クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

R・シュトラウス の記事一覧

R・シュトラウス 4つの最後の歌 ロット(86)

2015.12.31 (Thu)
Rシュトラウスロット4LASTSONG
ロット/N・ヤルヴィ/ロイヤル・スコティッシュ国立管弦楽団(86、CHANDOS)は清冽。
R・シュトラウスの豊饒なのに清らかな響きにあっという間に連れ去られる。

この曲の人生の黄昏面を強く求めれば、他に濃厚な表現はある。
このフェィシティ・ロットの歌唱はあくまでもクリーン。
響きの多いシャンドスの録音も手伝って
まるで現世ではなく,既に天上の音楽のよう。

しかもこの盤は幾度かの録音を集成したものだが選曲が素晴らしい。
(CHAN 10075)
4つの最後の歌(①眠りにつくとき②9月③春④夕映えに)
⑤子守歌op.41-1
⑥わが魂よ、憩えop.27-1
⑦したわしい光景op.48-1
⑧森の幸せop.49-1
⑨あしたop.27-4
⑩ばらの花環op.36-1
⑪献身op.10-1
⑫詩人の夕べの散歩op.47-2
⑬歌劇《カプリッチョ》op.85~〈インテルメッツォ(月光の音楽)〉
⑭歌劇《カプリッチョ》op.85~〈最終場面の情景〉

冒頭の「4つの最後の歌」は初演時の曲順で奏され
人生の最期を迎える④「夕映えに」の後に⑤「子守歌」が
ひっそりと歌いだされる。輪廻流転なのだろうか。
しかし、夢の中にいるような響きで現実感がない。

いくつかのリリカルな曲を挟み最後が「カプリッチョ」の終結場面。
⑭は歌唱が終わり2分半オケがゆったりたゆたい名状しがたい余韻を残す。
居ながらにして美しい自然の中で夕暮れを迎える気分にさせてくれる。
Alpen夕暮れ

どの曲もロットのヴィヴラートを抑えたスーッと伸びる声に癒される。
テンポは弛緩せずどちらかというとスッキリ感が強い。
オーケストラも万全なサポート。さすがN・ヤルヴィ。

録音はスコットランド・北東部ダンディー市のカイヤード・ホールでのセッション。
(↓建造当時1920年代のホール外観)
CitySquareCard.jpg
ブライアン&ラルフ・カズンズの録音の特色が現れ清涼な響き成分が多い。
曲によってはこれがミスマッチということもあるが
この曲集では実に綺麗なシルキートーンとなっている。

2:57  4:12  5:25  7:32   計 20:06
演奏  A+    録音 93点

R・シュトラウス オーボエ協奏曲 フックス(02)

2014.11.11 (Tue)
Rシュトラウスオーボエ協奏曲ジンマン
フックス(Ob)/ジンマン/チュールッヒ・トン・ハーレ管弦楽団
(02、ARTENOVA)は、明鏡止水。
主役も含めて誰もが強く自己主張することなく軽やかで清涼な音楽を作る。
この澄み切った世界はこの音楽にぴったりだ。フックスはこのオケの首席。
そういえばこの曲は1946年このオケとその時の首席だったサイエによって
初演されている因縁の曲。
でも肩に力の入ることなく混じり気のない世界を作った。

録音はチューリッヒのトーン・ハレでのセッション。
音響の良さで有名なホール。
どの楽器も明確に捉え、美しい響きを従わせる。

第1楽章まず冒頭が絶妙。
レミレミが二度繰り返されるが、最初はしっかり、二度目は遠ざかる。
そこにオーボエが主題を清楚に提示。この配慮だけで気に入ってしまう。
この演奏全般を注意深く聞くとオケのデリケートな伴奏が凄い。
ジンマン、流石。
オーボエは全く癖がない。

第2楽章も清らかな世界が続く。
フックスのオーボエの音はふとすぎず、薄すぎず。
全域でヴィブラートを抑えスーッと吹きあがる。

終楽章は軽やか。オケも含めてどこまでも透き通っている。
なんと清冽な世界。
写真はR・シュトラウスが晩年過ごしたガルミッシュ。
このような場所でこのような曲ができた。
garmisch-partenkirchen-bayern-germany.jpg
8:27   8:41  7:28   計 24:36
演奏  澄S     録音 94点

R・シュトラウス オーボエ協奏曲 宮本文昭(99)

2014.11.10 (Mon)
Rシュトラウスオーボエ協奏曲小澤宮本
宮本文昭(Ob)/小澤征爾/水戸室内管弦楽団(99、SONY)は
光沢のあるビロード。
囁くような小さめのオケの中でオーボエが歌う雰囲気はいい。
宮本は技巧はもとより、高域における独特の色気が身上。
細身でスマートな音色は都会的であるが、
この曲のアンダンテの美麗は白眉。
宮本のフージョン系のアルバム「Nepenthe」や「BLUE VOICES」など
好きで良く聴いたが、あの洗練された大人の雰囲気に通じる。
ニペンシ    ブルーヴォイス

柑橘系の爽やかさというより少しムスク系のフレグランスを想起。
オケは室内楽的な雰囲気で全てにおいて無色無臭。

録音は水戸芸術館コンサートホールATMでのセッション。
オーボエが突出するわけでなくオケも遠くない。
大きく展開せずにこの曲にフィットした音場。
低弦にもう少し締まりがある方が好きだが。

第1楽章出だし、オヤッと思う。オーボエの節回しが独特。
何度も演奏したであろうこの曲が完全に手のうちにある。
明快であるが一本調子ではない。

第2楽章はぐっとテンポを落とす。
宮本の艶のある女性的ともいえる歌、というかとても色っぽい
話しかけはぞくっとする。この楽章の美しさは数ある演奏の中でも出色。
カデンツァも技巧をひけらかすことなく、夜の雰囲気をもたらす。

終楽章は軽やかな技巧が冴える。オケもしっかり。
宮本のヴィブラートのセンスがいいと感じる。
この演奏の好悪は宮本の少しもってまわった独自の表情を受け入れられるか、
だろうが、抜群の腕には舌を巻かざるを得ないだろう。

8:35  9:24  7:34   計 25:33
演奏  艶A+    録音 92点

R・シュトラウス オーボエ協奏曲 ガブリエル(96)

2014.11.09 (Sun)
R・シュトラウスプレヴィン
ガブリエル(Ob)/プレヴィン/ウィーンフィル(96、DG)はウィンナーオーボエ。
楽器の特性と奏法でいまだ独自の音色。
ガブリエルは生粋のウィーンっ子。ウィーンの楽団を渡り歩き87年から(~07年?)
ウィーンフィルの首席オーボエニスト。

1960年代のウィーンフィルの録音(たとえばバルビローリのブラームス)を聴くと
鄙びたオーボエの独特の音色に魅せられるが最近はかなり音色が変わった。
カメシュ⇒トレチェック⇒ガブリエルあたりで使用楽器もヘッケル製からヤマハ製に
変わった(ヤマハはウィンナーオーボエを絶滅から救った立役者)。
製造元は変われど構造は独自で奏法もヴィヴラートを抑制してスーッと伸びる音は
牧神の笛を想像させる。

録音はムジークフェライン大ホールでのセッション。
この曲にしては少し大きいが響きは美しい。伸びも良い。
ソロはピントが合いオケはソフトフォーカス。

第1楽章は感傷を排して古典を演奏するような端正さ。
テンポは淀みなく速め。脚色は少ない。

第2楽章はソロが活躍するのでウィンナーオーボエを一層味わえる。
決して軽々ではない。ロングトーンは相当難しそうだが、
それが一種の切なさ。微妙な揺らぎも味わいだ。
それを包むウィーンフィルもいうことはない。

第3楽章もここでも速いテンポでさらさら流れセンスがいい。

8:12  8:30  7:13   計 23:55
演奏  A   録音 92点

R・シュトラウス オーボエ協奏曲 ルルー(09)

2014.11.08 (Sat)
Rシュトラウスルルー
ルルー(Ob)/ハーディング/スウェーデン放送交響楽団(09、SONY)は
夢見る詩人。独奏もオケも浮世離れしたこの演奏は独自。
ルルーは情感たっぷりだが語り口は繊細な朗読を聞いているよう。
特に弱音の密やかな表情は他の演奏では聴くことのできないこの人の境地。
それを支えるオケも暖かく透明。

録音はストックホルムのベルワルドホールでのセッション。
広めの空間に透き通るオーボエが美しい。
各楽器が適度な距離感を持ちながらも鮮明に捉えられている。
軽やかだが低域も充実。録音も夢見るよう。

第1楽章冒頭からワンフレーズ毎に大きく弓なりに膨らむ。
直線的に音楽が進むのでなく呼吸感を伴う。
テンポも歌わせるべきところでぐっと落とす。積極的な表現なのだが、
ルルーのオーボエの絶妙な弱音に聴き入ってしまう。
ドイツ系のそっけない表情でなく、自由な表情を持ちこんでいる。

第2楽章も情感のたおやかさは一層。
最後のカデンツアの奥深い表現は驚く。

終楽章に入っても全く粗くならないデリケートな表情。緩急は自在。
天上の世界でダンスをしているような非現実感。
人はあの世に渡るときに光に導かれ高揚するというが
まさにこのような世界なのでは?

8:29  8:52  7:30  計 24:51
演奏  夢A+   録音 95点
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