クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

指定期間 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第8番 ワルター(58)

2017.02.28 (Tue)
ワルター78
ワルター/コロンビア交響楽団(58、SONY)は懐かしい長閑さ。
昔から馴染んでいたのはこの音楽。古式ゆかしい第8番という印象だった。

ただ、今回ヘッドフォンで真剣に聴いてみると
意外にも積極的な表情が見え隠れしていることに気づいた。
LP時代に聴いていた時よりCDは鮮明に聞き取れる。
ハイスピードの演奏に慣れてきたところにこのように
遅いテンポでいろいろなニュアンスを含んだ演奏に再会すると新鮮。
Walter-Bruno-3.jpg

第1楽章は思っていた以上に逞しい。
コロンビア交響楽団の編成はこの曲では小さいのでパート音くっきり。
この中で微妙な揺れ伸縮がある。左右に分かれた弦の弾力がいい。

第2楽章はシャキッとしてます。

第3楽章はチェリビダッケを除けばもっとも遅いテンポ。
あっけらかんとしたラッパやおどけたファゴットなど実にユーモラス。
中間部のテンポの崩しなどノスタルジック。

終楽章はクナ(ミュンヘン)に次ぐ遅さ。
メトロノーム忠実系の演奏から見ると驚くべきユルフン。
しかしこの中にも微妙な揺れを持ち込む。
結構不思議な演奏だった。

録音はハリウッド、アメリカン・リージョン・ホールでのセッション。
ヒスはあるが驚くほど生々しい音。
右から聴こえる低弦のざくっとこすれる音が、
およそ半世紀以上前の音とは思えない。
このホールは音響がよく空間がしっかり。

7:37  4:21  5:48  8:37   計 26:23
演奏   A+   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ジンマン(97)

2017.02.27 (Mon)
ジンマン78
ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団(97、ARTENOVA)は
喜遊曲的軽量快速。
楽聖のイメージを木っ端みじんにした怪演。

ロマン派的演奏では、この第8番は第7と第9の間に挟まれた目立たない曲。
こうした演奏で初めて曲の真価が発揮されたのかもしれない。
全曲23分で出現した時には驚いたが、現在はシャイー盤が最速か。
しかしシャイー盤はここまで気楽ではない。

編成が小さいこともあり、スピードはあるが各楽器の動きが明快。
太鼓の音もポンポンいい感じ。
ドライブ時などで気軽に聴ける愉悦感あるベートーヴェンでもある。
あまりに軽くて心に来るものが無いといわれればそれまでだが、
吹っ切れたようなチャレンジ精神に拍手を送りたい。

録音はチューリッヒのトーンハレでのセッション。
名ホールの音響は十分。編成は大きくないため余裕を持った収録。
動きの速さもしっかり捉え粒立ち適度。
8:14  3:50  4:16  6:40   計 23:00
演奏   挑   録音  93点

ベートーヴェン 交響曲第8番 マッケラス(97)

2017.02.26 (Sun)
マッケラスベト全
マッケラス/ロイヤル・リヴァプール・フィル管弦楽団(97、EMI)は素晴らしい推進力。
マッケラス(1925~2010)は米国生まれ豪州育ちで英国で活躍した指揮者。
彼の颯爽とした音楽は好きだった。
Mackerras-Charles.jpg
時代考証を駆使したこのコンビによる最初のベト全録音(1991~97)の完結盤。
デル・マー校訂スコアを用いてベートーヴェン指定のメトロノーム速度で再現。
モダン楽器使用だが配置は対向。

この演奏のいいところはジンマンほど軽くなく、シャイーほど煩わしくないところ。
直線的であるがシンフォニックな迫力があり、アクセントも馬力がある。
古楽器系の突出した刺激音はなく、マッシブな正統の力感。
新時代のベートヴェン演奏の先駆的演奏。

第1楽章から終楽章に至るまで一貫した疾走は実に快適で時に豪快。
前に進むビートの効いたリズム感は最高だ。
オケの重心はドイツ系ほど低くは無く中庸な響きは如何にも英国。
猛烈なテンポをとるも破綻なく突き進む。

録音はリヴァプールのフィルハーモニック・ホール。
少し曇った音でせっかくの鮮烈な演奏がマイルドになっているのは残念。
聴きやすくなっているともいえるかもしれないが。

8:35  3:41  5:37  7:05   計 24:58
演奏   S   録音  91点

ベートーヴェン 交響曲第8番 クレンペラー(58)

2017.02.25 (Sat)
クレンペラー18
クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(58、EMI)は徐々にクレンペラー。
最初は流麗、後半はボコボコ感が出る。

カラヤンがベルリンに行ったあと、ウォルター・レッグは全くタイプの違うクレンペラーを
使いPOとベト全を作った。
1959_klemperer.jpg
この指揮者の音楽はくっきりしておりステレオ期を迎え彼の採った両翼配置が効果を見せた。
左から第1Vn→Vc・Db→Va→第2Vnという並びがよくわかる。

第1楽章最初聞いたときにクレンペラーの演奏だろうか、と思った。
流れが非常によく推進力がある。弦を中心に木管がアクセントを添え金管は抑制。
同じくPOでも手に汗握るのは55年カラヤンの方だ。

第2楽章の縦のアクセントを強調させるのはこの指揮者らしい弦の掛け合いが面白い。
カラヤン盤で右から聞こえたコントラバスは左から聞こえる。

第3楽章は真っ当。

終楽章は落ち着いた歩みでどっしり感がある。
アクセントの置き方にクレンペラーらしさがある。カラヤンよりもずっとドイツ的という感じ。

録音はキングスウェイホールでのセッション。
この会場でのステレオ収録がこなれてきた時期で最初期よりも奥行きが出ている。
マスで捉え響きはほどほど。くすんだ音であるのは仕方ない。

9:42  4:28  5:11  8:14   計 27:35
演奏   A    録音  85点

ベートーヴェン 交響曲第8番 カラヤン(55)

2017.02.23 (Thu)
カラヤンPO
カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団(55、EMI)はステレオ盤。
カラヤンの実用ステレオ開始の録音。

カラヤンの8番は55年、62年、77年、84年盤を保有しているが77年盤だけ24分半、
あとは26分台の演奏時間。いずれも勢いのある演奏。
この盤はスピードだけでは負けるが荒々しいまでの突進力は眩しい。
思えば1955年はカラヤンがベルリンのシェフになった年、私生活も燦々としていた。
そんな晴れがましさが出ている。
後のベルリンフィルのような凄味はないがフィルハーモニアは颯爽。
なお、勢い優先で案外アンサンブルは粗い面もあるのがご愛嬌。

第1楽章はアクセントが徐々に強くなりドライブ感が増す。
第2楽章の弾むリズムも実に活き活き。
その間にレガートを差し込んでみせるなど余裕も見せる。
第3楽章中間部のホルンは伝説のD・ブレインだろうか。
のどかさもあり案外素朴。
終楽章も元気で明るい。
小細工なしに突き進む。トスカニーニよりもこなれた音づくり。

録音はキングス・ウェイホールでのステレオ・セッション。
1955_karajan.jpg
なお、この時の録音は両翼配置との記載もあるがそのようには聴こえない。
第1Vn→第2Vn→Vc・Db→Vaのよう。
ウォルターレッグの監修。まだステレオ初期で音の深さや量感はなくややハイな音。
それでもやはりステレオ。音の広がりはこの全集の中ではピカ一。

9:02  3:55  5:49  7:37   計 26:23
演奏   A    録音  84点

ベートーヴェン 交響曲第8番 シェルヘン(65)

2017.02.21 (Tue)
シェルヘン
シェルヘン/スイス・イタリア語放送管弦楽団(65、MEMORIES)は必死。

その昔、ヴァーン・メディアからシェルヘンのベートーヴェン交響曲が
次々に出た時には爆演の名を欲しい儘にした。
そしてこの第8番も突出した演奏だった。
シェルヘン指揮

シェルヘン(1891~1966)は1954年RPOとこの曲をウェストミンスターに録音しているが
それもまたえらく速い演奏だったが、本盤はそれを更に上回る。
発売時は冗談のようなスピードと揶揄されたが、近時ベートーヴェンの指定の速度での
演奏が増えてくるとこの演奏はあながち奇怪なものでなく、正当なもののように思える。
ある意味時代を先取りしていた?

ただ、この演奏はただ速いだけではなく異様なテンションが特色だ。
指揮者の要求するスピードに食らいつくためにオケが必死になったことと、
スタジオライブで指揮者の感興もマックスということだったのだろう。
リハーサル模様を聴いているとものすごい情熱で死の前年74歳とは思えぬ力感だ。

録音はルガノのオーディトリウムRTSIで聴衆を入れてのライブセッション。
rtsi.jpg
残響少なく近接音。明瞭だが音の厚みは少なく平板で薄い感じ。
しかしライブ収録と考えればこの時代のものとして十分聴ける。

7:10  3:54  4:04  6:36   計 21:44
演奏   跳   録音  85点

ベートーヴェン 交響曲第8番 バレンボイム(99)

2017.02.20 (Mon)
バレンボイム78
バレンボイム/ベルリン・シュターツカペレ(99、TELDEC)は筋骨隆々の剛演。
このコンビのベト全集が相当好き。なんといってもこのオケの響きがいい。
この第8番も引き締まったスピードと相まって畳み掛けるド迫力は
ピリオドに系に出せない凄味。
(↓配置は第1、第2Vnを両翼に置いている)
Staatskapelle Berlin

第1楽章はどんどん燃焼度が上がる。中間部5分過ぎからの雄渾な隆起。
金管がティンパニが豪快。一瞬も淀むことない推進。

第2楽章のスケルッザンドも軽やかというより筋肉むき出し。
速めのテンポでゴリゴリ一気に。

第3楽章もメヌエットにみられるユーモラスな感触はなくエイッといく。

終楽章も前のめり。快速カラヤン77年盤ほどではないが7分を切る。
ズンドコズンドコ押しまくる。
両翼配置で掛け合いの妙。ここぞと低弦がゴーッと盛り上がる。

全曲通して表情の多様性があるかといえば、ない。
しかし、一気に突き進むこの演奏の一途さは圧倒的。

録音はベルリンのドイツ放送GDR第一スタジオでのセッション。
Nalepastr. 18, The old DDR radio city is now turned into studio
スケール感を確保しながら凝縮した音を実現。
低域の量はあるがぶよぶよしないのが最高だ。
弦と金管とティンパニのバランスがよくいずれも明瞭に聞き取れる。

9:35  3:39  4:57  6:57   計 25:08
演奏   S    録音  94点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 カプソン兄弟ほか(2007)

2017.02.19 (Sun)
カプソンPQ1
ルノー・カプソン(Vn), コセ(Va),ゴーティエ・カプソン(Vc), アンゲリッシュ(p)
(2007、Virgin)は絶妙な感覚美。重くならないブラームス。
青春譜でもあるこの曲は感傷的なメロディもきっちり詰まるが、
ここではそれがべとつかない。それがよい。

フランスのカプソン(カピュソン)兄弟にコセとアンゲリッシュという仲間を加えた演奏。
主役は左右に配置されたこの兄弟。
ピアノは中央で出しゃばらず、むしろヴァイオリンとチェロを取り持つよう。
ヴァイオリンは独自の音色を持ち単にきれいなだけでなく切ない。
チェロも微妙なスイート感。ピアノは高域で冴える。ヴィオラはヴァイオリンを立てる。
全く単調感がなくそれぞれの楽章で積極的な愉しみがある。

この演奏はスイスのイタリア語圏であるティチーノ州のルガーノで行われている。
croppedimage580380-Lugano-Tessin.jpg
こうした風光明媚な場所で音楽を奏でるのはさぞ気持ちがいいだろう。
そんなことまで感じさせる。

録音はオーディトリアム・ステリオ・モロでのセッション。
Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano
室内楽にはぴったりの音場で弦の響きを映えさせる木質感がいい。


14:03  8:16  10:37  8:13   計 41:09
演奏   S    録音  95点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(ピアノ連弾版) マティース&ケーン(98)

2017.02.18 (Sat)
マティース&ケーンpq1
マティース(p)&ケーン(p)(98、NAXOS)は作曲者自身の編曲によるピアノ連弾版。
なんというかピアノ四重奏曲をピアノ連弾曲に編曲する意味合いがなかなか難しい。
大編成のものを小さくした場合、演奏における実用上の理由や
聞き手側にしてみれば透ける構造による発見という面白さがある。
ということでナクソスのこのシリーズは結構好き。

しかしここではもともとが室内楽。
しかも単純に言えばピアノ1人は重なっているので、
残り1人のピアノが弦楽3人を受け持つ構図。
原曲との違和感が少ないとはいえるのだが、ピアノの音色が重複感。
これだったら、あと2人足してピアノ四重奏で演奏してほしくなる。
ということで原曲の良さを見直すことになった。

もちろん、マティースとケーンはここでも誠実に仕事に取り組んでいて
好感が持てる。
(↓Haus der Klaviere Gottschlingサイトから二人の近影)
Christian Köhn

録音はハイデルベルク・クララ・ヴィーク大講堂でのセッション。
明確にピアノを捉えた録音。会場の響きは自然に入り綺麗。

14:47  8:30  10:06  8:57   計 42:20
演奏   惜    録音  92点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) クレンペラー(38)

2017.02.17 (Fri)
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クレンペラー/ロサンジェルス・フィル(38、MEMORIES)は歴史的初演記録。
クレンペラー(1885~1973年)はユダヤ系ドイツ人であったため、
ナチス・ドイツを逃れて1933年(48歳)にアメリカに亡命する。
ここでロス・フィルの音楽監督の職を得て活躍する。

時を同じくして亡命してきたユダヤ人のシェーンベルク(1874~1951年)に
この曲の編曲を依頼した(1937年)。
初演は翌年1938年になされその時の記録が本盤。

シェーンベルクの主要曲は亡命前に出来上がっており、
この時期は作曲というよりUCLAなどで教育活動が中心だった。
12音技法にのめり込む前に傾倒していたブラームスの作品を
扱うとあって編曲に前向きだったことが伝えられる。

さてこの演奏、貧しい音の向こうで聞こえてくる音楽は実に颯爽としている。
50代のクレンペラーの健康で率直な音楽づくりに感心する。
テンポはどの演奏より速いが寂しさを湛えながら走る。
この曲は初演の時から名演だったのが分かる。

しかし、この初演の翌年1939年に脳腫瘍に倒れたクレンペラーは、
言語障害や身体の麻痺といった後遺症との戦いを余儀なくされ、
このオケの音楽監督の座も失うことになる。
この病をきっかけに元来患っていた躁鬱病も悪化、奇行が目立つようになり、
以後アメリカでのキャリアは完全に断たれる。
10年間の不遇の時を経て1950年代になって復活を果たし
VOX・EMIにも多数の録音を残した。

大男・奇人変人・色情狂の名をほしいままにしたクレンペラー。
この編曲を依頼したことは彼の功績だ。
otto-klemperer.jpg

録音はロスでの初演ライブ。
SPからの復刻でスクラッチノイズと音の脱落があり一般の鑑賞には適さない。

12:02  8:35  9:12  7:22   計 37:11(一部脱落あり)
演奏   颯   録音  55点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) ラトル(2009)

2017.02.16 (Thu)
ratoru.jpg
ラトル/ベルリンフィル(2009、EMI)は堂々、堂に入っている。
ラトルが得意とする曲でおりにふれて取り上げている。

このコンビは2004年のアテネでのヨーロッパコンサートでこの曲を演奏した。
その時の映像は放映もされたが会場(ヘロド・アティクス音楽堂)も含めて
実に印象深いものだった。
Berliner_Odeon.jpg

その五年後に録音されたこのCD。
『室内楽版では到達できないブラームスの深遠に迫るラトル。
シェーンベルクの編曲に生き生きと反応。』という宣伝文句も納得させられる。

第1楽章冒頭からベルリンの深々とした音にゴージャスなスケール感を感じる。
ラトルの指揮は丁寧で力まず余裕を持って歌いあげる。
呼吸感も実に決まっている。

第2楽章第3楽章も落ち着いたたっぷりした演奏。
シェーンベルクよりブラームスを感じさせる。

終楽章では本領発揮。
ぶっといベルリンの音を活かしながらも破綻の無いスピート感を併せ持つ。
ベンツでアウトバーンを走る感覚?終結はド迫力。

録音はベルリン・フィルハーモニーでのセッション。
低域からたっぷり感がある。ただ、この会場の録音でいつも思うのは
もう少し立体感と締まりがあったら・・・ということ。

14:02  8:38  10:34  9:03   計 42:17
演奏   A+    録音  91点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) ライスキン(2006)

2017.02.15 (Wed)
ライスキンPQ
ライスキン/ライン州立フィルハーモニー管弦楽団(2006、CPO)は真っ当。

このオケはコブレンツの歌劇場のオケとしても活動しているが、
1654年宮廷楽団として誕生したというから相当な歴史。
(1919年設立のラインランド=プファルツ州立フィルとは別団体)

コブレンツは人口10万人のライン川沿いの小都市だが、
NEU_Deutsches_Eck_Koblenz.jpg
ドイツの場合はそんな街にも立派な技量のオケがある。

ライスキン(1970~)はサンクトペテルブルグ生まれで
dirigent_1.jpg
2005~08年このオケの首席だった。
もともとヴィオラ奏者で当方もブリテンの協奏曲の盤を保有している。

さて演奏だが全く奇を衒わないし主情的でもない。
基本的にインテンポで進み、凭れることが無い。
ブラームスらしい落ち着いた響きが基調。
オケの音がしっとり収録されておりこの曲をじっくり味わうことができる。
ただ真面目すぎるので、もう少し踏み込んで欲しくもなる。

なお、本盤の併録はブラームスのクラリネット・ソナタ第一番を
ベリオが管弦楽伴奏つきに編曲した珍しいもの。
実演で一度だけ聴いたが(シェーンベルクとは違い)実に渋い編曲。

録音はコブレンツのライン・モゼル・ホールでのセッション。
Rhein-Mosel-Halle_01_Koblenz.jpgRhein-Mosel-Halle,_Großer_Saal
どちらかというと体育館のような会議場だが、知らずに聴くと
下手なコンサートホールよりいい音場だ。
シューボックス型で適度な響きが弦を滑らかにする。
CPOの録音陣もセンスがよく上質感のある音がする。

14:16  7:37  8:53  8:59   計 39:45
演奏   A   録音  94点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 アルゲリッチほか(2002)

2017.02.14 (Tue)
アルゲリッチ
アルゲリッチ(p)、クレーメル(Vn)、マイスキー(Vc)、バシュメット(Va)(2002、DG)は
表現主義のインフルエンザ。

このCDの解説にはこの曲の録音に土曜から水曜日まで費やしたと記されている。
この大物4人でこれだけの時間、大変コストはかかっただろう。
仲間たち
ともかく、冒頭よりち密に組み立てられた大ぶりな迫力ある表現。
各自の息があっているかはともかく
振幅の大きな表現だが全く破綻していない連動はリハの賜物。

演奏はピアノのダイナミクスが大きくそれにつられて
皆が憑かれたように表情過多な演奏を展開。

第3楽章のうなりを伴う身振りの大きさなど、うわっと圧倒される。
終楽章の疾風怒濤はすごい。前後はぶっ飛ばし中間部ではぐっと溜める。
見て見てと一生懸命言っているよう。うーん、室内楽としてどうなのだろう。
これを聴くならオケ版を聴いた方がゴージャス感を味わえる。

なお、本盤は
”2003年度レコード・アカデミー大賞銀賞&室内楽部門受賞”
の「名盤」である。

録音はベルリンのテルデッック・スタジオでのセッション。
teldec studio
どうせ缶詰になるならどこか自然のきれいなところで収録した方が
肩の力が抜けたのではないか。
演奏のスケールは大きいが録音空間は大きくない。
微妙につまりを感じるのは録音というか強音で濁りが出ているのかもしれない。

13:18  7:35  10:51  8:10   計 39:54
演奏    A-    録音 91点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) N・ヤルヴィ(89)

2017.02.13 (Mon)
njarviPQ.jpg
N・ヤルヴィ/ロンドン交響楽団(89、Chandos)は最高傑作。楽しい+感動。
ヤルヴィ(パパ)は時として職人的に音楽づくりをしてさっぱりしてしまうのだが、
この演奏は違う。魂のこもった力演だ。
yarviパパ
ロマンティックなのだが射し込む近代兵器の違和感が実に面白い。
ブラームス+シェーンベルクの音楽が人を感動させる不思議な体験。

第1楽章は儚い決意が連続する。15分かけるが、集中力は実に素晴らしい。
表面を綺麗になぞっただけの音楽ではなく悶え煌めきなどがないまぜに。
表情の彫りは深くシェーンベルクがピアノから弦主体に移行したメロディの
歌わせ方が心に迫る。プレーズごとに間をとり心を落ち着かせて次に進む。
抗うモノに対するシェーンベルクの金管・打楽器が実に効果的。

第2楽章もブラームスらしい優しくふくよかさをベースに見せながら
シェーンベルグのスパイスがしっかり効く。

第3楽章は少し粘性を帯びたっぷり情感が込められるのだが、
中間部のマーチになるとバシンと壮大な表情。
そしてまた濃厚なロマンに復帰。この猫の目変転を愉しめるかどうか。

終楽章はシェーンベルクがグロテスクに作った管弦楽法を強調した現代音楽。
でもまたもやそこにブラームスロマンを突然持ち込む。テンポの伸縮が自在。
最後は金管の咆哮、パーカッションの乱打。

なお、この盤の併録はブラームスのピアノ曲
「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」(作品24)を
ルッブラがオーケストレーションしたもの。
こうした選曲もN・ヤルヴィはやるなあ、と思わせる。

録音はロンドンのst.jude-on-hillという教会でのセッション。
st.jude-on-hill london
StJude6_20170211092518093.jpg
シャンドスらしい場所の選択でたっぷりした音場感だが、各楽器は明快に聴ける。
この曲を実にスケール大きなものにしている。

15:10  9:11  11:54  9:25   計 45:40
演奏    S    録音  93点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) プレートル(2009)

2017.02.12 (Sun)
プレートルPQ
プレートル/ローマ聖チェチリア音楽院管弦楽団(2009、TOBU)はオペラ!
驚くべき自在な推進力で一気に聴かせる。このライブ時85歳。
全く弛緩せず意志を持った音楽が展開。この曲屈指の劇場的演奏。
そう、彼は根っからのオペラ指揮者なのだ。

ジョルジュ・プレートル(Georges Prêtre, 1924~2017年)は
先日1月4日92歳で亡くなってしまった。
(↓亡くなる数ヶ月前、いつも笑顔)
Georges Prêtre3

このフランスの指揮者は私にとってなんといってもプーランク。
60年代のEMIへの数々の録音はこの作曲家の魅力を教えてくれた。
軽く飄々としていながら切ない音楽だった。
Georges Prêtre2

その後あまり見かけないと思っていたが欧州ではどんどん名声を上げ
フランスより独墺、特にウィーンで活躍した。
そういえば2008年2010年のウィーンのニューイヤーコンサートを
最高齢で振っていた。如何に彼が当地で尊敬されていたかが分かる。

このイタリアのオケとは1962年以来の長い付き合い。
両者のラテン的な明るい気質があったのだろう。
Georges Prêtre4

この演奏も実にノリノリだ。ブラームスなのだが・・・。
第1楽章はいきなりそのテンポの速さに驚く。スリムな音で見通しが良い。
ドイツ的濃厚どっしり、ではない。

第2楽章のテンポの伸縮が大胆。
途中で音楽が止まりそうになりながらダンスする。
プレートルがニコニコしながら指揮している。

第3楽章も速めのテンポなのだが音楽は揺れる。
マーチのあっけらかんとした吹奏はほんとに楽しげ。

終楽章プレストもテンポが激変するのでオケが大変だ。
指揮者の気ままな?アゴーギクに聴く方も驚かされる。
常に歌に溢れカンタービレ。終結の怒涛の変転、追い込みは
まさにオペラだ。聴衆の熱狂当然だ。

録音は聖チェチリアのAuditorio Parco della Musicaでのライブ。
Auditorio Parco della Musica (Sala Santa Cecilia)
低域の量感や弦が薄くオケの厚みに欠ける音だが、一方が鮮明で強い。

12:58  8:40  9:30  10:15   計 41:23
演奏   匠    録音  90点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) ドホナーニ(95)

2017.02.11 (Sat)
ドホナーニ
ドホナーニ/ウィーンフィル(95、DECCA)は弦だ。弦の魅力だ。
解釈的には変哲ない。例えばクラフト指揮のフィルハーモニア管と本盤は
解釈自体は変わらないが受ける印象が違う。オケの発するものが違うから。
ドホナーニは丁寧にウィーンの美感を引き出した。
dohnanyi.jpg
第1楽章冒頭より弦楽が芳香を振りまきながら進む。
ウィーンも現代的になったと思うがフレーズの終わりに漂う艶はやはり絶妙。

第2楽章ブラームスのおセンチなメロディが色気を持つ。
あくまで弦を主体にした演奏だが
ホルンや木管がくすぐるようなまろやかさで纏わりつく。ぞくぞくする。

第3楽章は中間のマーチの堂々とした鳴らし方は唐突感の無い仕上げ。
これは原曲に近いイメージ。準メルクル/N響などはシェーンベルクが
面白くした部分を拡大して見せたがここではブラームスのまま。

終楽章は軽やかなダンス。ここでも派手さは無いが実に楽しげ。
力むことなく始まるが次第に熱を帯びる。充実した響きは流石。

録音はウィーン・コンツェルトハウスでのセッション。
コンツェルトハウス
ウィーンの弦の美感を見事にとらえる。
まろやかなトーンは極めて豊潤。

12:08  8:06  10:57  9:03  計 40:14
演奏   A+    録音  93点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 ハン・ファウスト・ジュランナ・メニエ(96)

2017.02.10 (Fri)
han faust
ハン(p)ファウスト(Vn)ジュランナ(Va)ムニエ(Vc)(96、BrilantClassics)は
良い意味で中道中庸路線。全員が真面目にしかも出しゃばらずに奏する。
室内楽のお手本のようで好ましい。
(左からハン、ファウスト、ジュランナ、メニエ)
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うるさくなく爽やか系だが特徴的な面は少ない。
しかし不満はないしこの曲の魅力を十分伝える。
むしろ脚色がないので安心して聴ける演奏といえるかもしれない。
各楽器のバランスもよくピアノもきれいだ。
疲れない。

録音はスイス・シオンのsalle de fondation tibor vargaでのセッション。
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salle de fondation tibor varga
広いホールではないが適度な空間は確保されている。
楽器の距離感も適切。

13:11  8:08  9:06  8:07   計 38:32
演奏   A   録音  93点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 スターンと仲間たち(89)

2017.02.09 (Thu)
スターンアックスマラレード
アックス(p)スターン(Vn)ラレード(Va)マ(Vc)(89、SONY)は恰幅どっしり。
「アイザック・スターンと仲間たち」による演奏。
常設の四重奏ではないがよく集まっていたメンバー。
気心知れたというか、スターンを中心に楽しげだ。

この曲はピアノとヴァイオリンが2軸になる演奏が多いがここではチェロが
大きな比重なのが特色。スターン(1920~2001)はこの録音時70歳前、
全く技巧に問題ないかといわれると少しヨレている感じもある。
これはお達者さんの味わいなのかもしれない。

全体的におおらかな表情で激しく起伏するわけではない。
ただ、ヴァイオリンとヴィオラが同じ旋律を弾く場面など音が
重なってしまっていて単調な歌に聴こえる。中間楽章など大味な面も。

一方終楽章は緩急が見事で、歌も十分。ピアノは舌を巻く巧さ。
全体に明るい色調でほっこりさせてくれる。
これもやはりスターンの人柄なのだろう。アメリカらしいといえばいえるかもしれない。
92年米国グラミー賞受賞のアルバムだ。

録音はニューヨーク・トロイ貯蓄銀行音楽堂でのセッション。
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troy hall
天井が高く響きが良い。マイクは近接だが伸びよく収録。
ピアノが奥にあるのでこの音が全体をかき消すこともない。

13:33  8:01  10:09  8:05   計 39:48
演奏   A   録音  90点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 ドムス(87)

2017.02.08 (Wed)
ドムスブラームス
ドムス・アンサンブル(87、Virgin)は繊細でたおやかな歌。幽玄絶美!

ドムスはイギリスの常設のピアノ四重奏団。
団体名の由来はジオデシックドーム*を簡易のコンサートホールにして
各地で演奏を行うところからきている。
*球面を模した正二十面体を基本骨格とし、規格化された三角形の部材を
組み合わせ、できる限り大きな内部空間を得る構造
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演奏はデリケートで美しい。
メンバーがお互いの音を聴き密やかに会話する。それぞれを慈しむような丁寧さ。
スタープレーヤーがおらず常設のこの編成ということもあろうか、
誰も我を強く押し出すことない。
domusメンバー

弦の表情はセンスがよくヴィヴラートは伸びやかで、
ピアノは低域の安定感と高域の煌めきが素敵。

第3楽章など両端の水性の儚さと中間部の行進の逞しさの妙。
終楽章も乱暴になることなく、プレストの中でヴァイオリンがしっかり歌う。
丁々発止の演奏もありだが、この演奏を聴くと室内楽の良さを感じる。

録音はロンドン、ウッドサイドパークの聖バーナバス教会でのセッション。
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ヴァージンの録音はEMI系のエンジニアによって今一つになることがあるが
これはメンバーが違うのだろう。アビーロードでなくてよかった。
この音響・音場は素晴らしい。透明な空間に拡がる音はなんと心地よいのか。

14:12  8:47  10:17  8:23   計 41:39
演奏   S    録音 95点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 ボザール・トリオ(73)

2017.02.07 (Tue)
ボザールトリオトランプラー
ボザール・トリオ+トランプラー(Va)(73、PHILIPS)はストレートな再現。
ボザールトリオはどんな曲を演奏しても抒情に溺れず力強く弾き切る印象。
もう少しデリケートな味わいがあってもいいのではないかと感じたりもするが、
一定の範囲を逸脱しない水準があるのも確か。

結成時のメンバーは、メナヘム・プレスラー(P), ダニエル・ギレ(Vn),
バーナード・グリーンハウス(Vc)の3人。
ヴァイオリンは、イシドア・コーエン(1968年~)、イダ・カヴァフィアン(1992年~)、
ユンウク・キム(1998年~)、ダニエル・ホープ(2002年~)へと交代し、
チェロは、ピーター・ワイリー(1987年~)、アントニオ・メネセス(1998年~)と交代をした。

ピアノのプレスラーのみ交代することなく、この三重奏の軸となっている。
この演奏のヴァイオリンはコーエン、チェロはグリーンハウス。
このメンバーでの録音が一番多かったのではないか。
ここではこのトリオにヴィオラのトランプラーが加わり四重奏にしている。

演奏は全編速めのテンポで表情の溜めは少なく直裁な感じ。
ウジウジしないカチッとしたブラームスで終楽章は勢いがある。
主導はピアノのプレスラーではないかと思うが明快なタッチ。
無神経に出しゃばることが無いのはもうこのトリオの息があっているから。

録音はスイス・ラ・ショー=ド=フォン(La Chaux-de-Fonds)シアターでの
アナログ・セッション。
La Chaux de Fonds
比較的近接して録られている。
この会場の響きは綺麗だが、ホールトーンは多くない。
いつもながらの安定した音。個人的にはもう少し柔らかい音が好き。

13:10  8:34  9:39  7:58   計  39:21
演奏   A-   録音  89点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) クラフト(98)

2017.02.06 (Mon)
クラフトschoenberg
クラフト/フィルハーモニア管弦楽団(98、NAXOS)は均整のカラフル。
シェーンベルクの狙った通り音がよく聞こえる。そして儚げな音楽が素敵。

ロバート・クラフト(1923~2015)75歳の録音。
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34年前の旧盤とは違って落ち着いた風情を見せる。
主情的なブラームスではなく客観性を持つ。
それがシェーンベルクのオーケストレーションの面白さを際立たせる。
録音の分離では無く、作り出す音楽がすっきりしているのだ。
そういえばこの指揮者のストラヴィンスキーも音が明快でよく聞こえる職人風だった。

第1楽章から流れはよく感情的な煽りが無いので涼しい。

第2楽章など声を潜めて語り合う木管が美しい。

第3楽章も淡々としているが、それだけに中間部のマーチの挿入が印象的。
両端部は完全にブラームス。

終楽章ロンドは力まない、蝶がひらひら飛ぶよう。
興奮を呼び覚ますような演奏ではない。

録音はロンドン・アビーロードスタジオでのセッション。非常にバランスがいい。
マストーンなのだが、聞こえる音はしっかり埋もれない。
量感はほどほど。虚仮威し感は無い。

13:55  9:09  11:00  8:51   計 42:55
演奏   A    録音  91点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) クラフト(64)

2017.02.05 (Sun)
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クラフト/シカゴ交響楽団(64、SONY)は渾身の十字軍。
濃厚ロマン派ブラームスというよりシェーンベルクの青白い情念に比重が置く。

アメリカのの指揮者・著述家ロバート・クラフト(1923~2015)は先年92歳で亡くなった。
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この人はストラヴィンスキーの長年の助手として有名だが、米国に亡命してきた
シェーンベルクのエキスパートでもあった。
クラフトによる世界初の「シェーンベルク全集」は話題となり日本でも1971年の
レコード・アカデミー賞特別部門を受賞している。
本盤もこの全集に含まれていたもので、この曲の世界初のセッション録音だった。

演奏は全曲が38分でその後に続く演奏に比べるとかなり速めだが、
1938年の依頼者でもあり初演者でもあるクレンペラーのテンポに近似している。
なお、マルティノン時代のシカゴ響の唯一のコロンビア録音だが
やはりこのオケは完璧だ。

第1楽章から速いテンポをとるがその中でも歌わせておりのっぺらぼうではない。
指揮者の唸りも随所で入っていて思いがたぎる。

第2楽章は快適なテンポで爽やか。
ゲシュトップのホルン音の強調などは無くノーブル。

第3楽章は軽やかに楽想の変転を描く。ここでもマーチはけばけばしくなく
落ち着いた響き。

終楽章は7分台と軽やか。アップテンポでフレーズが次々に飛び込んでくる面白さ。
溜めは無く直線的に終結に飛び込む潔さは実にかっこいい。

録音はシカゴのオーケストラホールでのセッション。
録音年代を見なければ半世紀以上前の録音と思えない。
リマスターも威力を発揮。
ホールトーンと個々の楽器のフィルアップの融合バランスが適切。
これは当時のRCAを越える優秀録音だ。
自然な左右の定位、量感などセンスが良い。

12:25  8:06  9:43  7:50   計 38:04
演奏   A+   録音  89点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) 準・メルクル(2007)

2017.02.04 (Sat)
準メルクルMDR
準・メルクル/MDR交響楽団(2007、MDR)はたっぷりロマン。
シェーンベルクというより薫り豊かなブラームスの「第5交響曲」といっていい。

準・メルクル(1959~)はドイツ人の父と日本人の母との間にミュンヘンで生まれ、
チェリビダッケに師事した。日本のオケにも度々客演しており今やおなじみだ。
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得意のこの曲のNHK交響楽団との旧盤(98年)とは響きか相当違うが
演奏の本質は同じ。旧盤はライブで直裁だがこちらは落ち着いた包容力。
ただ、しっかり表情をつけて歌う姿勢は共通。

なお、MDRとは中部ドイツ放送協会のことでこのオケは以前
ライプチッヒ放送交響楽団と称していた。
ドイツの放送局は東西ドイツに統合に伴う局の再編で
何が何だか分からなくなったが、
このオケはアベントロートやレーグナーやケーゲルと多数の録音を残す名門。
メルクルはルイージの後、2007~12年このオケの首席指揮者だった。

第1楽章は冒頭からワンフレーズワンフレーズ丹念。時に儚さも散りばめる。
これはやはりブラームスだ。

第2楽章も美しい。気持ちが昂ぶる表情が巧い。

第3楽章はシンフォニックな表現。オーケストレーションの奇抜さは目立たせない。

終楽章は旧盤のようなテンポの伸縮した激しい表現ではなくどっしり。
N響とのあのライブの凄さが懐かしくなるが立派な仕上げ。

録音はMDRアウグストゥス・スクエア・スタジオでのセッション。
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量感たっぷりの音で個々の楽器の溶け合いを優先したまろやかな音。
よって、NHKホールでの旧盤とは音の印象がまるで違う。
あちらが現実ならこちらは夢見る音。伸びもよく大変美しいが、
シェーンベルクが目論んだ全ての楽器が聞こえるような響きとは少し違う。

15:08  8:00  11:56  10:38   計 45:42
演奏   A   録音  91点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) メルクル(98) 

2017.02.03 (Fri)
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準・メルクル/NHK交響楽団(98、Altus)はロマンティックで情熱的。
ラトルと並びこの曲を愛奏しているメルクル(1959~)。
N響を燃えさせ快演を成し遂げた。

シェーンベルク(1874~1951)はブラームス(1833~97)の若書きの
ピアノ四重奏曲第1番作品25(1861完成)を1937年に管弦楽曲に編曲した。
契機はクレンペラーからの依頼といわれているが、シェーベルクは
この曲が気に入っていた。彼は編曲の理由を以下のように述べている。

①私はこの曲が好きだから
②この曲は滅多に演奏されないから
③演奏されても酷い演奏ばかりだから(ピアノの音で弦が聞こえない)

そして出来上がった曲は編曲者曰く「ブラームスの第5交響曲」。
まあ、ブラームスが生き延びて自身で編曲しても多分このような響きには
成らなかったと思うが、実に面白い曲だ。
私は室内楽の原曲よりシェーンベルクの編曲の方が好き。
ブラームスが交響曲で使わなかったバスドラム、シンバル、グロッケンシュピール、
スネアドラム、タンバリン、トライアングル、シロフォンなどを投入し、
ホルンでなくトランペットで金切り声をあげる。
ブラームスのロマンとシェーンベルクのグロテスクが同居する。
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第1楽章の憂いを帯びた主題提示とその展開が実にキャッチー。
この曲がポピュラーになる要素を持つ。
そして管弦楽版は内にこもりがちな情感をうまく開放し伸びやかさを
付加する。準・メルクルはしっかりメリハリをつけながら歌う。
シェーンベルクに近かったクレンペラーやR・クラフトのザッハリヒ
ともいえるスタイルとは異なる。
ただ、ここはNHK交響楽団と日本放送協会の録音、中立的な音で
演奏の濃さを中和する。
ただ、打ち込みは素晴らしく、冒頭より熱は十分伝わる。
音はだれずグイグイ引っ張る。

第2楽章は速めのテンポの間奏曲。
ここでも単に流すのでなくホルンに隆起させる場面などここらがこもる。

第3楽章はシェーンベルクの編曲が素晴らしい。
大オケと室内楽的楽想、両端の歌謡性と中間部の輝かしいマーチ、
憂いと高揚の対比に驚くばかり。
メルクルはその変転を強調しながら愉しませてくれる。
ブラームスのメロディーを使ったマーラーのようでもある。

終楽章はプレストだが、この指揮者は千変万化。
そして冷静なNHK交響楽団を本気に熱くさせている。
アンサンブルはぎりぎりの面はあるかもしれないが、テンポと表情の変転は
めまぐるしくかつダイナミック。ぐっと溜めを作ったり豪快に走ったり。
終結部の燃焼はすさまじく、聴衆の拍手が興奮している。
当時まだなじみのない指揮者、曲に対してこれほどの喝采が
贈られるのは珍しい。感動の記録。

録音はNHKホールでのライブ(デジタル収録)。
nhkホール
この多目的ホールの音響は知られたところだが、この録音はよい部類。
ホールトーンを味わうことはできないがスッキリ明晰。
低域の量感は望めないがこの曲を厚ぼったくさせない面ではプラスかも。

14:10  8:01  11:49  10:58  計 44:58
演奏   情A+    録音  90点
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