードを弾き分けている。
趣旨に沿った清潔な演奏だと感じる。
nancy jensen

なお、本盤は既に現役でないかもしれない。
純粋なクラシックの棚でなく「その他」「イージーリスニング」の棚でよく見かける。

59:13
演奏  癒   録音  95点
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