クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ショスタコーヴィッチ の記事一覧

ショスタコーヴィッチ 交響曲第12番 ムラヴィンスキー(61)

2013.11.14 (Thu)
ショスムラヴィン選集
ムラヴィンスキー/レニングラードフィル(61、Melodya)は初演直後の録音。
私はこの曲をこの演奏で知ったが、戦慄が走った。
なんという曲、なんという演奏。
その後、色々な演奏を聴いたが、もはや誰もこの演奏を超えることはできない。
唯一並ぶことができるのは同じコンビの84年盤だけ。この二つは隔絶している。
一つの曲の演奏においてここまで空前絶後というのも珍しい。
音楽の質の高さとかどうだとかいう議論を封じ込める。言論の自由はない。
有無を言わさず叩きつけて、おしまい。
84年盤も解釈は同じで、思い出がなければ録音がよく入手しやすい84年盤でよいだろう。
CD時代になって61年盤がなかなか入手できず思いが膨らむばかりいだった。

録音はステレオ・セッション。聴取はヴェネツィアレーベルによるCDリマスター。
過去にほかのレーベルでCD化したものがあったが、音質は劣悪だった。
これはヒスはあるが音の潰れはない。かなりオンの明確な録音で迫力がある。

第1楽章の冒頭の物々しさは84年盤の方がある。
しかしアレグロ、というよりプレストの荒々しさ厳しさはもはや隔絶した世界。
これほど飛ばしても一糸乱れぬオケにはほんとに圧倒される。

第2楽章のアダージョもだれることなく眼光が鋭い。

第3楽章は不気味さを湛える。

終楽章など自信に満ちている。
84年盤との違いはこちらの方が落ち着きがありミスがないこと。
84年ライブ盤は身も凍る様なアンサンブル崩壊の瞬間があるが
こちらは安心してアウロラ号の砲弾をくらうことができる。
それにしても冷戦時代のソ連のオケは凄かった。

11:35  11:23  4:24  9:38  計 37:00
演奏  S   録音 84点

ショスタコーヴィッチ 交響曲第10番 ベルグルンド(75)

2013.11.08 (Fri)
ショス10ベルグルンド
ベルグルンド/ボーンマス交響楽団(75、EMI)は何かに耐え抜く。
全般的に遅いテンポで振幅の幅も大きくない。
アンサンブルの精度も高くなく、アクロバティックな点でも楽しめない。
よって、この曲にあまり興味のない人にとっては退屈かもしれない。
しかし、独自の道を行く演奏であることは確か。

録音はサザンプトン・ギルドホールで音は少し霞む。
ホールトーンは多くないがデットというほどではない。
アナログ録音であり微小なヒスはppで残る当時の標準水準。

第1楽章は25分とたっぷりの時間をかける。
弛緩ギリギリのテンポの中で弦の綾が織られる。
感情はあまりおおげさに盛られず淡々と進む。
中盤以降のフォルテッシモはド迫力で粘り腰。
持続音が耐え抜く気持ちを表す。テンポが遅いので息詰まる様な雰囲気も。

第2楽章は管理された音でなく、自在に荒れた感じ。

第3楽章前半ははひんやり。
弦のスタッカートがニールセンのそれと似ている。
ひっそり感をベースに突如挿入される踊りも変動する妙なテンポ。

終楽章のアンダンテは脱力感。
アレグロはオケの非力が出る,
というか、指揮のわかりにくさが演奏に反映。
ここでのテンポは一般的な速さを確保すべくオケが必死。
しかしゴール直前で弦と木管があわずに危うい状態になったところ
ティンパニの轟音がかき消して一命を取り留める。本物のスリルだ。

25:19  4:13  11:52  12:51   計 54:15
演奏  A-   録音 86点

ショスタコーヴィッチ 交響曲第10番 ペトレンコ(09)

2013.11.07 (Thu)
ショスタコペトレンコ10
ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールフィル(09,NAXOS)は洗練に秘めた熱。
音楽が豪快に盛り上がる局面でもオケのバランスはビシッと決まり
縦横の線が乱れない。
カラヤン盤をもっと爽やかにしながら情感を盛った感じ。
押しつけがましさはないが内的充実あり。

録音はリヴァプールのフィルハーモニックホールで空間を伴う美しい音。
低域からしっかり収録された優秀録音。大音響でも破綻は全くない。

第1楽章冒頭はこのオケにしては図太い音がでている。
凝縮された音に意志が込められているが、バランス感覚を失わないいまどき。
とはいえ上から目線で流している感じはなく正面から真摯に向き合う。
よって時に音に風圧に似た威力がこもる。
終始切迫感があるのでこちらもかなり体力を消耗する。
終結部での諦観に満ちた弦の表情は美しい。

第2楽章も鋼のような弦が弾力を持って進む。
カラヤン盤ほどのドスは流石にないが素晴らしい合奏。

第3楽章も流していない。
アクセント・弦の音色・パーカッションの叩き方に指揮者の意志が表出。
終結では遅いテンポでマーラーのような闇の淵を覗かせる。

終楽章の冒頭も入念。アレグロに入っても整然としたバランスは保ったまま突進する。
弦のザクザク音はなかなか良い。ティンパニのリズミックな音も良い。
ただ、ここまで緊迫感を持ってきた音楽が最後の数分で軽く明るく響くので
おいてけぼりを食ったような解決できないものが残される。

22:48  4:09  12:15  12:59   計 52:11
演奏  A  録音 92点

ショスタコーヴィッチ 交響曲第10番 ザンデルリンク(78)

2013.11.05 (Tue)
ショスタコザンデルリンク10
ザンデルリンク/フランス国立管弦楽団(78、Naïve)は凄みを湛える。
やはりザンデルリンクが振るとこうなるのか。
フランスのオケなのに重心が低く、軽さ明るさはなく恐ろしい目つきで
始終睨まれているような。

録音はシャンゼリゼ劇場でのライブ。1月8日収録だから咳の音は聞える。
ホールは大きくないが、自然で一定の明晰も保たれた音はこの年代を考えれば優秀。

第1楽章はずっしりした低弦に導かれる。
弦のボウイングには指揮者の意志がこもっている。
次第に尋常でない緊迫感。中間部の悲鳴ではシンバル・小太鼓が
容赦なく打ち付ける。洗練を求めて軽やかに行くのではなく
正面からくる。昔ながらの演奏と言えるかもしれない。
ザンデルリンクらしい。

第2楽章は鈍い開始に朴訥感を感じていると徐々に追い詰めるような
音楽になっていく。スピードで勝負ではなく心理的に圧迫してくる。
ライブだから瑕疵はあるが怖さを覚える。

第3楽章も冒頭から意志が横溢。
やはり指揮者によって音楽の表情がこうも変るもんなんだと驚く。
弦のピチカートの凄み!
ホルンひとつとっても傷つき引きづる様な表情。

終楽章はアンダンテ部分は引き続き怖い。立体的に幾重にも怖い。
アレグロに入るとギアが相当上がる。このオケらしい軽やかさも見せる。
その中でもいちいち押しつけるようなアクセントが頻出する。
銅鑼・シンバルをともなうピーク(8:23)もカーブを曲がり切れずに
側面に激突する重量級ダンプを想起させる。
この後終結までザンデルリンクがどう振っているのかわからないような快速で
猛然とアクセルを踏む。面食らった聴衆の大きな拍手は当然だ。

24:07  4:26  11:52  12:59   計 53:24
演奏  脅A+   録音 86点

ショスタコーヴィッチ 交響曲第5番 ベルグルンド(75)

2013.10.12 (Sat)
ショスベルグルンド5
ベルグルンド/ボーンマス交響楽団(75、EMI)は独自の行き方。
この曲に潜むリリシズムを丁寧に紡いで見せる。
劇性は少ないが、浅いといわれるこの曲を別の視点で見せてくれる演奏。
有名ではないが、新たな発見をもたらす演奏。

録音はアビーロードスタジオでよって低域は薄い。
ただし、静かな部分では弦が美しく不満がない。
少しラウド気味に再生すると立体感が出る。

第1楽章冒頭から静謐を感じさせる演奏。
バーンスタインの物々しさとは全く違う。
単に脱力でなく目指す方向が端から違うという意志がある。
ショスタコーヴィッチに潜む北欧の要素を抽出して見せたよう。
中盤に差し掛かり盛り上がりを見せるが決して煽りたてることない。
ブラス群がバリバリと次々に起立する場面は壮観でもある。
それが終わると何とも言えない癒しの音楽。
スウェーデンの作曲家ラーションのヒンヤリした音楽と突然交錯した。

第2楽章も清潔に仕上げる。
今度はまたもやスェーデンのダグ・ウィレン(ヴィレーン)の
セレナードが到来した。シンプルなおどけてこわばった表情が似ている。
低域をあまり強奏させないのですっきり感がある。

第3楽章前半のフルートソロや弦のかすれた音は雰囲気がある。
しかし、綺麗ごとで終わらせない力感も表出する。
こうした点がこの演奏に深みを与えている。
ゆったりしたテンポで金切り声をあげることなく細かい動機を浮き上がらせる。
今まで聞いたことのないような音楽。ここでも弦の綾が素晴らしい。

終楽章は落ち着いた足取りで淡々と進める。
第1楽章から聴いてきてこの楽章では音楽が突然変異を起こして
しまったという印象。音は大きいのだがなにか上の空。
よってここでも中間部が見せ場聴き場となる。
べとつかない爽やかな情緒を持ちこむ。
絞り出すような終結は独自の感動をもたらす。

17:33  5:29  15:54  10:55   計 49:51
演奏 謐A+   録音 87点
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