クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ムソルグスキー の記事一覧

ムソルグスキー 展覧会の絵 セル(63)

2015.09.16 (Wed)
セル
セル/クリーブランド管弦楽団(63、SONY)は恐ろしい。
何がというと録音も含め室内楽的美学を貫徹する潔さ。
大オーケストラ曲なのでもっと聴衆を喜ばすことはできるはず。

奏者を試すようなこの演奏は、プレイヤーの緊張はマックス。
曖昧さを排除したこの演奏に、我々は大リストラを行った後
完全にセルに掌握され楽器となったこのオケの水準の高さを思い知る。
音は端的で粘らず、ブラス群も無愛想。
しかし楽器のバランスは完璧に管理され濁らない。

聴いていて面白いかといわれると遊びのなさに窮屈さを感じないではないが、
引き締まったフォルムは独自の美感を持つ。

各楽曲ごとの表情の変化は少ない。
盛り上げどころの「バーバ・ヤガ」「キエフの大門」でも効果を狙わない。
最後の最後主題が回帰し壮大に盛り上がる場面でティンパニの単打を
トレモロクレッシェンドに変更しているのはこのころのアメリカオケの習わしかも。

録音はセヴェランス・ホールでのセッション。残響は少なくスリムで明晰な音。
オケの音は直截的に伝わるので誤魔化しは一切効かない。
低域の量感は少ないので少し補強したら立体感が増し、
ヒスは若干残るが、当時の優秀録音であることを再認識。
George-Szell.jpg

31:03
演奏    潔A   録音 89点

ムソルグスキー 展覧会の絵 シャイー(86)

2015.09.08 (Tue)
展覧会の絵シャイー
シャイー/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(86,DECCA)は先鋭対柔和。
シャイーは1988年から2004年までこのオケの常任指揮者だったが、
これはそれ以前の常任に内定したころの演奏でこのコンビの録音としては最初期のもの。
ジャケットもそんな両者を記念するような絵柄。この時シャイー33歳。

今と違った鋭角的な率直さが表に出る。それがまろやかなACOを持ってしても抑えきれない。
全体のテンポはきびきび感があり音の出し方が垂直に起立する。
後年の耽美的なマーラーとはおよそ違う音楽作り。
むしろ近時のゲヴァントハウス管と見せる筋肉質な音楽となっている。

終盤の「バーバ・ヤガ」の勢いと硬質なパーカッションは攻めの姿勢。
「キエフの大門」は一転じっくりしたテンポでこのオケを鳴らしきる。
素晴らしい楽器(オケ)とホールを手に入れたシャイーの喜びが爆発しているようだ。
どう?こんなに鳴るんだよってなくらい鳴らしまくる。
それをDECCAが見事に捉えている。
それ以上でもそれ以下でもない、ことも捉えている。

録音は本拠地コンセルトヘボウ。この有名な場所のホールトーンを活かしながらも
鮮烈な高域を持つなど後年のこのコンビの録音の方向と若干違う。
ベルリン放響時代の硬くヴェールをかぶった音とも違う。
終結部などホール全体が鳴るので下手な録音なら飽和感が出るが
流石にDECCAは余裕を持ってクリアする。ただ少しハイ上がりか。

32:53
演奏   A  録音  93点

ムソルグスキー 展覧会の絵 チェリビダッケ(86)

2015.05.08 (Fri)
チェリ1986ベルリン
チェリビダッケ/ミュンヘンフィル(86、ARTISTS)はやはりチェリの宇宙。
チェリが美学発露の場として何度も演奏し、各種盤が出回るこの曲。
「展覧会の絵」の聴き比べ一区切りとして非正規盤ながら
やはりチェリを取り上げてしまう。

これは、1986年9月のベルリン芸術週間でのライブ収録だが
同年10月の人見記念講堂でのライブ盤(ALTUS)と解釈は同じ。
が、ホールの大きさの差が印象を違える。
このテンポと空間がマッチし聴き手をワープさせる。

全体は極めて遅いのだが重いというのではなく独自の浮遊感。
これはチェリのオケの操作が細部に至っていることを窺がわせる。
また弛緩しているわけでもない。「リモージュの市」などは通常のテンポだ。
空気も独自の緊張感を維持する。

そして「カタコンブ」を経て「キエフの大門」での浄化昇天はやはり感動的。
長い旅を終えて一気に開放する。
終結のじりじりした高揚は他のどの演奏も真似できない。
最後に主題を全奏するとき、チェリの「ティッ!!」という叫びが聞こえ
オケが壮絶に音を振り絞る。鳥肌が立つ瞬間。
ミュンヘンも最後まで素晴らしい。聴衆の大歓声も当然だ。

録音はベルリンのフィルハーモニーだろうか?
放送用収録を援用したのか、この手のものとしては優秀なステレオ録音。
弦などが微妙にざらつくことがあるが、音割れはない。
広大な音場で響きが豊か。自然な距離感。

40:34
演奏  宙    録音 86点

ムソルグスキー 展覧会の絵 エマーソン、レイク&パーマー(93)

2015.05.07 (Thu)
ELP1993.jpg
エマーソン、レイク&パーマー(93、RCA)はわが青春はすでに去りぬ。
EL&Pは1970年デビュー、1980年解散発表後、1992年に再結成した。
そして1994年に発表した「In the hot seat」というアルバムに
収録された短縮版がこれ。

スタジオ録音で宇宙空間のようにシンセサイザーを前面に出した演奏。

シンセといえば冨田勲の「展覧会の絵」(1974)も話題となった。
極彩色で、しかけ満載の冨田に対しこちらはより音楽的。
冨田盤は最初聞くと面白いと思うが、
すぐに手の内がばれてしまって再度聴くと白む。
奇抜な演出は時代を感じさせてしまう。
それに比べればこちらの方が普遍的。

しかしエマーソンもこの時齢50に届こうとするオヤジになっている。
20代の何かに訴えるようなパワーはない。
予定調和で美しい、というえば聞こえがいいが、
ロックがお行儀よくなったらおしまいだ。
歳を重ねるということはこういうことなのだろうか。
ここでもグレッグ・レイクの The Sageは清涼剤。
スティングなど影響を受けたことだろう。
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15:29
演奏 整     録音 88点
 

ムソルグスキー 展覧会の絵 エマーソン、レイク&パーマー(71)

2015.05.06 (Wed)
ELP1971.jpg
エマーソン、レイク&パーマー(71、Atlantic)はロックの伝説的名盤。
編曲というより、展覧会の絵を素材とした自在な創作。

友人宅でこのLPに接して吃驚仰天。
クラシックは高尚で、ロックは長髪不良なはずなのに、
このテクニックと革新的サウンドは何だ!
キーボードのエマーソンは8歳よりピアノを始めクラシックの
ローカルコンクールで受賞したりでそもそも技術の土台はある。

そのうえでムソルグスキーが当時の体制批判や
農民の苦しみに共感を込めて書いたこの曲を素材に、
若者の横溢するやり場のないパワーを表現した。
彼らは天才だ。

録音は71年の3~4月にかけて行われたUKツアーの中盤、
ニューキャッスル・シティ・ホールでの公演のライブ。
ロックのライブにしては観客ノイズは少なく遠景。
CDのリマスターもよく、シンセサイザー特有の濁り感も少ない。
勿論ライブ収録なので高低域の伸びや厚みは足りないが
広大なホールの雰囲気、熱気を伝える。
LPより格段に音質が向上したような印象。

「プロムナード」はオルガン的に始まりクラシックファンも違和感がない。
しかし、「小人」に入るとドラム・ベース・シンセが縦横無尽に。
ジャズトリオ的な雰囲気も持ち、インプロビゼーションのよう
なのだが三人の息がぴったり合っているのに驚く。
「第二のプロムナード」はヴォーカルが入る。
4曲目は「The Sage(賢人)」というレイク自身の作曲。
アコースティックギターに乗って
グリーグ「ソルヴェーグの歌」に似たムード。
ここは聴かせる。
次が「古城」なのだが、当時目新しいシンセサイザーが駆け巡る。
およそ原曲とは異なる自由なアレンジ。
「バーバヤガ」を各種展開し猛スピードで駆け抜け。
「キエフの大門」では再度レイクの歌唱が入る。ここでの絶唱も胸を打つ。
最後はシンセをぶち壊すようなパフォーマンスを経てフィナーレ。
(実際のライブ映像では滅茶苦茶な破壊行動も)
EmersonLakePalmer1973.jpg

36:09
演奏  抗S   録音 87点
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