クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

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ベートーヴェン 交響曲第8番 ポルセリン(1999)

2017.03.20 (Mon)
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ポルセリン/タスマニア交響楽団(1999、ABC)はいろんな意味で愉しめた。

まずタスマニアである。
豪州の一部(南東部)、南極海に浮かぶ北海道より少し小さな島。
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私の中では失礼ながらタスマニアデビル、タスマニアタイガー。
Sarcophilus harrisiithylacine.jpg 
州都はホバート。人口20万人弱。
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ここのオケは初めて聴くが全く不満はない。
オーストラリアのオケはアデレード交響楽団(ヴォルメル指揮)のシベリウスに
感心したが、ローカルオケといえども水準は高い。
47人と編成は小さいが速いパッセージを難なく乗り切り時に迫力がある。

ポルセリン(ポーセリン?、ポルセライン?:David Porcelijn:1947~)は
オランダの指揮者・作曲家。欧州・豪州が活動の場とのこと。
現在は蘭・豪で教鞭をとっているようだ。
porcelijn_interview2.jpg
あまり情報がないので演奏で判断するしかない。
演奏スタイルはモダン楽器によるベーレンライター版以降のきびきびしたもの。
ノンヴィブラートに近いがピリオド奏法を完全に模倣したものではない。

そしてなんといても特色はフォルテピアノを通奏低音として採用していること。
バロック時代はバス声部に絡んでチェンバロが奏されていたが、
1800年頃にはほぼこの習慣は廃止されたといわれている。

ハイドンの最後の交響曲(1795年)初演では作曲者が通奏低音でリードしたし
(ハイドンの交響曲第98番は通奏低音があえて記譜されオマージュのよう)
ベートーヴェンの交響曲第1番(1801年)でも初演時は入っていたようだ。
しかし、この全集は第1番のみならず第9番(1824年)まで全てに入っている!

ただ、ここでのフォルテピアノは奇抜さを演出するためではない。
この全集で通奏低音担当の豪州の音楽学者ランカスター(Lancaster、1954~)が
1840年代までフォルテピアノが用いられていたことを発見したからという。
ランカスター
これはきっと通説と違うのだろうし、分厚い響きをもつこの頃の交響曲で
それが鳴っていたとは俄かに信じがたいが、絶対なかったともいえない。
ランカスター自身はオーストラリアでは高名な奏者で賞をいくつも獲得しており
単なる色物師ではない。ただ、録音上では初めての試みではないか。

とにかく聴いてみる。
第1楽章少人数オケが飛び出すと確かにポロンポロンとかすかに聴こえる。
協奏曲のようにはっきりしたパートを持ったり目立ちはしないが装飾音的に。
それよりもこの演奏が素晴らしいことにすぐ気づく。
反復を実行して8分を切るスピードなのだが実に軽やかで必死感がない。
モダン楽器ということもあり音はマイルド。
そしてこのかすかに聴こえるフォルテピアノが愛らしく緊張感を和らげている。
一方ホルンなどここぞというときにはしっかり強奏し主張する。

第2楽章になると通奏低音がより自在な動きを見せるが、
音楽の勢いを邪魔することはない。

第3楽章はテンポは穏やかで長閑さが出る。
フォルテピアノは目立たないがバックでアルペッジオしてたりお茶目。

終楽章は7分を切るが血眼になるようなものでなく典雅さと迫力をもつ。

この演奏はフォルテピアノという特色を持たなくとも非常に優れたもの。
それに通奏低音という新鮮な魅力が加わり成功した演奏だと思う。
(もちろんフォルテピアノは邪道と思う人もいるだろうが・・・)

録音はキャンベラ音楽学校のLlewellyn Hallでのセッション。
Llewellyn1_20170319232941865.jpg
この全集はオーストラリアの各地で録音され響きが一様ではない。
ここはそれなりに大きさを感じるホールだが各楽器の明晰さも確保。
少人数の明快さがあるが終楽章など大きなスケール。
ABC(オーストラリア放送)の録音はいいものが多い。

7:55  3:37  5:27  6:47   計 23:46
演奏   愉A+    録音  93点
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