クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

指定期間 の記事一覧

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 グティエレス(90)

2017.05.13 (Sat)
CHAN8889.jpg
グティエレス/N・ヤルヴィ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(90、CHANDOS)は
気迫と雰囲気の両立。

直木賞と本屋大賞のダブル受賞した恩田陸作の『蜜蜂と遠雷』。
蜜蜂と遠雷
この作品は読み方によって風間塵、栄伝亜夜、
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、高島明石それぞれが主役になる。

その一人、栄伝亜夜にとってみれば覚醒・復活の物語。
天才少女ピアニストだった彼女が13歳の時母親の急死のショックでコンサートを
演奏開始直前の舞台上でキャンセルしてしまう。
数年後20歳で芳ヶ江国際ピアノコンクールの本選でドタキャンした曲で再起。
その曲がなんとプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番!
3番でなく2番。
そもそも13歳でこの曲をコンサートプログラムに載せること自体異常な感じだが
コンクールの本選の課題候補曲にこの曲があることも凄い。
モデルになった実際の浜松国際ピアノコンクールもそうなのかしら?
ショパン・リスト・グリークあたりだと陳腐ということなのか。
それにしても実演でも滅多にお目にかかれない曲。
この作家がどのような思いでこの曲を登場させたのか。
そして栄伝亜夜が一体どう演奏したのか想像が駆け巡った。

曲はプロコフィエフ(1891~1953)がまだサンクトペテルブルグ音楽院
在籍中の1913年の作曲の若書き。
第1番に続いて作曲されたが、両曲ともにプロコフィエフの天才の証。
第2番は親友の死と絡んでいるとも言われるが鬼気迫る音楽。
冒頭から最後までモダニズムを超えた怒り悲しみ絶望が覆う。
いかにも青春だ。
人生をまだ達観してみることなどできない嵐の「真っ最中」。

さてこの演奏、まずオラシオ・グティエレス(1948~)のピアノが素晴らしい。
Gutierrez.jpg
キューバ出身で1970年チャイコフスキー国際コンクールで銀メダルを受賞した
ヴィルトゥオーソ。この曲が得意らしい。テンシュテットとの共演ライブもある。
強靭で深い打鍵でまさに技巧派なのだが、一本調子にならないリリシズムも感じる。
この曲にうってつけ。

そして更に素晴らしいのが指揮とオケ。これはこの曲最高の出来ではないか。
ネーメ・ヤルヴィの鋭利とクールな抒情がそもそもプロコフィエフにぴったり。
そして全てを受け止めるコンセルトヘボウ。
とかくキーンなこの曲を深い音で包み幻想性を加味する。
全く力まないのに底からの迫力がある。

録音は本拠地コンセルトヘボウでのセッション。
下手すると散々録音しているフィリップスよりいい音ではないか。
この優秀なホールトーンを取り入れたうえで、
ピアノを粒だたせ、キラキラさせ、刺激と夢のある音にした。

10:56  2:26  6:38  10:53   計 30:53
演奏   S   録音 95点
 | HOME |