クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

モーツァルト の記事一覧

モーツァルト ピアノ・ソナタ第15(16)番 K.545 グールド(73)

2014.12.01 (Mon)
グールド
グールド(73、SONY)はポキポキ。
全楽章快速テンポ+無駄?なリピートをせずズンズン前に進む。
「疑わしきは加速せよ」で全曲で5分43秒。
余韻は全くなく無響室のような音でスタッカートでテキパキ行進。
楽章の性格付けは無視されみな同じ雰囲気。
基本的に彼のモーツァルトはこんな調子、だから心の準備はできている
(テンポだけならトルコ行進曲つきみたいな極端に遅い例もある)。
ふざけているのかと怒る人がいるだろう。何かおもちゃ箱をガタゴト
ひッくり返してハイ終わり、みたいな印象だ。
初心者のための練習曲という枠から完全に解き放たれグールドが
勝手に嬉々として遊んでいる。

しかし、この演奏を何度も聴いてから通常の演奏を聴くとなんと権威に
凭れた演奏だと思ってしまう、そんな魔力を秘めている。
まあ、だからと言ってこの曲を聴かんとするときに、
もしくはモーツァルトのピアノソナタを聴かんとするときに、
グールドに最初に手が伸びるかというとそうではない。
グールドはモーツァルトのピアノソナタ全集を1965年から1974年に
時間をかけて録音している。彼にとって一連の「抵抗」「挑戦」の歴史だ。
それをCDという媒体で立て続けに聴くには一種の覚悟が必要だからだ。
癒しを求めるときにそうやすやすと「挑戦」と対峙できない。

録音は1972年4月13日、ニューヨーク、30丁目スタジオおよび1972年11月15日、
1973 年3月10日、トロント、イートン・オーディトリアムということ。
どこでどのような編集行程があったのか音を聴く限りわからない。
残響はなくデットな中左右が分離したピアノが響き、
どこからともなくいつものグールドのハミングが聴こえる。

1:49  2:20  1:34   計 5:43
演奏  挑    録音 86点

モーツァルト ピアノ・ソナタ第15(16)番 K.545 グリーク編曲版 アルゲリッチ&アンデルジェフスキ(05)

2014.11.26 (Wed)
アルゲリッチ ルガノ
アルゲリッチ&アンデルジェフスキ(05、EMI)は思わずニコリ。
これは原曲にグリークが第二ピアノを付加した編曲版。
モーツァルトの原曲に音を加えるなんて邪道という方が多いと思うが、
私個人的にお気に入り。チャーミングな曲が更に可愛さを増している。
私がグリークのピアノ曲を愛聴するから違和感がないのかもしれない。
とにかくこの編曲版を聴くと思わず微笑んでしまう。
そしてアルゲリッチもこの編曲を好んでおりいろんなところでこの曲を
相方を変えながら奏している。
グリークの意図としては、先生が第二ピアノを担当して第一ピアノの生徒を
サポートしていくという構図のためアルゲリッチが第二なのだろう。
アンデルジェフスキは息子のような歳のはずだ。

録音はルガノ・ステロ・モロ・オウディトリオでのライブ収録。
適度な距離感を持った自然な音。コンサート会場にいるよう。
不足はない。

第1楽章冒頭は普通に始まるがフレーズの終結部で即座に
可愛らしいい装飾音!!
その後も第一ピアノにぴょこぴょこまとわりつくトイプードルのような
第二ピアノ。グリークの持つお茶目さ全開。
モーツァルトの原曲にこんな積極的に絡んでくるなんて、
と思わず笑ってしまうこと請け合いだ。
テンポは微妙に揺れる。主導権はアルゲリッチなのだろう。

第2楽章は音符の数がそもそも少ないため編曲でも控え目だが
低域を補完する第二ピアノにより中間部の憂鬱が一層どんよりとする。
テンポも遅くロマンティックに仕上げる。

第3楽章の弾み感は連弾で倍増し、
チャイコフスキーのバレエ曲のように聴こえる。
演奏終了後、聴衆は盛大な拍手を贈るが、みんなニコニコ(*^_^*)している。

4:43  7:14  2:14   計 14:11
演奏  A   録音 89点

モーツァルト ピアノ・ソナタ第15(16)番 k.545 クリーン(64)

2014.11.25 (Tue)
クリーン2
クリーン(64、VOX)は転がる水滴。
オーストリアの名ピアニスト、ワルター・クリーン(1928-1991)の代表作が
モーツァルトのピアノ・ソナタ。
ピアノの音色は丸く、くすんでおり、木造の小学校の教室で丸眼鏡をかけた先生が
弾いているのを聴いているような感触。
ところがこの先生抜群に巧いどころか実にチャーミング。
さりげなさに懐かしさを湛える。

録音場所は不明。ステレオセッションながら古めかしい音で響きはデット。

第1楽章は思い入れなくコロコロと音楽が進む。平然と弾き切ってしまう。
誇張や聴かせてやろうというそぶりがまるでない。

第2楽章はリピートを省略してさらさら流れるの。
感傷を排しているが音色が温かい。

終楽章のピョンピョン感、転がり感は一転してユーモラス。
飾り気のない日常の中にしっかり根付いたモーツァルトを感じる。
ワルタークリーン

2:54  3:37   1:34  計 8:05
演奏  懐A-   録音 84点

モーツァルト ピアノ・ソナタ第15(16)番 K.545 ラローチャ(90)

2014.11.24 (Mon)
ラローチャ全集
ラローチャ(90、RCA)はどこまでも透明。
ラローチャ2回目の録音は67歳時だが、決して大家然としていない。
粒立ちはよく脚色はなく、それでいてほんのり香る。
学習用に作られたというこの曲はシンプルゆえに恐ろしい。
ラローチャはピリスのように表現を意識させないところがいい。
誠に気持ちのいい演奏。

録音はNYのBMGスタジオでスタインウェイを用いて行われている。
広くない場所で近すぎずセンスの良い録音。

第1楽章真っ白い部屋でピアノを聴いているような清潔感。
流れるテンポ、淀みない。表情は淡白だが香る。
フォルテもコントロールされていて神経に触らない。

第2楽章は符点を少し効かせて進行。
転調すると青空がさっと曇る、その瞬間に躊躇う表情。
しかし全てが自然な中で行われるので
ほとんど無意識の中で印象をつける。なんという技なのか。

終楽章は何事のなかったように弾み終わる。
あの一瞬の曇り空は幻影だった。

3:04  6:00  1:31  計 10:35
演奏  A+   録音 91点

モーツァルト ピアノ・ソナタ第4番k.282 ヴュルツ(98)

2014.07.13 (Sun)
モーツァルト ピアノ ヴュルツ全集
ヴュルツ(98、Brilliant)は清潔で端正な音が気持ちよく愛聴盤。
モーツァルトのピアノソナタの中でもアダージョで始まるこの曲は変わり種だが
そこがよくて私はモーツァルトのピアノソナタの中で一番好き。
というか、この曲を朝の目覚まし代わりにタイマーセットして毎日聴いていた時期がある。
通常のソナタのようにアレグロから入ると寝ている者にとってインパクトが強すぎるが、
この曲の冒頭のように優しく音を置くようにゆっくり始まると、
まどろみから徐々に覚醒することができ気持ち良く起きることができる。

こうした使用法(!?)をしていると、演奏は変な色がついていない清潔なもののほうがよい。
大家の演奏では意思の力が入るのでそれがかえって余計に感じる。
ピリスのような才気渙発も勿体ないのだ。
このクララ・ヴュルツというブダペスト生まれの女流ピアニストについての知識はないが、
素直で爽やかな演奏態度が誠に好ましい。
べとつかず妙な思い入れをせずにキラキラしている。
ヴュルツ
録音はオランダ、ユトレヒトのマリア・ミノアでのセッション。
適度な距離感を持って自然な音。マイクをピアノの中に突っ込んで録音しているような
オンマイクではないところがいい。会場は大きくなく音像が大きくなりすぎない。
使用ピアノはスタインウェイ。

第1楽章、この楽章が一番大事なのである。
演奏者によってかなり演奏時間が違うことがあるがそれはリピートの仕方による。
この楽章の構成は二部形式で基本構成は(この演奏もそうだが)
A{(a+a’)+(a+a’)}+B{(b+a’)+(b+a’)}+コーダ。
しかし、たとえば内田光子盤は
A{(a+a’)+(a+a’)}+B{(b+a’)}+コーダ、
ワルター・クリーン盤は
A{(a+a’)}+B{(b+a’)}+コーダ
であったりでリピートを省略する演奏もある。
しかし穏かに優しく起こしてくれるこの楽章が短くては困る。しっかり反復はしてほしい。
そうした意味でもまずこの盤は合格。

そして演奏も落ち着いたテンポで丁寧なタッチなのに粒立ちがよいのがいい塩梅。
正座して聴く演奏ならばもう少し表情が欲しくもなるだろうが、
癒しの音楽としては心にそっと寄り添うこのような演奏はありがたい。

第2楽章メヌエットもフォルテが元気すぎる演奏もあるが、ヴュルツはセンスが良い。
軽やかに転がる。テンポも速すぎず前楽章のと連続性が保たれる。

第3楽章は起床のダメを押すアレグロ。爽やかに重くならない音が快活にしてくれる。

6:56  4:06  2:57   計13:59
演奏  爽    録音 90点
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