クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

指定期間 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第7番 ワルター(58)

2017.03.31 (Fri)
ワルター7
ワルター/コロンビア交響楽団(58、SONY)は緩い。
少し体調が悪かったのでないかと心配になる。
とにかく音楽に覇気がない。集中度や凝縮といったものから離れる。
ふわりとした優しい歌う「7番」といえば聞こえがよいが
これはちょっと中途半端。

指揮の緩さがオケにも反映したのか何か軽いおもちゃ的響きで安っぽい。
全体的にはテンポは緩やかだが終楽章だけは速い。
ただ、せかせかしているだけで迫力は感じない。
ティンパニも芯がないのもマイナス。

録音はハリウッド、アメリカン・リージョン・ホールでのセッション。
オケの人数が少ない割に量感があるのは
低域を膨らましたような録音が影響?

13:01  10:00  8:17  6:43   計  38:01
演奏   B+   録音  85点

ベートーヴェン 交響曲第7番 クリュイタンス(57)

2017.03.30 (Thu)
クリュイタンス7
クリュイタンス/ベルリンフィル(57、EMI)は痺れた!
クリュイタンスの全集はずいぶん昔に購入していた。
しかし、この人は偶数番号指揮者と勝手に思い込んでいた。
ノーブルで温和な外見のベルギー人指揮者という先入観。
クリュイタンス像
この演奏のフランス版LPには交響曲第7番『ダンス』
(↓)なんて勝手に副題がついていた!
クリュイタンスダンス交響曲

ところがどっこいそんな軽い演奏ではない。
これは虚仮脅しではない真正迫力。
むろん立役者は鋼のベルリンフィル。
カラヤン前にすでにこんなに強面だったのだ。

冒頭楽章どっしりした始まり。
木管のハーモニーに酔っていると、弦が図太く押し寄せる。
ピアニッシモでも凄味があるので恐ろしい。
テンポはゆっくり目なのだが緊張感が辺りを払う。

第2楽章は速くも遅くもないがとにかく低重心。
クリュイタンス/パリ音楽院では絶対出ない音。
アゴーギクでドラマ性を打ち立てるという小細工は不要。
ひたひたと押し寄せる。

第3楽章も軽くはない。地団駄踏むような演奏。

終楽章は驚いた。リピートなしで7分間。
少し速めなのだが重量感が只者でない。
いちいちアクセントがダメを押す。ティンパニの強打が効く。
弦の掛け合いでは低弦が右からゴオ~~。
殆どインテンポでバリバリ。このひたひたと迫る洪水音は最近聴かれない。
最後は微妙なアッチェレがかかり汗が出る。

ブラインドで聴いたら絶対クリュイタンスと当てられなかった。
虚心に聴くことが必要だと思い知らされた一枚。

録音はグリューネバルト教会でのセッション。
コンサートホールやスタジオとは違う響きを纏う。
CD化しヒスはあるがかなり鮮明で広がりのあるステレオ最初期の優秀録音。
低域のどっしり感や出過ぎない金管。迫力ある音。

13:29  9:24  8:20  7:01   計 38:14
演奏   A+    録音  86点

ベートーヴェン 交響曲第7番 カラヤン(51)

2017.03.29 (Wed)
karajan1951PO7
カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団(51、EMI)は安定系カラヤン。
41年の「第7」の初録音から10年、ウォルター・レッグから1945年創設のPOを
与えられベートーヴェン交響曲録音を開始。その第一弾がまたもや「第7」。
そういえばDECCAのジョン・カルショウと組んだ時、VPOと録音した
ベートーヴェンも「第7」(1959年)だった。よほど自信のある曲なのだろう。
(↓1951年のカラヤン)
karajan1951.jpg

さて、この演奏10年前のSKBよりもとにかくオケが立派。
よってカラヤンの目指すものができている。
この頃のPOは戦後の混乱期にレッゲが英国の名手をかき集めてきただけあって
たぶん当時NO1の英国オケ。フルトヴェングラーやトスカニーニも客演している。

第1楽章から風格があり美しさがにじみ出る。
デニス・ブレインだけではなく木管も全てよい。弦も実に重厚。

第2楽章は流麗感が増している。
当時はフルトヴェングラーが存命中でその濃厚な演奏が受けていた時代だが
カラヤンの音楽づくりはそれとは一線を画す。ある意味まっとうだ。
楽想の転換はなめらかで自然で違和感がない。

終楽章は7分と彼の正規録音の中では一番遅い、というか安定的。
強引な引き回しはせずしっかりと鳴らす。

録音はロンドン・キングスウェイホールでのセッション。
弦がしっかり聴こえるがティンパニなどはこの曲ではもう少し明瞭にしてほしい。
ノイズはなく聞きやすい。

12:38  9:05  8:39  6:57   計 37:19
演奏   A-   録音  75点

ベートーヴェン 交響曲第7番 カラヤン(41)

2017.03.28 (Tue)
カラヤン71941
カラヤン/ベルリン・シュターツカペレ(41、DG)は戦時下33歳の挑戦。
手探りで始まり最後は直球ど真ん中。

カラヤン(1908~89)の長い盤歴の中で最初の正規録音は1938年12月の
「魔笛」序曲。本録音はそれから2年半後同じコンビで独ポリドールにより
録音されたもの。カラヤン初のベートーヴェン録音がこの「第7」。

第1楽章は後年の録音よりじっくり抑揚をつけて歌われる。
フルトヴェングラーのような緩急自在というわけにはいかず少しぎこちない。

第2楽章を聴くとカラヤンの特質が非常によくわかる。
テヌートを駆使しながら音楽を進行させるが、
フルヴェンのような耽溺型ではない。弦の動きは室内楽的。

第3楽章はリズムが今一つ乗り切れていない。

終楽章は前のめり。アクセントは明快に打つが微妙なずれを惹起させている。
ここでは表情を丹念につけるというより直線的。
特に後半はトスカニーニばりに畳み掛ける。

ヒトラーにお気に入りの指揮者とは言えなかったカラヤン。
よって、若き日はメジャーオケを振ることはあまりなかった。
しかし戦後、フルトヴェングラー亡き後念願のベルリンフィルを手兵にし
増員したオケで威圧的なまでのベートーヴェンを作り上げていく。

録音はベルリンでのセッション。驚くほど音がいい。
1941Herbert_von_Karajan.jpg
SPノイズも取り払われておりリマスターもよいのだろう。
残響は少ない分各楽器がくっきり聴こえる。
弦の分離はよい。低域やティンパニは遠い。

12:48  9:10  7:56  6:28   計 36:22
演奏   初   録音  74点

ベートーヴェン 交響曲第7番 フルトヴェングラー(43)

2017.03.27 (Mon)
フルトヴェングラー57BPO
フルトヴェングラー/ベルリンフィル(43、DG)は戦時下の熱狂。
終楽章の終結は狂気すら感じる。

第二次世界大戦は、言うまでもなく1939~45年まで
日独伊三国同盟を中心とする枢軸国陣営と、イギリス、ソビエト連邦、アメリカ、
中華民国などの連合国陣営との間での全世界的戦争。

この演奏はその最中1943年10月30・31日11月3日のベルリンでの記録。
ドイツは同年にはスターリングラード戦で敗れ劣勢濃厚な時期。
とても演奏会などやってられなかったのではないかと思うが
バイロイト音楽祭も含めベルリンフィル、ウィーンフィルなど盛んに演奏会を続けた。
勿論これはヒトラーによる国威発揚政策として推進されたのだが、
空爆を受けながらこのような水準の演奏を続けていたのは驚く。
旧フィルハーモニー
芸術家が国家政策と無縁でおれなかった時代の記録として聴くと
終楽章の怒りにも似た疾走は悲壮だ。

第1~3楽章までの劇的なアゴーギクなどフルヴェン節満開。
第2楽章は演歌を聴くような大袈裟感があるがこの時代の聴衆は
浮世を忘れるためこうした演奏を求め指揮者の資質がそれに合致した。

録音はベルリンの旧フィルハーモニーでのライブから編集。
シューボックス型で現在のフィルハーモニーと全く場所も形状も異なる。
音響はよかったようだが、この演奏の3カ月後連合国軍の空襲で崩壊してしまう。
csm_mobil-zerstoerte-philharmonie.jpg
この会場の録音としても最期の悲鳴のような記録。

当時のライブとしては鮮明な音。低域の厚みなどは少ないが。
結構響きが多いのはもともとなのかリマスターで付加されたのかは分からない。
トッティでティンパニがフォルテッシモでロールすると会場に渦が巻く。
これが爆音のように聴こえるのは気のせいか。

12:34  9:41  8:17  6:33   計 37:05
演奏   戦   録音  72点

ベートーヴェン 交響曲第7番 フルトヴェングラー(50)

2017.03.26 (Sun)
フルトヴェングラー全集
フルトヴェングラー/ウィーンフィル(50、EMI)は言うまでもない歴史的有名盤。
個人的にはフルトヴェングラーって凄いんだ、と気づかされた音盤。

以前は聴き過ごしていたが当方保有CDでは終楽章3分半頃、
音楽が静まった時に女性の声や紙をめくる音が聞こえる。
SPを再生しながらLPマスターテープを作る際に混入したのかも。
これも今となってはご愛嬌。
とにかく貧しい音なのにこれだけ人を興奮させる音楽を作るのは
やはり驚くべきこと。

終楽章のコーダでウィーンの低弦が唸りをあげる中
全体が加速して行くマッシブな迫力はピリオドには絶対出せない効果。
歴史考証的にこの演奏スタイルが正しいかは疑問だが、
正しいことと感動は別物である。

この演奏は第1~3楽章が極めて遅いテンポでどっしり深みに
入り込むようなつくりのため、終楽章の狂気が浮き立つ。
フルトヴェングラーは天性の演出家だ。

録音はウィーン・ムジークフェラインでのセッション。
各種復刻盤がだされているので評価は色々だろうが
現在聴いているのは音が比較的いいとされるイタリアEMIの復刻CD。
ヒスゴロは止むをえないが音割れなど無くまとまった音に聞こえる
(LPでは低弦のコル・レーニョ的バキ音がもっと生々しかったような記憶)。
音が静まった時に雑音が目立つが盛り上がりでは雑音がマスクされる。

12:54  10:14  8:37  6:51   計 38:36
演奏   唸   録音  70点

モーツァルト 交響曲第41番 ホグウッド(82)

2017.03.24 (Fri)
hogwood4140.jpg
ホグウッド/エンシェント室内管弦楽団(82、L'OISEAU-LYRE)は端正。
20世紀ロマン的威容を誇る「ジュピター」とは無縁。
ホグウッド(1941~2014)の壮年期の記録。
christopher-hogwood.jpg

冒頭の出だしから全く力みがなく、ある意味淡々と進む。
終曲までこの調子だ。現在までのピリオド群の中では興奮とは離れたところにある。
テンポは遅くも速くもなく、インテンポ。まさに彼らのモーツァルト。
聴いた後に強烈な感動はないが爽やか。
この曲でここまで純水的な演奏もないかもしれない。
一方では刺戟が少なく退屈ともいえる。

しかしクリスタルな響きでこの曲にこれほどの美しさがあったのだと気づく場面もある。
フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、
ヴァイオリン2部14(第Ⅰ8、第Ⅱ6)、ヴィオラ4、チェロ2、コントラバス2の弦楽部は
現代オケの半分。この少人数の有利さをそのまま生かしている。

なお、このコンビが2001年に東京で演奏した際はもっとアグレッシブな表現で
テンポも速かった。しかし、この録音の頃は古楽器演奏の黎明期。
何か演奏上の特徴を打ち出さなければならないという観念はなかった。

録音はロンドンのキングスウェイホールでのデジタル・セッション。
recording-in-the-80s.jpg
編成が小さいため窮屈感はなく澄んだ音で録れている。
低域成分は多くなくスリムだがうるさいことはない。

11:01  9:14  5:54  11:50   計 37:59
演奏   A    録音 91点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ネルソン(2005)

2017.03.23 (Thu)
ネルソン全集
ネルソン/パリ室内管弦楽団(2005、Ambroisie )はジャケ買い正解。
ベートーヴェンの交響曲全集でよもやそういうことをするとは思わなかった。
中の5枚組はそれぞれパリの夜の風景。

アンサンブル・オルケストラル・ドゥ・パリ、たぶん初対面ではないか。
1978年仏文化省のサポートのもとに設立。43名という人数でモダン楽器を操り、
このベートーヴェンでは対向配置、ピリオド的奏法採用。
この程度はよくある話だが、このオケの音が気に入った。
独自のザクザク感があり、これは生々しい。
録音の威力もあろうが非常に凝縮された力感を感じる。
また、太鼓がドスンドスンと低域からくるものだがら一層どっしり感がある。
フランスだから軽いという音ではなくヤルヴィのドイツ・カンマーフィルよりも図太い音。

指揮者のジョン・ネルソン(1941~)はコスタリカ出身、アメリカ人。
Nelson-John.jpg
このオケの音楽監督は1998~2008年の10年。その間の成果がこのベートーヴェン。
解釈的には持って回ったようなところはない。
ヤルヴィが手練手管だとすればこちらは一途だ。
ヤルヴィやシャイーのように仕掛け満載より素直に最近のベートーヴェンらしい
アプローチを聴きたいならむしろこのフランスのオケのほうがよいかもしれない。
なお、指揮者の助手としてアレキタンダー・マイヤーという人が記載されているが
何をしたのか不明。

録音はパリのIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)のスタジオセッション。
ircam.jpg
ピエール・ブーレーズが設立した機関のホール。
響きはあまりなくとにかく厚みのあるしっかりした音が好ましい。分離もよい。

8:22  3:49  4:48  6:48   計 23:47
演奏   A+    録音  95点

ベートーヴェン 交響曲第8番 P・ヤルヴィ(2004)

2017.03.22 (Wed)
ヤルヴィ38
P・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィル(2004、RCA)は計算されたマッド感。
ベーレンライター+小編成モダンオケ+ピリオド奏法による激しい演奏。

この第8番、現代フルオケによる重厚かつ猪突猛進ド迫力な演奏は
1999年のバレンボイムで行き着いてしまった。
(2002年のラトル盤は超えられなかった)

21世紀に入ってからはプルトを絞り軽量化したオケのバトルに。
2002年のノリントン盤はライブで熱にうなされたような疾走感。
こちらはヤルヴィ、トゲトゲぶつかり合うのだがしっかりコントロール。
だからと言って優等生的というのではない。
音楽の美感を損なうリスクはしっかり冒してまで挑んだ演奏。
とにかく弦のアタックが激しい。しかも低域の頑張りは凄味がある。
木製バチのティンパニも爆発音のよう。
音の意識的なダイナミクスの幅が大きい。

しかし、音楽の世界も記録を塗り替えるようなところがある。
ヤルヴィの演奏に驚いていたら、今度はシャイーがやらかしてしまう。
しかもあちらはオケがゲヴァントハウスときている。

もちろん、このヤルヴィの演奏にも独自の魅力はある。
クラシックっぽくないビート感というのか、音楽が高速で走るときに
ンチャンチャと刻みながら猛烈な前進をする。脈動というのだろうか。

ただ、これまたシャイーと同じなのだが何回も聴いていると
強引ともいえる表情がくどくなることもある。

録音はベルリン、ファンクハウス・スコアリング・ステージでのセッション。
Bremer_Philharmoniker_in_the_Funkhaus.jpg
残響は少なく鋭い音。量感・低域成分は多くない。
細身ながら芯のある音。

8:05  3:50  5:30  6:43   計 24:08
演奏   A  録音  94点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ポルセリン(1999)

2017.03.20 (Mon)
Beethoven78_ABC.jpg
ポルセリン/タスマニア交響楽団(1999、ABC)はいろんな意味で愉しめた。

まずタスマニアである。
豪州の一部(南東部)、南極海に浮かぶ北海道より少し小さな島。
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私の中では失礼ながらタスマニアデビル、タスマニアタイガー。
Sarcophilus harrisiithylacine.jpg 
州都はホバート。人口20万人弱。
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ここのオケは初めて聴くが全く不満はない。
オーストラリアのオケはアデレード交響楽団(ヴォルメル指揮)のシベリウスに
感心したが、ローカルオケといえども水準は高い。
47人と編成は小さいが速いパッセージを難なく乗り切り時に迫力がある。

ポルセリン(ポーセリン?、ポルセライン?:David Porcelijn:1947~)は
オランダの指揮者・作曲家。欧州・豪州が活動の場とのこと。
現在は蘭・豪で教鞭をとっているようだ。
porcelijn_interview2.jpg
あまり情報がないので演奏で判断するしかない。
演奏スタイルはモダン楽器によるベーレンライター版以降のきびきびしたもの。
ノンヴィブラートに近いがピリオド奏法を完全に模倣したものではない。

そしてなんといても特色はフォルテピアノを通奏低音として採用していること。
バロック時代はバス声部に絡んでチェンバロが奏されていたが、
1800年頃にはほぼこの習慣は廃止されたといわれている。

ハイドンの最後の交響曲(1795年)初演では作曲者が通奏低音でリードしたし
(ハイドンの交響曲第98番は通奏低音があえて記譜されオマージュのよう)
ベートーヴェンの交響曲第1番(1801年)でも初演時は入っていたようだ。
しかし、この全集は第1番のみならず第9番(1824年)まで全てに入っている!

ただ、ここでのフォルテピアノは奇抜さを演出するためではない。
この全集で通奏低音担当の豪州の音楽学者ランカスター(Lancaster、1954~)が
1840年代までフォルテピアノが用いられていたことを発見したからという。
ランカスター
これはきっと通説と違うのだろうし、分厚い響きをもつこの頃の交響曲で
それが鳴っていたとは俄かに信じがたいが、絶対なかったともいえない。
ランカスター自身はオーストラリアでは高名な奏者で賞をいくつも獲得しており
単なる色物師ではない。ただ、録音上では初めての試みではないか。

とにかく聴いてみる。
第1楽章少人数オケが飛び出すと確かにポロンポロンとかすかに聴こえる。
協奏曲のようにはっきりしたパートを持ったり目立ちはしないが装飾音的に。
それよりもこの演奏が素晴らしいことにすぐ気づく。
反復を実行して8分を切るスピードなのだが実に軽やかで必死感がない。
モダン楽器ということもあり音はマイルド。
そしてこのかすかに聴こえるフォルテピアノが愛らしく緊張感を和らげている。
一方ホルンなどここぞというときにはしっかり強奏し主張する。

第2楽章になると通奏低音がより自在な動きを見せるが、
音楽の勢いを邪魔することはない。

第3楽章はテンポは穏やかで長閑さが出る。
フォルテピアノは目立たないがバックでアルペッジオしてたりお茶目。

終楽章は7分を切るが血眼になるようなものでなく典雅さと迫力をもつ。

この演奏はフォルテピアノという特色を持たなくとも非常に優れたもの。
それに通奏低音という新鮮な魅力が加わり成功した演奏だと思う。
(もちろんフォルテピアノは邪道と思う人もいるだろうが・・・)

録音はキャンベラ音楽学校のLlewellyn Hallでのセッション。
Llewellyn1_20170319232941865.jpg
この全集はオーストラリアの各地で録音され響きが一様ではない。
ここはそれなりに大きさを感じるホールだが各楽器の明晰さも確保。
少人数の明快さがあるが終楽章など大きなスケール。
ABC(オーストラリア放送)の録音はいいものが多い。

7:55  3:37  5:27  6:47   計 23:46
演奏   愉A+    録音  93点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ヴァント(87)

2017.03.19 (Sun)
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ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(87、dhm)は真面目スタイリッシュ。
ただ響きが多すぎて彼の演奏スタイルを若干損ねているのが残念。

ギュンター・ヴァント(1914-2002)が日本で巨匠と崇められるようになったのは
いつごろだろうか。
多分1982年に北ドイツ放送交響楽団(現:北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団)
の首席に就任しブラームスの交響曲を出した頃からだろうか。
そして70年代から得意にしていたブルックナーが決定打になった。
ベームなどがいなくなった後、ドイツ本場物指揮者としてブームに。
ただ、彼は現代音楽にも精通していたように昔ながらの
本場物指揮者とは少し違う気がする。

彼のこのベートーヴェンも実に流れがよく均整がとれている。
厳しさはあまりない。全体に規範的な真面目さがある。
従来型の演奏で最近のピリオド演奏が明らかにしてきた
この曲の狂気は見えない。

録音はハンブルグ、フルードリッヒ・エーベルト・ハレでのセッション。
anfahrt-eberthalle_02.jpg
Friedrich-Ebert-Halle.jpg
もともと北ドイツ放送とドイツ・ハルモニア・ムンディ(dhm)による録音だった。
ただ、このホールはセッションで使うと響きが多すぎるような気がする。
ヴァントの音楽はもっとスッキリした音響が似合うのではないか。
ただヴァン自身響きの多い録音が好きだったのかもしれない。
ブルックナーにしても残響が次の音に重なる録音が多い気がする。

9:23  3:48  4:43  7:46  計 25:40
演奏   A-   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ショルティ(74)

2017.03.18 (Sat)
ショルティベト18
ショルティ/シカゴ交響楽団(74、DECCA)は堂々ガッシリ。
70年代のいつもながらの音圧の強い逞しい表情。迷いや曖昧さは無い。
ショルティ/シカゴSOはマーラーだろうがストラヴィンスキーだろうが
ベートーヴェンだろうがいつも同じ響きだった。
しかし、80年代以降の円熟味?を増したショルティより
この壮年期の輝かしさの方が好きだ。
solti_gyorgy.jpg

第1楽章から安定したテンポ、充実した響きで王道を行く。
ポルタメントなどの甘い表情は無く、弦は凄味を持つ。スコアをひたすら鳴らす。
ただ、切迫感などはなく余裕綽綽。

第2楽章は機械仕掛けの巨大メトロノーム。強い四角四面。
しかしよくもここまで強奏出来るものだ。
いや彼らにとってはこの強さは普通なのだ。

第3楽章も同様。微細なニュアンスで勝負しない彼らの行き方。

終楽章も慌てず騒がず、時に凄味をちらつかせながらどっしり。
ティンパニのトランジェントの良さは爽快。

録音はメディナ・ティンプルでのアナログセッション。
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全体と個々の楽器をうまく融合させた優秀録音。
低域のどっしり感が音楽を逞しくする。

10:06  4:09  5:34  7:42   計 27:31
演奏   A   録音  92点

ベートーヴェン 交響曲第8番 シャイー(2009)

2017.03.13 (Mon)
シャイー78
シャイー/ゲヴァントハウス管弦楽団(2009、DECCA)は表現主義的無窮動。
ピリオド奏法を持ちこんだモダンオケによる演奏。
だがそれよりもデュナミーク振幅の異様さと目まぐるさが際立つ。
それを面白いとみるか邪道と見るか。私は愉しんだ。
だがいつも聴きたい演奏になるかは分からない。

ベートーヴェンがこの曲に託した仕掛けをアンプリファイアする。
アップテンポかつスフォルツァンドの極大化でグロテスクともいえる再現。
反復実行しながら22分半ばで通り過ぎるこの演奏。
この半世紀でベートーヴェンの交響曲の中で
一番演奏スタイルが変わった曲ではないだろうか?

冒頭のダッシュから骨がぶつかりあうような音。
金管が入ると特に軋みながらオケが悲鳴を上げる。
容赦ない鞭がバシバシ入る。

第2楽章も強弱の落差が激しく疾風怒濤感がある。

第3楽章も長閑な郵便馬車のラッパ感は無い。

終楽章など音価がばさばさ切り詰められヴォルテージは極限状態。
ちょっと狂気の沙汰。
第8番は第1楽章から終結まで音楽が絶えず躍動しているが
それを突き詰めてしまった。
聴き終わると嵐が過ぎ去ったあとの呆然とした気分になる。

録音はゲヴァントハウスでのセッション。
Leipzig-Gewandhaus-concerthall.jpg
音はオンで捉えられておりかなり鋭角だが、
最後はこの会場の響きに救済される。

8:12 3:42 4:16 6:15 計  22:25
演奏   A+?     録音 94点

ベートーヴェン 交響曲第8番 セル(61)

2017.03.12 (Sun)
セルベト全
セル/クリーヴランド管弦楽団(61、SONY)は発見の連続!
実に手が込んでいる。

ベートーヴェンが躁状態で書いたこの曲をセルはいったん分解して再集結。
フルオケで豪快に鳴っているようでも全パートが全て聞こえる。
そして単に聞こえるだけでなく表情が付いてる。
テンポは現在の標準より遅いが、このテンポの必然は聴けば分かる。

なお、この微細な表情を汲み取るならヘッドフォンで聴いた方がよいかも。
特に弦に注目。配置は通常で高弦と低弦が左右に分かれるが、
その応答がこれほど面白い演奏はない。
これなら対向配置ではない方がいいと思う。

第1楽章冒頭から弦がフレッシュ。
ちょっと聴いただけでこのオケは凄いと思う。まさにクリーヴランド。
シンフォニックなのに混濁はまるでない。まあ、このアンサンブルを
作り上げるために楽団員は相当泣いたのかもしれないが・・・。

第2楽章の6小節目(0:15)の1stVnの可愛い表情。
厳しいばかりがセルではない。

第3楽章の音の減衰のさせ方。真面目なのかユーモラスなのか。

終楽章も独特。
勢いで行くのでなく完璧にバランスをとりながら時に音楽を止めたり、
音量を絶妙に変化させたり。
LP時代にはここまで聴きとれなかった。
またしてもセルはほんとに凄かったのだと再認識。

録音はクリーヴランド、セヴェランス・ホールでのセッション。
Severance-Hall-60155.jpg
Severance-Hall-60151.jpg
併録の57年の「英雄」と同じ場所ながら響きが違う。
これはこの間にこのホールの改修が行われ響きが多くなったことも
要因かもしれない。それでも明快に聞こえる当時の優秀録音。
「英雄」よりDレンジが拡大している。

9:40  3:46  5:27  7:51   計 26:44
演奏   S   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第8番 トスカニーニ(52)

2017.03.11 (Sat)
トスカニーニ78
トスカニーニ/NBC交響楽団(51、RCA)は正面突破。
トスカニーニ(1867~1957)のベートーヴェンは
ある意味最近の先取りスタイル。
引き締まったフォルムでグイッと進む。

第1楽章は呈示部の反復を実施。
ワインガルトナーやフルトヴェングラーやワルターは省略。
ロマンティックな演奏ではくどくなるので省略というところか。
近時の演奏は殆ど反復を実施。
要するにきびきびした奔流感が今風で反復してもくどくならない。
テンポはピリオド派ほど速くはないが勢いがある。

後続楽章ももたつくことは無い。
終楽章も逞しく前傾する。ティンパニも粒だつ。

録音はカーネギー・ホールのためNBCスタジオ8Hのようなデット
ではなくスケール感がある。
それでもシビアに聴けば強音は厳しいが
トスカニーニのベートーヴェンの中ではよい音。

9:27  3:41  4:43  7:26   計 25:17
演奏   (A)   録音  75点

ベートーヴェン 交響曲第8番 アバド(87)

2017.03.09 (Thu)
avadovpo78.jpg
アバド/ウィーンフィル(87,DG)は健康的な歌。
ベーレンライター版とかピリオドとか無縁の20世紀の演奏。

アバド(1933~2014)は世紀末にかけてベルリンフィルと新しい作法でベト全を録音する。
だが、この盤ではウィーンとよい感じ。伸びやかな弦の歌が印象的。
これを以てアバド⇒イタリア⇒カンタービレというのは短絡で気恥ずかしいが、
そういいたくなる。アクセントは厳しくなく金管なども実にまろやか。
33 morto Claudio Abbado

第1楽章の速いパッセージの中でも木管は隙を見て綺麗に囀る。
トッッティはホールの響きも手伝いシンフォニック。

第2楽章も純粋で流れもいい。

第3楽章はウィーンフィルならではサウンド。

終楽章も実に堂々。

録音はウィーン、ムジークフェライン大ホールでのライブ。
といってもそのクレジットがなければ分からないほどノイズはない。
このホールらしくたっぷり量感のある音。マス的にとらえた当時の優等生的録音。

9:42  3:54  4:51  7:19   計 25:46
演奏   A   録音  91点

ベートーヴェン 交響曲第8番 テンシュテット(86)

2017.03.08 (Wed)
テンシュテット68
テンシュテット/ロンドンフィル(86、EMI)は爆演ではなく穏当。
特色に乏しいともいえる。

クラウス・テンシュテット(1926~86)は旧東ドイツ出身だったが
正規にはベートーヴェンの交響曲全集は録音していない。

このCDの解説には高名な評論家が第1楽章のこの演奏を評し
『ワインガルトナー~イッセルシュタットの系譜につながる演奏なのだ。
その反対がトスカニーニやワルターのスタイルで、
頂点にクナッパーツブッシュが存在する。』
と説明されている。たぶん今時の青少年にはさっぱりわからない
だろう解説(かくいう私もわからない)。

ただ面白いことが書いてあった。
『ベートーヴェンの交響曲でフォルテを三つつけたのは「第8」だけであり、
「第7」や「第9」でさえffどまりである。』
これは知らなかった。
第1楽章のスコアを見ると再現部349小節目(この演奏では9:05)で
確かに貴重なフォルティシシモが出現していた。

だからと言ってテンシュテットはそれを大げさに表現しない。
私が聴く限りこの演奏は中庸なテンポで極端な表情はなく、
「爆演」指揮者と呼ばれることもあったその片鱗は全くない。

録音はアビーロードスタジオ第1でのセッション。
アビーロード1
テンシュテットは録音に恵まれなかった可哀そうな指揮者。
EMIがLPOを自社のスタジオに呼んで大編成ものをひたすら録音し続けた。
ここでの彼らの録音の大半は高弦が汚れ低域の量感のない平板な音。
しかもこの指揮者があまりアンサンブルに
注意を払わなかったため余計に濁った感じになる。

9:35  3:33  5:34  7:13   計 25:55
演奏   A-    録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ノリントン(2002)

2017.03.07 (Tue)
ベートーヴェン78
ノリントン/シュトゥットガルト放送交響楽団(2002、hanssler)は攻撃型怒涛。
併録の第7番を上回る実にMADな演奏。

2002年のヨーロッパ音楽祭を収録したライヴ。
今回はモダンオケによるピリオドアプローチの演奏。
旧盤が軽味を身上としているのに対し、こちらはマッシブに豪放に鋭く切り込む。
テンポは一層速くなり金管のアクセントが強靭。
このコンビの来日公演に行ったがここまでの切れ方はしてなかった。
ノリントン

ピリオド系が出てきてから第8番はどんどん速くなり曲の印象ががらりと変わった。
ユーモラスに思えたこの曲は初演時第7番のほうが圧倒的に評価されていた。
しかし、この盤の演奏を聴いたなら、逆の評価になったのではないか。

第1楽章は第一音から鬼のような力感が漲る。嵐のような波。
ゴリゴリ押しまくる。打撃音が強い。

第2楽章は速いのに表情豊か。旧盤のようなかわいい感じはなくなり、
低弦の発言が大きい。

第3楽章ものどかさはない。

終楽章はとにかく目が回る。スピードはシャイーと並ぶ最速。
現代音楽を聴いているよう。あちこちから立体的に機関銃のような音が連発。
指揮者の足を踏み鳴らす音が入る。
ちょっと気合が凄すぎてこの演奏についていけない人が多数いる
と思われる。

録音はシュトゥットガルトのリーダーハレ、ベートーヴェンザールでのライブ。
Stuttgart_Liederhalle_Beethovensaal.jpg
オンマイクで剥き出しの音。骨と皮がぶつかり合うよう。
迫真の空気感もいい。拍手入り。

8:09  3:32  4:43  6:20   計 22:44
演奏   狂S    録音  93点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ノリントン(86)

2017.03.07 (Tue)
ノリントン28
ノリントン/ロンドン・クラシカルプレイヤーズ(86、Virgin)は実にチャーミング。
カラヤンなどとは正反対の演奏。

このノリントンの1回目のベト全の中では当時の彼の方向性にフィットした曲。
センス良く全く力みが無く飄々と再現。
Norrington-Roger.jpg
ベートーヴェンもいつもしかめっ面をしていたわけではない。新たな一面を発見。
単にピリオド再現しましたというのでなく、
よく考えられていて時折の表情の変化も楽しい。

第1楽章はノリがよくポップな感じ。ティンパニの軽い音が合いの手。
第2楽章はほんとに愛らしく微笑ましい。
第3楽章もユーモラスでお茶目。
終楽章も威圧感ゼロ。音圧を敢えて抑制して密やかな進行を愉しむ。
室内楽的ともいえる。このベートーヴェンなら夏でも聴ける。
高原

録音はアビーロードスタジオ1でのセッション。
柔らかく軽い音がよく捉えられている。
ともすると刺激的なピリオドの音がうまい具合丸くなる。

8:50  3:54  5:40  7:03   計 25:27
演奏     飄S   録音  92点

ベートーヴェン 交響曲第8番 フェレンチク(83?)

2017.03.06 (Mon)
フェレンチクベト38
フェレンチク/ハンガリーフィル(83?、LASERLIGHT)は田舎での生活。
この曲は「田園」の延長線であることを感じる。

ヤーノシュ・フェレンチク(1907~84)は70年代LP時代にも
ハンガリー国立Oとベートーヴェンの交響曲全集を作っている。
この盤は2回目の全集ということになる。
Ferencsik-Janos-07.jpg
リピートを省略しているので全曲は24分だが速いわけではない。
この演奏の特徴は、オケの音色が全て。
標準的な音楽づくりなのだが、もっさり感があり緩ーい感触。
第3楽章の中間部の歌い回しが実に田舎風。
ホルンのメロディーはコダーイのよう。

録音の詳細は不明なセッション。
左右は明確に広がるが全体的に曇った感はある。
低域の締まりが無いのも残念。

8:01  4:07  3:56  8:00   計 24:04
演奏   B+   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第8番 グッドマン(88)

2017.03.05 (Sun)
hanoverbandbezen.jpg
グッドマン/ハノーヴァーバンド(88、Nimbus)は温和なピリオド。
ハノヴァーバンドはピリオド奏法が盛り上がりを見せ始めた1980年代に
ニンバスレーベルから多くのCDを出した。
このベートヴェン交響曲全集は1,2、5番はハジェット、残りはロイ・グッドマン指揮。
ただこの全集は今は影が薄い。
多分それはレーベルがマイナーであったことに加え、
その後出てきた個性派に比べると演奏が中庸であったこと、
録音が残響過多であるためせっかくの瞬発性が弱まったことにある。

この第8番もその傾向は否めないが、長閑な曲でもあるために不満は少ない。

第1楽章始まって豊かな響きでオリジナル楽器臭さはない。
快適なテンポの中淡々と進む。熱のこもり方ほどほど。

後続楽章もテンポは速めのテンポで略同様のことが言える。
力感はあるのだがむき出しにならないし、情感に伴うテンポの揺れもない。
ただ、だれることも無いので聴きやすいとは言える。

録音はロンドンのオールセインツ教会でのセッション。
音は輝かしく捉えられているが、教会特有の響きの多さが細部を
不明瞭にしているのは残念。
テンポが速いので音が重なる部分がある。
なお、弦の配置は左に高弦右に低弦というように聴こえる。

8:22  4:06  5:27  7:05   計 25:00
演奏   A- 録音  90点

ベートーヴェン 交響曲第8番 クリヴィヌ(2010)

2017.03.04 (Sat)
EmmanuelKrivineベト全
クリヴィヌ/ラ・シャンブルフィル(2010、naïve)は実に精悍。
クリヴィヌ(1947~)が2004年に組織したこの古楽器オケを指揮するとき、
クリヴィヌはモダンオケを指揮するときとは全く違う鋭角的な音楽を作る。
筋肉質でも軽くなりすぎないのがいい。
単に古楽器で演奏しましたというのを越えた真剣勝負を感じさせる。
2017年秋のシーズンからフランス国立管の音楽監督に就任するが
そこでどのような音楽づくりをするのか聞きものだ。
emmanuelkrivine-.jpg

第1楽章聴き始めてピリオド系特有の弦楽の音が強烈に飛び込む。
徐々に耳が慣れてくる。きびきびした音、叩きつける太鼓。
鮮烈だがバランスのいい金管。
音はピリオドそのものだが、解釈はストレート。
筋肉の躍動を感じる凄味がある。

第2楽章のメトロノーム音楽ものんびりではなくアタックが激しい。
対向配置の弦が掛け合う中木管の合いの手がいい。

第3楽章も運動性が高い。アクセントの強さは迫力がある。

終楽章も切れ込む。ティンパニの打撃音が実によく決まり音楽を
ビシッと引き締める。終結の集中力が素晴らしい。

録音はグルノーブルMC2スタジオのライブ。
gnbEmmanuelKrivine.jpg
聴き終わり拍手が来るまでライブとは気づかない。
聴衆ノイズが無いばかりか、どの楽器も鮮明に捉えられているから。
直接音が飛び込むが、音が途切れると会場の響きがやってくる。

8:20  3:37  4:24  7:29   計 23:50
演奏   A+   録音  95点

ベートーヴェン 交響曲第8番 アーノンクール(90)

2017.03.03 (Fri)
アーノンクール68
アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(90、Teldec)は息づく躍動。
ピリオド発想を取り入れたモダン楽器による演奏。

ニコラウス・アーノンクール(1929~2016)の第二期絶頂期の演奏(個人的感想)。
テンポは安定的で特に速いわけではないが表情が活き活きしている。

1960年代のウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとのアヴァンギャルドは
かなり影を潜めてきたが、表現は相変わらず積極。
セルやライナーの均一直線的音楽やアメリカ楽団を嫌ったこの指揮者の
音楽は確かにある面ウィーン的かもしれない。

第1楽章昔のアーノンクールだったらもっとガタピシャ音になっただろう。
丁寧にしかし迫力があり、その昂進の仕方など巧い。

第2・3楽章が切れ味が良い。硬軟取り混ぜる。

終楽章は正攻法で攻めながらも力感をしっかりにじませる。

録音はオーストリア・グラーツのシュテファニアン・ザールでのライブ。
stefaniensaal.jpg
拍手は無いし観客ノイズもない。マス的捉え方。
響きが落ち着いているところから聴衆が入っているように感じる。
音は今でも新鮮でよい感じ。

9:25  3:49  5:54  7:22   計 26:30
演奏   A   録音 92点

ベートーヴェン 交響曲第8番 クナッパーツブッシュ(59)

2017.03.02 (Thu)
クナベト8
クナッパーツブッシュ/バイエルン国立管弦楽団(59、ORFEO)はどすこい。
ベートーヴェンが生きた時代の音がどうだったとかは関係ないクナの世界。
狭間の第8番を引っ張る上げ巨大化。ジンマン盤と同じ曲とは思えない。
コンサートのラストに持ってきた自信を見せつけるクナの十八番。
クナ
第1楽章はティンパニを大きく轟かせ、低弦に馬力を持たせる独自の音響。
思わずこんなにティンパニがなっていたのか確認すべくスコアを見てしまったほど。
大きなうねりがクレシェンドによってもたらせられる。これはまさにクナ。

第2楽章は合奏がずれていたりでそれが不思議な面白さ。ユーモラス。

第3楽章も田舎感丸出し。楽しい。太鼓の相槌は巨大。
中間部は陽ざしの中で素朴な踊り。

終楽章は恐るべき堂々。ここまでやれば時代考証とかがぶっ飛ぶ。
ここでもティンパニが一人大活躍。他では聞けない独断芸。
今、このような指揮者は・・・いない。

録音はドイツ・ミュージアム・コングレスザールでのライブ。
1969_kongress-saal_muenchen_.jpg
ステレオ期に入っていた時代なのでモノラルでも聴きやすい。
これは演奏自体のせいか、リマスターなのかティンパニの存在感が
やたらに大きくボワンボワン。地響きのよう。
それを除けばラジオ放送用音源かもしれないが全体的にはまとまっている。

9:56  4:21  4:57  8:30   計 27:44
演奏   巨    録音  80点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ケンペ(72)

2017.03.01 (Wed)
ケンペ58
ケンペ/ミュンヘンフィル(72、EMI)はドイツの規範。

ケンペ(1910~76)はこのオケと71~73年にベートーヴェンの交響曲全集を作った。
ケンペ再評価の時期でこの全集は75年レコード・アカデミー賞を獲った。
ただ当方はケンペのブルックナーやブラームスはすごく好きなのだが、
ベートーヴェンは今一つピンと来ていない。悪かろうはずはないのだが・・・。
まじめすぎるからだろうか?
ケンペミュンヘン

特に8番は全体を通して奇異なところは一つもなくテンポは当時の普遍的なもの。
オケの音色は渋く場合によっては古色蒼然。
いかにもドイツのガッシリ伝統芸を聴いているような感覚になる。
それに比べると同じコンビでもブルックナーやブラームスは(渋いのだが)
もっと解き放たれていたような。
製作がこちらはBASFに代わっていたことも印象に差が生じたのかもしれない。

録音はミュンヘン、ビュルガーブロイケラーでのセッション。
ケンペ収録風景
ここは大きなビアホールだったところで戦中はナチスに利用されたりしていたが、
70年代はレコーディング会場として利用された。
(79年に取り壊し、現ミュンヘンフィルの本拠のガスタイクは1985に完成)
音響ははっきり言ってあまり良いとは言えず、デット気味で潤いがなく
低域の量感や強さが伝わらない。ティンパニの音が潰れるのも気になる。
独エレクトローラによる収録だが
どこまでが会場のせいでどこまでがスタッフのせいかはわからない。

9:47  4:02  5:11  7:52   計 26:52
演奏   A-   録音  85点
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